【5分でわかる】書籍「SWITCH(スイッチ)オートファジーで手に入れる究極の健康長寿」

多くの人が発症し健康寿命を縮める糖尿病、がんなどの主な原因の一つが、遺伝よりはむしろ食事などのライフスタイルの影響が大きいことが明らかになりました。飢餓状態に陥ると起動するオートファジーは、体によい変化をもたらします。しかしオートファジーは常にONにしておくべきではなく、ONとOFFを切り替えるスイッチをうまく作動することが必要であると考えられています。

16時間以上何も食べないでいると、オートファジーが起動するといわれていますが、1日3食が習慣化しているので、実践が難しいように感じます。オートファジーを起動させるスイッチについて詳しく解説した本『SWITCH(スイッチ)オートファジーで手に入れる究極の健康長寿』には、16時間の断食以外にもオートファジーが起動する条件が紹介されています。いきなり断食は無理かなと思う人は、オートファジーが起動しやすくなる体作りから始めてみると良いかもしれません。

この記事では『SWITCH(スイッチ)オートファジーで手に入れる究極の健康長寿』(ジェームズ・W・クレメント著、クリスティン・ロバーグ著、児島 修翻訳、日経BP出版)の内容をコンパクトにして紹介しています。

SWITCHとは

人の体は何兆個もの細胞で構成されています。そして細胞内では健全な状態を保つために、常に物質が分解・合成されています。小さな細胞内で複雑な化学反応がつながって、命を維持する仕組みを作っています。大きく分けると「成長」に向かう動きと「修復」に向かう動きになります。

「成長」とは子どもの背が伸びていくような細胞が増えていくことだけではなく、身体的な成長が止まった大人も古い細胞を新しい細胞に入れ替えるため、細胞分裂をすることも「成長」に含まれます。

「修復」とは「成長」活動で体外に排出されずに残った不要なタンパク質や、異常タンパク質、病原体や古くなって機能不全になった細胞小器官などを取り込み、分解する活動です。例えるなら「細胞のゴミ収集車」のような活動です。そしてこれは細胞が備えている自己浄化機能であり、人間だけではなく動物や酵母菌にも存在する機能です。自分の細胞内にあるものを食べて消化するので「自食」を意味するギリシャ語で「オートファジー」とも呼ばれています。

本のタイトルになっている「SWITCH」は「成長」と「修復」を行き来するスイッチという意味であり、スイッチのオンオフをつかさどっているタンパク質のことを「mTOR(エムトア)」といいます。mTORが活性化すると「成長」のスイッチが入り、mTORの働きが抑制されると「修復」つまりオートファジーが機能します。

オートファジーが機能すると体内で何が起こる?

オートファジーを「細胞のゴミ収集車」に例えましたが、もう少し詳しく説明します。

mTORの働きが抑えられてオートファジーが活性化されると、三日月のような形をした二重構造の膜が形成され、成長しながら細胞内にある不要物を取り込んでいきます。完全に取り込んで球状になったものをオートファゴソームといい、リソソームという小器官と融合します。リソソームはいく種類もの分解酵素を持ち、この酵素により不要物が分解されます。バラバラに分解された物質は、体内に必要なさまざまな物質に作り替えられます。オートファジーがゴミ収集車に例えられるなら、リソソームはリサイクル工場といえます。

リサイクル工場では新しいタンパク質や遊離脂肪酸、糖の他、アデノシン三リン酸(ATP)という生命活動になくてはならないエネルギー源も作ります。ATPは筋肉を動かしたり、脳や神経の働きに必要な、非常に重要な物質です。オートファジーが機能していない間もATPは細胞内のミトコンドリアがで作られています。ミトコンドリアは一つの細胞に平均100個存在するといわれていますが、加齢によりミトコンドリアのATP生産能は落ちてきます。ミトコンドリアが機能不全に陥ると、心臓病、糖尿病、がん、認知症など、さまざまな病気の原因になることがわかっています。
オートファジーには、機能しなくなったミトコンドリアも取り込んで、新しく作り替えることができます。つまりオートファジーを活性化させることで、ミトコンドリアを若返らせることが可能になり、その結果、老化を遅らせ病気の発症リスクも減らせます。

