【青汁の効果】科学的根拠をもとに解説

青汁は健康志向の人に人気ですが、そもそも健康維持に効果があるのでしょうか。青汁に使われる緑色野菜に含まれる栄養素について分析し、体内に取り込まれた栄養素の働きについて解説します。またサプリメントなどの健康食品との違いについて触れ、栄養面を考えたときになぜ青汁がよいのかについて説明します。

青汁に含まれる栄養素と効果

今は飽食の時代ですが、野菜の摂取が足りていないといわれています。野菜をたくさん摂るには、加熱して量(かさ)を減らして食べる方法がありますが、この方法の場合加熱で失われる栄養素が摂取できないことになります。
しかし生の野菜から栄養素各種を補うのは、難しいときもあります。この点、生の野菜を絞って得られる青汁は熱に弱い栄養素もしっかり摂取することができ、量が多くて食べられないという問題もありません。野菜が不足しがちで足りない栄養を補給したい人や、朝は特に料理する時間がないという場合は、青汁がおすすめです。

次に、青汁によく使われる緑色野菜に含まれる栄養素について紹介します。緑色野菜にはたくさんの種類のビタミンやミネラル、アミノ酸なども含まれています。そのたくさんの栄養素の中から、不足しがちな栄養素や特に豊富に含まれている栄養素をピックアップして解説します。

ミネラル類

カリウム

カリウムは細胞内に多く存在し、細胞内の浸透圧を調節します。余分なナトリウムを尿中に排泄する働きもあります。カリウムは細胞の中に存在し多くの食品に含まれるので、カリウム不足になることはあまりないと思われますが、過剰摂取は害になりますので注意が必要です。
外食などで塩分(ナトリウム)の濃い食事を食べることがあると思いますが、塩分過剰な状態を調整してくれるのはカリウムです。

カルシウム

カルシウムは歯や骨を構成しているミネラルですが、血液中にも存在し血液凝固や筋肉の動きなど生命維持に重要な働きを担うため、カルシウムが不足すると骨のカルシウムが血液中に溶かし出されます。そのため骨が弱くなってしまいます。またカルシウム不足が続くと、身体が生命の危機を感じて血液中のカルシウム量を増えることがあり、それが動脈硬化や高血圧に繋がる恐れもあります。血液中にカルシウムが増えると、血管が硬くなるのが原因といわれています。

鉄は赤血球内に存在し、酸素を運ぶ役割を担うヘモグロビンや各種酵素を構成するミネラルです。不足すると貧血になることはよく知られています。女性は特に、月経血による損失や妊娠・出産で需要が高まるため、積極的に摂取すべきミネラルの一つです。
普通の食事では鉄の過剰摂取にはなりにくいですが、女性は貧血のため鉄剤を飲んだり、サプリメントなどで補う人が多く、その場合には摂取過剰にならないように気をつけなくてはなりません。特に高齢女性は長期にわたり鉄を補給するサプリメントを常用することにより、過剰摂取に陥るケースがあるので注意しましょう。

ビタミン類

βカロテン(プロビタミン)

βカロテンは体内に取り込まれるとビタミンAに変わります。強い抗酸化作用を持ち、体内で発生する活性酸素を除去する結果、身体に悪影響を与える過酸化脂質の生成も抑えられます。
βカロテンは体内に取り込まれても、ビタミンAが十分量存在しているときにはそのまま排泄されるか、脂肪細胞に貯蔵されます。

葉酸

葉酸はビタミンB群の一つです。葉酸は胎児の神経管閉鎖障害発症のリスクを軽減するという疫学研究の結果を受け、厚生労働省は妊娠の可能性のある女性に葉酸の摂取を促す通知を出しています。しかし葉酸は赤血球の形成やDNAの合成に関わる栄養素なので、妊娠の可能性のある女性に限らず、どの年代の男女にも必要な栄養素です。

ビタミンC

ビタミンCは抗酸化作用があり、体内で活性酸素により酸化されてできる過酸化脂質ができるのを抑えます。過酸化脂質は血管が硬くなる原因の一つといわれている物質です。
体内で発生する活性酸素は、身体に悪いばかりではなく強い殺菌作用も持ち、体内に侵入した病原菌を殺してくれます。しかしその強い酸化作用で周りの細胞も傷つけるため、ビタミンCも不足しないよう摂取して過剰な活性酸素を除去することが必要です。ビタミンCはその他にもコラーゲンの生成にも関わる栄養素で、美容と健康には欠かせないビタミンの一つです。

ビタミンE

ビタミンEはビタミンCと同じく抗酸化作用がある栄養素で、過酸化脂質の生成を抑える働きがあります。この他細胞膜など、生体内の重要な部分を構成する不飽和脂肪酸の酸化を防ぎます。

