【ビタミンKの効果効能】多く含む食品・摂取量基準・研究情報について

炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維、ファイトニュートリエント。これらは7大栄養素とよばれ、人の成長や健康維持には欠かせない栄養素です。

その中でもビタミンは身体の生理機能の重要な役割をになっていますが、人は体内で生成することができず食事から摂る必要があります。
特にビタミンKは体内で貯蔵することが難しく、きちんと食事から摂取し続けることが重要と言われています。

今回はそんなビタミンKについて、ビタミンKの役割、どれくらい毎日摂れば良いのかなどについて話していきたいと思います。

ビタミンKとは

ビタミンKは脂溶性ビタミンの一種です。
元々、血餅の生成過程における役割から発見され、ビタミンKは血液凝固(凝血)の調整などをする生理学的プロセスに関わるいくつかのタンパク質の機能に不可欠であると考えられてきました。そのため、ドイツ語で凝固を意味する「koagulation」に由来する「K」を用いて、ビタミンKと呼ばれるようになったと言われております。

天然に存在するビタミンKには、ナフトキノンを共通の化学構造として、側鎖構造のみが異なるフィロキノン(ビタミンK1)とメナキノン類に分類されます。

フィロキノンは、側鎖にフィチル基をもつ化合物です。メナキノン類は、側鎖のプレニル基を構成するイソプレン単位の数(4〜14)によって 11 種類の同族体に分類されます。
このうち、栄養上、特に重要と言われていいるものは、動物性食品に広く分布するメナキノン-4(ビタミンK2)と納豆菌が産生するメナキノン-7です。フィロキノン、メナキノン-4及びメナキノン-7は、人における腸管からの吸収率や血中半減期がそれぞれ異なることから、生理活性も異なるものと考えられています。

また、ビタミンKは脂溶性ビタミンでありますが、他の脂溶性ビタミンとは異なり、体には非常に少量しか貯蔵されておらず、定期的な食事からの摂取がないと急速に枯渇してしまいます。
しかし、体にはビタミンKエポキシドサイクルと呼ばれるプロセスが存在し、ビタミンKを再利用しています。ビタミンKサイクルによって、少量のビタミンKがタンパク質のカルボキシル化に何回も再利用できることになり、それによって食事からの必要量が減ると言われております。このサイクルの過程で体内で様々な反応を引き起こしています。

ビタミンKの効果効能・体内における作用や役割

ビタミンKの主要な作用は、名前の由来の通り、血液凝固に関与するものが大きいのですが、それ以外にも様々な効果効能・体内における作用があるので、紹介します。

血液凝固

血液が凝固するのには、プロトロンビンなどの血液凝固因子と呼ばれるものが必要です。それらプロトロンビンが肝臓で生成される時に、ビタミンKが補酵素として働いています。そのためビタミンKが欠乏すると血液中のプロトロンビンが減少し、血液凝固に時間がかかり、出血が止まりにくくなります。

骨形成の調整

ビタミンKは骨に存在するオステオカルシンというたんぱく質を活性化し、カルシウムを骨に沈着させて骨形成を促す効果があります。そのため、骨粗鬆症の治療薬としてビタミンK誘導体のメナキノン-4が処方されています。

ビタミンKの欠乏症(症状/対策)

緑色の野菜の多くはビタミンK2を含んでおり、腸内細菌がビタミンK3を産生することから、健康な成人でビタミンK欠乏症が起こることはまれだと言われております。

ビタミンK欠乏症は、新生児の出血性疾患の原因となるため、通常、新生児にはこの病気を予防するためにビタミンKを注射します。しかし、母乳にはビタミンKが少量しか含まれていないため、母乳で育てられていて出生時にビタミンKの注射を受けていない乳児では、ビタミンK欠乏症が特に発生しやすくなります。
出血性疾患は、母乳で育てられている乳児や、脂肪の吸収を妨げる病気や肝疾患がある乳児で、発生する可能性がより高くなっています。そのため、乳児用人工乳にはビタミンKが含まれています。また、母親がフェニトインなどの抗てんかん薬、抗凝固薬、特定の抗菌薬などを服用している場合にもリスクは高まることが報告されています。