オートファジーを起動させるには

オートファジーの機能には驚くばかりですが、オートファジーは常にオンになっているわけではありません。オートファジーを活性化するには、飢餓状態を作ることやインスリンやインスリン様成長因子1(IGF-1)の影響をブロックするのが有効であることがわかっています。IGF-1はインスリンに似たペプチドで成長ホルモンの刺激で分泌され、組織や細胞の成長を促します。

インスリンは血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が上がると、すい臓から分泌されます。食後はインスリンが分泌されるので、オートファジーは起動しません。逆にインスリンやIGF-1はmTORを活性化させ、細胞の「成長」モードのスイッチを入れます。

グルカゴンにはインスリンとは逆で血糖値を上げる働きがあります。食事を摂らないと血糖値が下がるので、グルカゴン値が上がります。グルカゴン値が上がると、オートファジーが働きはじめます。

オートファジーは細胞に栄養がなくなると、細胞死を避けるために不要物から必要なものを再利用するシステムです。そのため普段通りの食事をして十分に栄養で満たされた細胞では作動せず、飢餓状態またはそれと同等の状態(例えば運動)に置かれた時に起動します。

自分でコントロールしやすいのは食事の時間です。最後に食事をしてから16時間後にオートファジーがONになるので、午前7時に夕食を食べ終えたら朝食は抜いて、昼食を11時に食べるようにすると、16時間の絶食が可能になります。

オートファジーONとOFFのバランスが大事

健康維持にオートファジーは万能かといえば、そうではありません。何事も良い面と悪い面があり、また機能を動かし続けていると疲弊してしまいます。著者は1年のうち8ヶ月オートファジーをONにしたら、残りの4ヶ月はOFFにすることが理想だと述べています。この比率を守れば、2ヶ月オンにして1ヶ月オフにするなど、どのようなサイクルで行ってもよいです。

糖尿病やがんと無縁な人々とオートファジーの関係

長寿や病気は遺伝子の影響があるといわれていて、従来人間の寿命に遺伝子が影響する割合は、25〜35%とされてきました。しかし新しい分析結果によると、遺伝子の影響はわずか7%で、寿命に大きな影響を与えるのは、ライフスタイルであるといわれています。何を食べ、どれくらい運動し、どの程度のストレスを感じているか、さらには人間関係や社会とのつながりなども影響していると考えられています。

遺伝子の影響がそれほど大きくないとわかったのは、19世紀から20世紀半ばまでに生まれた4億人以上を対象にした調査結果からでした。兄弟姉妹よりも夫婦の寿命の方が似ていたからです。夫婦は他人なので、兄弟姉妹ほど共通の遺伝子を持っていません。しかし夫婦のライフスタイルはよく似ています。

沖縄に暮らす年配者の健康寿命が長い理由

ライフスタイルに着目すると、地域によっても糖尿病やがんにならない住民が多い土地があります。その一つが沖縄で、日本の中でも長寿の地域でよく知られています。沖縄県民は1970年くらいまで、糖尿病や心臓病、脳卒中、がんなどの疾患にかかりにくく、高齢になっても元気で過ごす人が多くいました。
沖縄の人が他県に移住すると、このような健康上の利点が失われていたことから、遺伝的なものではなく、沖縄での暮らしが長寿の要因であると考えられています。

沖縄の暮らしは一般的に体を動かす機会が多く、ストレスも感じにくい環境で、人間関係のつながりも豊かであり、それらが長寿に関わっていると思われます。特に食事については他県と大きく異なる点があります。低GIの野菜を多く摂取していること、豆類の摂取が多いこと、肉類の摂取が少なく、水産物を適度に摂取していること、乳製品の摂取量が少ないことなどがあげられます。

摂取カロリーは一般的な成人の推奨摂取カロリー2000キロカロリーに対して、沖縄の年配者は約1780キロカロリーで、少し低めです

ラットを用いたカロリー制限の研究では、カロリー制限をすると成長ホルモンとIGF-1が抑制され、寿命が伸びるだけではなく、がんの自然発生率が50%以上低下したという報告もあります。沖縄に住む若い世代は食生活が変わり、BMI(ボディマスインデックス)が高く、心疾患や糖尿病の発症リスクが年配者よりも高くなっています。

