オートファジーでダイエット【糖質制限ではなく良質な脂質摂取がコツ】

脂っこいものを食べると太ると考えている人は多いと思います。しかし最近の研究で、今まで常識と思っていたことが覆されるほどの研究結果が発表されました。太る原因は脂質ではなく、糖質(炭水化物)だということがわかりました。それどころか脂質をたっぷり摂っても良いというのですから、驚く人はたくさんいるでしょう。

しかし脂質ならなんでも好きなだけ食べても良いかというと、そういうわけでもありません。上手に脂質を摂ることにより、老化を遅らせることができ、病気にもなりにくいことがわかっています。

食生活を変えることで、実際にオートファジーを起動するためにはどうすれば良いのか、何に注意すべきなのかを詳しく知りたい人におすすめの記事です。この記事は下記の書籍の中から脂質を積極的に摂るのが良い理由や、糖質が体に及ぼす害について取り上げています。

『SWITCH(スイッチ)オートファジーで手に入れる究極の健康長寿』(ジェームズ・W・クレメント著、クリスティン・ロバーグ著、児島 修翻訳、日経BP出版)

最近の研究で明らかになった糖質摂取量、脂質摂取量と死亡率の関係

糖質制限」という言葉が広まり、多くの人が糖質の摂りすぎは体に良くないという認識を持つようになりました。一方脂質に関しては、コレステロール値の高い人やダイエットをしている人たちから、敬遠される存在であることに変わりはありません。

しかし炭水化物(糖質)は危険で脂質は安全と考えられる研究結果が、世界で権威のある医学雑誌の一つ「ランセット」に掲載され、医学界で話題になりました。複数の有名な研究機関の研究者たちが、18カ国の35〜70歳の約13万5000人の被験者を平均7.4年間追跡して明らかにしたものです。被験者自らが書いた食事記録をもとに糖質、脂質、タンパク質の摂取量を割り出し、心疾患や脳卒中※、心不全、脂肪などの発症リスクとの関係を分析しました。※脳卒中:脳出血、脳梗塞

その結果を『SWITCH(スイッチ)オートファジーで手に入れる究極の健康長寿』から引用します。

「糖質の摂取量が最も多いグループ(毎日のカロリーの77パーセント)のほうが、最も少ないグループ(毎日のカロリーの46パーセント)よりも死亡リスクが28パーセント高かったのだが、脂質の摂取量が最も多いグループ(毎日のカロリーの35パーセント)は、最も少ないグループ(毎日のカロリーの10パーセント)よりも死亡率が23パーセント低かったのだ。さらに、脂質の種類別に見ると、多価不飽和脂肪酸(コーン油、大豆油、綿実油、グレープシードオイルなど)と一価不飽和脂肪酸(アボカド、オリーブオイル、べに花油、なたね油など)を多く摂取していたグループの死亡リスクは、それぞれ20パーセント減、19パーセント減となった。これらの脂質に比べると健康的ではないバターや動物の肉に含まれる飽和脂肪酸を多く摂取したグループでさえ、死亡リスクは14パーセントも低かった。」

(引用:ジェームズ・W・クレメント,クリスティン・ロバーグ. SWITCH(スイッチ)オートファジーで手に入れる究極の健康長寿 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1727-1737). Kindle 版.)

わかりやすく表にまとめると、次のようになります。

被験者が多く摂取している栄養素別グループ死亡率
糖質摂取量が低い(1日のカロリーの46%)ここを基準【0】にする
糖質摂取量が多い(1日のカロリーの77%)28%増
多価不飽和脂肪酸が多い(コーン油、大豆油など)20%減
一価不飽和脂肪酸が多い(アボガド、べに花油など)19%減
飽和脂肪酸が多い(バター、牛乳、バターなど)14%減

この結果はこれまでの常識を覆すものでした。つまり、脂質の中でも動物性脂肪(飽和脂肪酸)を多く摂ると、脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めると思われてきました。しかし糖質摂取量の低いグループを基準にした時でも、飽和脂肪酸を多く摂っていたグループの方が14%も死亡率が低くなっています。

文部科学省の助成金を受けて行っている大規模コホート研究(JACC Study)が調査した結果も同様でした。調査内容は、飽和脂肪酸の摂取が脳卒中や心臓病による死亡にどれだけ影響するのかについて、5万8000人に対して食生活に関するアンケートを行い、1日あたりに摂取している飽和脂肪酸を産出しました。その後16年間に脳卒中、心筋梗塞で亡くなった人の割合を比べると、脳卒中や心筋梗塞の死亡率は飽和脂肪酸の摂取量が最も多いグループは、最も少ないグループよりも40〜50%も低くなっていました。*1

世界的にも脂質摂取に関する考え方が変わってきています。これまでの「脂肪=悪玉」という考えは否定され、日本でも厚生労働省が「日本人の食事摂取基準」2015年版で、コレステロールの目標量を撤廃しました。*2、*3

低脂肪食の危険

本書では過剰な糖質を摂るとインスリンが大量に分泌され、血糖値を下げるために糖から脂肪を作り体内に蓄え、その繰り返しが糖尿病や肥満を招くと説明しています。ダイエットのために低脂肪の加工食品を好んで食べている人は要注意と、著者は警告しています。低脂肪または無脂肪の食品は味を落とさないために、糖質がたくさん加えられているといいます。そのような加工食品を食べると、血糖値は急上昇し、インスリンが大量に分泌され、体内に脂肪が蓄えられます。体に良いと考えて低脂肪食を選ぶ落とし穴に、注意が必要です。