食物繊維

食物繊維は人間が消化できない物質です。しかし食物繊維は腸内の状態を健康に保つための重要な役割を持っています。食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があり、不溶性食物繊維は腸の蠕動運動を活発にし、排便を促します。水溶性食物繊維は腸内の善玉菌のエサになり、善玉菌を増やして腸内環境を整える働きがあります。

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青汁によく使われる緑色野菜と栄養素の含有量

野菜の王様「ケール」

美容と健康に気をつけている海外セレブが、スーパーフードとして食べているのが「ケール」。アブラナ科の野菜で、キャベツやブロッコリーの仲間です。栄養価が高いケールは、種類によって葉の形がかなり違っています。風味は青臭く苦味が強いのが特徴です。

<生のケール100gあたりに含まれる栄養素と量>
生のケールに含まれる栄養素の中から、注目したいものをピックアップしました。

  • カルシウム220mg
  • 鉄0.8mg
  • βカロテン2900μg
  • 葉酸120μg
  • ビタミンC81mg
  • 食物繊維3.7g

食物繊維が豊富なアシタバ

ケールより多いも食物繊維が多く、カルコンという抗酸化作用の強い成分を含んでいるのが特徴です。今日摘んだ葉っぱがもう明日には生えているからアシタバという名前がほつくほど、生命力の強い野菜です。味は葉っぱにほのかな苦味があり、茎はわずかに甘さを感じます。

<生のアシタバ100gあたりに含まれる栄養素と量>
生のアシタバに含まれる栄養素の中から、注目したいものをピックアップしました。

  • 鉄1mg
  • βカロテン5300μg
  • ビタミンE4mg
  • ビタミンC41mg
  • 食物繊維5.6g

βカロテンの含有量は野菜でトップクラスのモロヘイヤ

真夏に旬を迎えるモロヘイヤは、葉っぱにムチンが含まれていてゆがいた後に包丁で叩くと粘り気が出るので、暑さで食欲がない時でものどごしよく食べられる野菜です。ビタミンが豊富なので野菜の王様ともいわれています。中でもβカロテンの含有量は群を抜いています。

<生のモロヘイヤ100gあたりに含まれる栄養素と量>
生のモロヘイヤに含まれる栄養素の中から、注目したいものをピックアップしました。

  • カルシウム260mg
  • 鉄1mg
  • βカロテン10000μg
  • ビタミンE6.5mg
  • 葉酸250μg
  • ビタミンC65mg
  • 食物繊維5.9g

甘味があって栄養豊かな大麦若葉

大麦若葉の繊維質は硬く、とても生で食べられるものではないため、野菜として使用されることはありません。そのため生野菜としてのデータはありません。しかし絞って青汁にするとケールのような強い苦味はありません。ほんのり甘味があり緑茶との相性も良く、日本人に馴染みのある味に調整することが可能です。穀物なのでアミノ酸も豊富に含まれていて、青々とした葉には抗酸化作用のあるカテキンも多く含まれています。

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せっかく飲んでも無駄になる?一緒に飲んではいけないもの

美容と健康のため、または不足しがちになっている特定の栄養素を補給するために青汁を飲んでも、一緒に食べる食品の組み合わせによっては栄養素の吸収が妨げられることがあります。食事時や間食時に青汁を飲んだり、青汁を使ったアレンジレシピを作ったりするときには、青汁との組み合わせで欲しい栄養素の吸収率を下げてしまうような無駄がないようにしたいですね。
そこで注意が必要な組み合わせについて、いくつかを紹介します。

鉄の吸収率を下げるもの

  • 鉄とタンニン
    タンニンが多く含まれる食品:コーヒー・紅茶・赤ワインなど
  • 鉄とリン酸塩
    リン酸塩が多く含まれる食品:加工食品・インスタント食品など
  • 鉄とカルシウム
    カルシウムが多く含まれる食品:牛乳、乳製品など
  • 鉄とポリフェノール類
    ポリフェノールが含まれる食品:緑茶・チョコレート・豆乳など

カルシウムの吸収率を下げるもの

  • カルシウムとフィチン酸
    フィチン酸が多く含まれる食品:ゴマ・小麦・とうもろこしなど
  • カルシウムとシュウ酸
    シュウ酸が多く含まれる食品:ほうれん草・キャベツなど

この他、カルシウムは摂取量が増えると吸収率が下がることもわかっています。

多種類の食品から栄養を摂るのがベスト

食品に含まれる栄養素の吸収を阻害する組み合わせをいくつか紹介しましたが、もちろんこれが全てではありません。しかし必要以上に心配する必要はなく、いろいろな食材を摂ることで相互作用により、栄養上の悪影響がほとんどなくなるとも考えられています。だからできるだけ多種類の食材から栄養を摂ることが推奨されているのですね。