症状

主な症状は出血で、皮下出血、鼻や傷からの出血、胃出血、腸出血などがあります。稀に、胃の中の出血により、血が混じった嘔吐を起こすことや、尿や便に血液がみられることがあり、または便が黒いタール状になることがあります。
また、新生児では、脳内や脳の周囲で生命を脅かす出血が起こることがあると報告されております。

血液以外では、ビタミンKは骨の形成にも重要な役割があるので、欠乏症で骨が弱くなることもあります。

治療

分娩後の脳内出血のリスクを減らすため、すべての新生児に対してビタミンKの筋肉内注射が推奨されます。

成人でビタミンK欠乏症が診断された場合には、通常はビタミンKを経口投与または皮下注射します。なにかしらの薬物が原因の場合は、薬の量を調整するか、ビタミンKの追加投与を行います。

注意が必要な人

ビタミンK欠乏症がある場合、ワルファリンなどの抗血液凝固薬を服用すると凝固因子の合成が妨げられるため、出血の可能性が高まったり出血が悪化することがあります。
そのため、ワルファリンなどを服用中の人は血液が凝固する速さを確認するために定期的に血液検査を受ける必要があると言われています。

ビタミンKの過剰症(症状/対策)

現在、天然のビタミンKの過剰症は報告されていません。
しかし、過剰に摂りすぎても良いことがあるわけではないので、適切な量を摂取することが大事になります。

また、ビタミンKは体内で貯蔵することができず、定期的に食事等から摂取する必要があるので、一度に大量に摂取したからしばらく摂らなくても大丈夫。というわけにはいかないと言われています。

ビタミンKの研究情報

体内で様々な効果を発揮するビタミンK。
近年様々な研究が行われており、その一部を紹介します。

骨粗鬆症予防

骨形成にビタミンKが必要な栄養素であることはわかっているが、実際の疾患との関係性は様々な研究が行われています。

72,000人超の女性を10年間追跡し、フィロキノン(ビタミンK1)と加齢による骨量減少との関係を調査する観察研究が行われました。この集団の解析で、フィロキノンの摂取が109μg/日より少ない女性は、それ以上の摂取の女性に比べて30%も股関節骨折のリスクが高かったと報告されています。
また、別の7年間800人超の年配の男女を追跡したフラミンガム心臓研究という前向き研究では、食事によるビタミンK摂取量が最も高い四分位(中央値で254μg/日)の参加者は、摂取量が最も低い(中央値で56μg/日)者より股関節骨折リスクが65%低かったと報告されています。

最近のクロスオーバー研究や症例対照研究で、フィロキノン摂取が多い方が股関節骨折の発生が少ないという関連が報告されていますが、別の研究ではフィロキノンと骨密度や骨折の発生率などの関係性が明らかにならず、現在も多くの研究が続けられています。

しかし、緑色葉物野菜がフィロキノンの主要な食事からの摂取源であり、それらは通常バランスの取れた食事の一部であることから、フィロキノンの高摂取は単に健康な食習慣の現れであり、フィロキノン自体ではなく、ただバランスの取れた食生活がこれらの結果の原因かもしれないとも言われています。

参考文献
Feskanich D, Weber P, Willett WC, Rockett H, Booth SL, Colditz GA. Vitamin K intake and hip fractures in women: a prospective study. Am J Clin Nutr. 1999;69(1):74-79. 

Booth SL, Tucker KL, Chen H, et al. Dietary vitamin K intakes are associated with hip fracture but not with bone mineral density in elderly men and women. Am J Clin Nutr. 2000;71(5):1201-1208. 

Apalset EM, Gjesdal CG, Eide GE, Tell GS. Intake of vitamin K1 and K2 and risk of hip fractures: The Hordaland Health Study. Bone. 2011;49(5):990-995.

Torbergsen AC, Watne LO, Wyller TB, et al. Vitamin K1 and 25(OH)D are independently and synergistically associated with a risk for hip fracture in an elderly population: A case control study. Clin Nutr. 2015;34(1):101-106. 

Booth SL, Mayer J. Warfarin use and fracture risk. Nutr Rev. 2000;58(1):20-22.