沖縄に暮らす年配者の長寿とオートファジーの関係を考えると、摂取カロリーが低めであることから、成長ホルモン・インスリン・IGF-1の分泌が抑えられ、オートファジーがONになる条件が揃っています。

低身長症の人たちが長寿である理由

小人症とも呼ばれる遺伝性の低身長症があり、彼らの寿命が長いことにも注目してみると、興味深いことがわかりました。低身長症の人たちは、高糖質・高脂質の食事を摂っていて肥満であっても、血圧は正常で糖尿病の発症者が1人もいません。がんの発症例も非常に少なくなっています。
低身長症の原因はさまざまで、成長ホルモンの分泌が少ない場合、IGF-1遺伝子の欠損などがあります。いずれにしても、成長ホルモンやIGF-1などの分泌が少ないと、沖縄に住む人と同様に、オートファジーがONになる条件が揃っています。

長寿の動物もオートファジーのスイッチを入れる

厳しい環境に住むホッキョククジラとハダカデバネズミは、がんになりにくく、寿命も長いことで知られています。ホッキョククジラは極寒の海で、動物性のプランクトンを食べて暮らしています。厳しい環境のため、冬の間はほとんど食べることができず、体に蓄えた脂肪をエネルギーに変換します。それだけではなく、極度のカロリー不足に陥るため、オートファジーが働きます。ホッキョククジラには、がんになる個体が極端に少ないことも知られています。

ハダカデバネズミは哺乳類でありながら変温動物で、東アフリカと中東の砂漠地帯に生息しています。ハダカデバネズミは同じげっ歯類のマウスなどの寿命(2〜5年)とは違い、30年も生き、かつ老化が見られ始めるのは25年を過ぎた頃からです。砂漠は昼間暑く、夜は寒いので、ハダカデバネズミは地中でコロニーを作って生活しています。地中で仲間とくっついて眠るため、慢性的に酸素欠乏状態に陥ります。また食料は年間を通して安定的に得られることはなく、乾季は蓄えた食料で飢えをしのいでいます。

このように厳しい自然環境で飢えや酸素不足に耐える期間にはオートファジーが働き、がんなどの病気を発症せず、若々しい状態を保ち長生きします。

オートファジーを起動させるための食事と栄養

オートファジーは体に必要な栄養素が十分に摂取できないときに起動する、命を守る機能です。飽食の現代、オートファジーを起動させなくても生きていけるようになり、糖尿病や心臓病、がんなどの病気に悩まさせるようになりました。医療が発達し、寿命は昔よりも長くなっても健康寿命はどうでしょうか。昔に比べて運動量が減り、栄養、特に糖質の摂り過ぎにより、オートファジーが起動する機会が減少しました。

できる限り若々しく元気に暮らすためには、オートファジーを意図的に起動させるためのライフスタイルが求められます。以下にオートファジーを起動させるための食事と栄養をまとめます。

  • 血糖値を急上昇させる高GIの糖質(砂糖、小麦粉、果物など)の摂取を減らす。
  • 動物性タンパク質や乳製品の摂取量を減らしてIGF-1血を下げる。
  • 低GIの野菜や木の実など、良質の脂質を摂取する。
  • 肉は控えめに摂る。
  • 夕食は早めに食べ、朝食はできるだけ抜き、16時間程度物を食べない時間を確保する。

常識や習慣がガラリと変わる健康法「オートファジー」

これまで良かれと思っていた食習慣が、実は良くないことだとわかり、衝撃を受けた人は多いのではないでしょうか。ノーベル賞も受賞したオートファジーの研究は、糖尿病やがんの他、アルツハイマーの治療法にも利用できると期待されています。

私たちの普段の生活で、オートファジーを意識することによって、病気を回避して若々しく元気で過ごせる日々を手に入れることができればよいですね。

『SWITCH(スイッチ)オートファジーで手に入れる究極の健康長寿』(ジェームズ・W・クレメント著、クリスティン・ロバーグ著、児島 修翻訳、日経BP出版)

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