高血糖が招く糖化と老化

高血糖が怖いのは、糖尿病や脂肪を体内に溜め込むことだけではありません。血液中の糖が体の中のタンパク質と結びつくことで、細胞を劣化する「糖化」という現象が起こります。糖化によって作られるAGE(Advanced Glycation End products  糖化最終生成物)が臓器や組織などに絡みついて機能不全にして、健康に大きなダメージを与えます。美容の観点からもAGEは肌を老化させ、しみ・シワ・くすみの原因になるといわれています。

オートファジーの働きと若返り

糖化を避けるには、糖質を過剰に摂取しないことです。糖化が老化を促進するのなら、反対に細胞の若返りを行うオートファジーを起動させることをすれば良いのです。
血糖値が高い間はインスリンが分泌され、オートファジーは働きません。逆に血糖値を低く保つことができれば、血糖値を上げる働きがあるグルカゴンが分泌されるとオートファジーが働きはじめます。オートファジーは体が飢餓状態に陥ったときに細胞が死なないよう、体に備わった機能だからです。

オートファジーが機能すると、細胞内に排出されずに溜まっている不要なタンパク質や古くなった細胞小器官を分解して、新しくタンパク質を合成したり新しい小器官を作ります。細胞小器官とは、細胞が生きるために必要な機能を備えている器官の総称です。タンパク質にリン酸や脂質などを付加する細胞内の化学工場の役割を果たすゴルジ体や、さまざまな酵素を持ち細胞内の物質を分解する役割のリソソーム、細胞や体を動かすために必要なATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーを生成するミトコンドリアなどがあります。

オートファジーは古くなった細胞小器官を分解して、新しく作り出すこともできるため、細胞の若返りが可能です。年齢を重ねると、細胞の老化から体の組織や臓器などの機能も落ちてきて病気を引き起こします。細胞から元気になることで、体の老化からくる様々な病気からも遠ざかることができます。

低インスリン、低血糖でオートファジーの前提条件を作る

糖質の摂取量に気をつけて血糖値を低く抑えられると、インスリンの分泌量も低いので、オートファジーを起動しやすく、脂肪燃焼モードへの切り替えがしやすくなります。
オートファジーを起動しやすくする方法は、16時間の断食を一定期間続ける方法、糖質制限などがありますが、その中でもケトジェニック・ダイエットについて説明します。

オートファジーを促すケトジェニック・ダイエット

ケトジェニック・ダイエットは、糖質の摂取量を抑えて脂質を多めに摂ることで脂肪をエネルギー源として利用するような流れを作るダイエットです。
通常は血液中の糖をエネルギー源として利用し、足りなくなると肝臓に貯蔵しているグリコーゲンを糖に変えて利用します。しかしグリコーゲンは1日程度で無くなってしまいます。次にエネルギー源となるのが脂肪です。脂肪細胞に蓄えられた中性脂肪を遊離脂肪酸に変えて、肝臓で分解されケトン体が生じます。脂肪をエネルギーとして利用し始めると、血液中のケトン体が増えます。この状態をケトーシスといいます。
ケトーシスは絶食、飢餓状態、糖質制限などで見られますが、糖尿病でもケトン体の血中濃度が高くなることがあります。糖尿病が原因の場合をケトアシドーシスといい、ひどい場合には脱水症状や意識障害が生じることがあり危険を伴うため、ダイエット法としては一般的ではないともいわれています。

脂質の選び方とその他の栄養素の取り方に注意

ケトジェニック・ダイエットでは脂質を多め、糖質は極力少ない食事を心がけますが、脂質ならなんでも良いと考えず、どんな脂質を摂るかはよく考えなくてはならないと著者は考えています。肉や乳製品から得られる脂質を減らし、植物性の不飽和脂肪酸を多く摂ることをすすめています。

糖質は精製したものは摂らないようにすること、低GIの野菜や豆類を摂ること、ナッツ類を食べることなど、気をつけるべきことがたくさんあります。

目的はオートファジーを起動させること

ケトジェニック・ダイエット、糖質少なく脂質多めの食事について説明しましたが、すべてはオートファジーをONにしやすくするための条件作りのためです。現代は、脂肪をエネルギー源とする必要がないような食生活なので、オートファジーがONになりにくくなっています。そのため生活習慣病などの病気が増えていると考えられています。

人間の体は、長い間かけて環境に適応できるように作られたものなので、長い歴史からすると今のような食生活になったのは最近のことといえます。昔はケトーシスの状態にあるのが普通で、食糧事情によりオートファジーが容易にON/OFFの切り替えを行なっていました。そのころは肥満や脳卒中、心筋梗塞、糖尿病などはありませんでした。
できるだけ長く健康で若々しくいられるために、もともと備わっている体の機能を目覚めさせましょう。

オートファジーやケトジェニック・ダイエットについて、詳細は下記書籍をご参照ください。

『SWITCH(スイッチ)オートファジーで手に入れる究極の健康長寿』(ジェームズ・W・クレメント著、クリスティン・ロバーグ著、児島 修翻訳、日経BP出版)

(参考文献)
*1: 飽和脂肪酸摂取と脳卒中・心疾患死亡 (The Japan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk sponsored by the Ministry of Education, Culture, Sport, Science and Technology of Japan)JACC Study
*2: 「糖質制限」論争に幕?一流医学誌に衝撃論文(東洋経済ONLINE)東洋経済新報社
*3: 「日本人の食事摂取基準(2015 年版)」策定検討会報告書(厚生労働省)
*4: vol.139 老化の原因「糖化」を防止しよう(OMRON)オムロン ヘルスケア株式会社

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