血管疾患

3,401人が参加した米国の全国的調査(NHANES  III)において、ビタミンK摂取量が適切な者は不適切な者(女性で90μg/日、男性で120μg/日)よりも、心血管疾患関連の死亡リスクが22%、全死因による死亡リスクが15%低いと報告されています。

同様に16,057人のオランダ人女性(49~70歳)を平均8.1年間追跡した前向きコホート研究においては、メナキノン摂取が10μg/日増えるごとに冠動脈心疾患(CHD)リスクが9%減ると報告されています。
また、55歳以上の健康な4,807人の男女を調べたオランダでの初期の別の研究で、メナキノン摂取が最も高い三分位(32.7μg超/日)の参加者は、最も低い三分位(21.6μg未満/日)の者よりも冠動脈心疾患発症リスクが41%、全死因による死亡リスクが26%低かったと報告されています。

参考文献

Cheung CL, Sahni S, Cheung BM, Sing CW, Wong IC. Vitamin K intake and mortality in people with chronic kidney disease from NHANES III. Clin Nutr. 2014; pii: S0261-5614(14)00086-7. doi: 10.1016/j.clnu.2014.03.011.

Gast GC, de Roos NM, Sluijs I, et al. A high menaquinone intake reduces the incidence of coronary heart disease. Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2009;19(7):504-510.

Geleijnse JM, Vermeer C, Grobbee DE, et al. Dietary intake of menaquinone is associated with a reduced risk of coronary heart disease: the Rotterdam Study. J Nutr. 2004;134(11):3100-3105.

ビタミンKを摂取に気をつけるべき人(薬の飲み合わせ等)

ワルファリンなどの抗血液凝固薬を服用している人はビタミンKのサプリメントや、ビタミンKが豊富に含まれている食材を摂取する時に注意が必要になります。

ワルファリンはビタミンK類似構造のクマリン誘導体で、ビタミンKに拮抗し、肝臓においてビタミンKが関与する血液の凝固因子が作られるのを抑えて血を固まりにくくし、血栓ができるのを抑える薬です。

ワルファリンを服用中は、ビタミンKの活性が抑えられた状態にありますが、この時にビタミンKを多量にとるとワルファリンと拮抗してしまい、ワルファリンの作用が減弱してしまいます。

けがや病気のためベッドで寝ている必要がある、手術からの回復期間、心房細動などワルファリンを服用する場合があり、気になる方はかかりつけの医療機関にて相談するようにしましょう。

ビタミンKの1日摂取量の目安(年齢別)

ビタミンKの効果について説明しましたが、1日どれくらいのビタミンKを摂ればいいのでしょうか。厚生労働省が発表しています「日本人の食事摂取基準」というものを見ていきましょう。

ビタミンKの食事摂取基準(μg/日)

男性女性
年齢等目安量目安量
1~2(歳)5060
3~5(歳)6070
6~7(歳)8090
8~9(歳)90110
10~11(歳)110140
12~14(歳)140170
15~17(歳)160150
18~29(歳) 150150
30~49(歳) 150150
50~64(歳) 150150
65~74(歳) 150150
75~(歳)150150

参照:厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年版)

ビタミンKを多く含む食品上位20位

ビタミンKの効果や1日の必要量がわかったところで、具体的にどのような食品にビタミンKが多く含まれるかを紹介します。

順位食品名成分量(μg/100g)
1玉露 茶4,000
2抹茶2,900
3あまのり ほしのり2,600
4乾燥わかめ 板わかめ1,800
5いわのり 素干し1,700
6わかめ カットわかめ1,600
7紅茶 茶1,500
8青汁 ケール1,500
9せん茶 茶1,400
10パセリ 乾1,300
11まつも 素干し 1,100
12挽きわり納豆930
13パセリ 葉 生850
14てんぐさ 素干し730
15しそ 葉(生)690
16乾燥わかめ 素干し660
17モロヘイヤ 茎葉(生)640
18糸引き納豆600
19五斗納豆590
20ほしひじき(乾)580