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一緒に飲むと相乗効果が期待できるもの

先ほどとは逆に、一緒に摂取することで吸収率がアップするという相乗効果が期待できる組み合わせを紹介します。青汁を飲むときに少し意識していると、効率的に栄養補給することができます。

鉄の吸収率をあげるもの

  • 鉄とビタミンC
    ビタミンCが多く含まれる食品:キャベツ・ピーマン・イチゴ・キウィなど
  • 鉄と動物性タンパク質
    野菜に含まれる鉄は非ヘム鉄、肉に含まれる鉄はヘム鉄と区別されています。ヘム鉄の方が非ヘム鉄よりも吸収率が高いことがわかっています。野菜に含まれるヘム鉄も、肉や魚などの動物性タンパク質と一緒に食べることで、タンパク質が非ヘム鉄を包んで吸収率を高めてくれます。

カルシウムの吸収率を上げるもの

  • カルシウムとビタミンD
    ビタミンDが多く含まれる食品:キノコ類・牛乳・サーモン・卵など

また太陽に当たることで、体内でビタミンDを合成することもできます。

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青汁が選ばれる理由

食事の偏りによる野菜不足を感じて、健康食品で補助的に栄養補給をする人は多いと思います。健康食品は種類が把握できないほどたくさんありますが、その中でもなぜ青汁が選ばれるのか、なぜ青汁を選ぶとよいのかについて考えてみます。

健康食品は不足しがちな栄養分を補うために摂取するので、欲しい栄養素をできるだけ効率よく吸収したいと思うでしょう。食事から栄養素を取り入れるときには、栄養素同士の相性があることを前章で説明しました。組み合わせによっては吸収が阻害されたり、相乗効果でお互いの吸収率がアップしたりします。

しかし一つ一つの栄養素だけに目を向けるのではなく、様々な食品から栄養素を取り入れることで組み合わせの相性による栄養上の悪影響は無視できるレベルになることもわかっています。単体の食品よりは複数の食品から栄養を取り入れるのがよいということです。

ところでサプリメントも人気があり、複数の栄養素が配合されている商品があります。しかし野菜・穀物・肉類などの食品と比べると、含まれる栄養素の種類は非常に少ないのです。この記事のはじめの方でケールやアシタバなどの野菜に含まれる栄養素をいくつかあげていますが、実際はこれ以上に様々な栄養素が一つの野菜には含まれています。微量の栄養素から、その野菜の特徴ともいえるほど多量に含まれる栄養素まで、本当に多種類の栄養素が野菜に限らず他の食材にも含まれています。

その中でも青汁が選ばれるのは、生の野菜を原料としているからです。純度の高い栄養素が数種類配合されているサプリメントとは違い、自然に近い雑多な栄養素が混ざっているのが魅力の一つです。

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青汁の選び方

次に自分に最適の青汁を探すときに、どのようなことを考えればよいかについて解説します。

味の好み

青汁の原料になっている緑色野菜によっては、香りや味が強いものもあります。せっかく青汁を飲もうと思っても、続けられなければ意味がありません。
そこでまずは香りや味が好みのものを選ぶことをおすすめします。

飲む目的

青汁を飲む目的も考える必要があります。毎日の生活の中で、自分に足りていない栄養素を含む青汁を選ぶべきです。パッケージ記載の成分をよく見て、自分にあった青汁を選びましょう。

こだわるなら品質にも目を向ける

野菜は自然のものなので、生産地や生産・製造方法などにも意識を向けると、より自分好みの青汁に出会える可能性が高まります。産地や農法・製法などによっても栄養価や風味が変わることもあるので、気になる人は情報収集してみましょう。

青汁の奥深さが愛着のきっかけに

青汁の種類は使う野菜や製法から、乳酸菌などの添加や緑茶の風味づけまで、様々な商品があります。長く飲み続けられる青汁、自分に必要な栄養素が十分に含まれている青汁を見つけることは容易ではないかもしれません。そのためには積極的に情報収集をし、お試し品やサンプルを見つけて試飲をしてみるのがおすすめです。


<参考>

*1:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-005.html
*2:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-042.html
*3:https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
*4:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-007.html
*5:https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheet-vitamin-a.pdf
*6:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-002.html
*7:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-072.html
*8:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-011.html
*9:https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail176.html
*10:https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=6_06080_7
*11:https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=6_06005_7
*12:https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=6_06293_7
*13:https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/07.html
*14:https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/01.html

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