参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ビタミンKを多く含む野菜上位10位

次に野菜類に特化し紹介します。

順位食品名成分量(μg/100g)
1しそ 葉(生)690
2モロヘイヤ 茎葉(生)640
3あしたば 茎葉(生)500
4しゅんぎく 葉(ゆで)460
5モロヘイヤ 茎葉(ゆで)450
6バジル 葉(生)440
7よめな 葉(生)440
8あしたば 茎葉(ゆで)380
9よもぎ 葉(ゆで)380
10かぶ 葉(ゆで)370

参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ビタミンKを多く含む魚類上位10位

魚類に特化し紹介します。

順位食品名成分量(μg/100g)
1あわび 塩辛 92
2あゆ 天然 内臓(焼)80
3あゆ 天然 内臓(生)40
4生うに27
5あわび(生)23
6なまこ このわた23
7うに 粒うに22
8うなぎ きも(生)17
9うに 練りうに15
10あゆ 養殖 内臓(生)11

参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ビタミンKを多く含む肉類上位10位

最後に肉類に特化し紹介します。

順位食品名成分量(μg/100g)
1にわとり 皮 もも(生) 120
2にわとり 皮 むね(生)110
3かも あひる 皮(生)70
4にわとり 手羽 皮つき(生)70
5にわとり もも 皮つき(生)62
6うずら 肉 皮つき(生)53
7にわとり 心臓(生)51
8にわとり むね 皮つき(生)50
9にわとり つくね47
10手羽先 皮つき(生) 45

参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ビタミンKはサプリメントで意識的に摂取すべきか

これまでビタミンKの必要量や、含まれている食材について紹介してきましたが、そもそも私たちはきちんと必要なビタミンKを毎日摂ることができているのでしょうか。

厚生労働省が発表している「平成30年国民健康・栄養調査報告」によると、ビタミンKの平均摂取量は246 μgであり、目安量にを超えております。
これは多くの日本人がバランスの良い食事を心掛け、緑黄色野菜を定期的に摂取しているからだと言われております。


しかし、近年野菜の栄養価が下がっていると報告され、数十年前と同じ食生活でも同量のビタミンKを摂取することが難しくなってきました。しかし、それでも緑黄色野菜や納豆等からビタミンKは十分に取れていると言われて、過度なダイエットや野菜嫌いで全く野菜を食べないという極端な生活でない限り、ビタミンKの摂取量は問題なく、サプリメント等に頼る必要はないと言われいます。

ミックスビタミンなど他のビタミン補充の際にビタミンKを摂取してしまうこともあるかもしれません。しかし、ビタミンKは過剰症の心配が少ないと言われているビタミンなので、他の栄養素を補給する目的で一緒にビタミンKを摂取する分には問題ないと思います。

ビタミンKと合わせて摂取すると効果的な栄養素

ビタミンKは脂溶性ビタミンであり、油と一緒に摂ることで吸収されやすくなります。ドレッシングやソースに油を使う料理や、油を使う炒め物などの調理方法がおすすめです。
例えば、ほうれん草の炒め物や大葉を使ったチヂミなどは効率的にビタミンKを摂取できる調理方法と言われてます。

また、ビタミンKは、骨形成に必須なビタミンで、骨にカルシウムを沈着させたり、カルシウムが体外に排泄されるのを抑える効果もあります。乳製品や小魚、大豆製品など、カルシウムが豊富な食材と栄養面で相性抜群ですので、一緒に摂取するとより効果的です。

青汁でビタミンKは効率的に摂取可能か

先ほど、過度なダイエット、断食や野菜嫌いでほぼ食べないなどの極端な食生活な方を除き、サプリメント等でビタミンKを摂取する必要はないと話しましたが、実際その通りです。

しかし、そのような方向けにサプリメントも良いのですが、ビタミンKを補充する目的でしたら青汁をオススメします。
理由は青汁には、ケール・大麦若葉をはじめ、緑黄色野菜が豊富に使われているからです。

最近の青汁はフルーツなども含まれ、大分飲みやすくなり野菜嫌いな方でもそこまで抵抗なく摂取することができるようになっています。
青汁それぞれ、ビタミンKの含有量や味など違いがありますので、自分にあった摂取方法を考えてみるといいでしょう。

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