大麦若葉の青汁に含まれる「ルテイン」は多い方がよいは間違い?

青汁の主原料は緑色野菜ですが、緑色野菜にはカロテノイドという黄色の色素の一種であるルテインが含まれ、特に大麦若葉にはルテインが多いといわれています。そもそもルテインとはどんな栄養素なのかについて解説します。その上で青汁選びはルテイン含量が多い方がよく、ルテインの量を基準に青汁商品選びをするべきなのか、またはすべきではないのかについて考えてみましょう。

ルテインとは?

ルテインは緑黄色野菜や黄色の食材に含まれるカロテノイドの一種で、黄〜橙色をした色素です。体内では合成されないため、食品から摂取する必要があります。ルテインは同じ仲間の色素であるゼアキサンチンと共に、ヒトの網膜内にある黄斑部に特異的に蓄積されます。
ルテインとゼアキサンチンの黄斑部での役割は、反対色である補色(青い色)を吸収することです。青い色は波長が紫外線の次に短く、目の奥に届きます。エネルギーが高いために目の奥まで入って組織を傷める危険性がある光です。パソコンなどの画面からもブルーライトが出ているので、ルテインとゼアキサンチンは目を守る大事な働きをしています。

ルテインとゼアキサンチンのもう一つの役割は、高い抗酸化力により活性酸素を除去することです。この役割により、酸化ストレスから目を保護しています。*1
網膜内の黄斑部というとても小さな部分ですが、その部分に特異的に蓄積して目を守っているのですね。

ルテインが含まれる食品と1日の目標摂取量および現状

ルテインは緑黄色野菜などに含まれていると説明しましたが、具体的にどのような食材に含まれているのか紹介します。
ルテインが多く含まれている食材は、農畜産業振興機構と米国農務省が発表しているデータによると、ほうれん草・かぶの葉・ケール・とうもろこし・にんじん・かぼちゃ・卵黄などです。*2、*3
ルテインはカロテノイドという黄〜橙色の色素であることから、ほうれん草やケールのような緑の濃い野菜以外に、にんじんやかぼちゃなどの黄色やオレンジ色の食品にも含まれていることがわかります。

健康な視覚を維持するため推奨されているルテインの1日摂取量は、アメリカで行われた臨床試験AREDS(Age Related Eye Disease Study)2の結果から、10mgと考えられています。*1
ルテインはほうれん草とパセリに特に多く含まれていて、共に100gあたり約10mgのルテインが含まれているといわれています。ほうれん草で考えると、1束が約200gなので1/2束で10mg摂ることができます。*4
厚生労働省による令和元年の国民健康・栄養調査結果は、20歳以上の緑黄色野菜平均摂取量は85.1g*5で、目標値120g*6を下回っています。このデータだけ見ると、ルテインの摂取量が足りていないようにも感じますが、ルテインは野菜以外に卵などにも含まれているので実際のところ不足しているかどうか、不足しているとしてもどれだけ不足しているかは明らかではありません。

ルテインの働きとサプリメント

ルテインは網膜内の黄斑部で紫外線やブルーライトから目を守る働きをすることが知られていますが、その他ある物を他の物や背景と区別して見分けられるコントラスト感度と呼ばれる目の機能とも深く関わっています。黄斑部の色素(ルテイン)の密度が高まると、暗い場所で物の輪郭がはっきり見えるようになります。逆にルテインの密度が低くなると、物の輪郭が見えにくくなります。

また、2013年に発表された AREDS2の試験,および GLARE2研究(米国ジョージア大学のビジョンサイエンス&ヒューマンバイオファクターラボで行われた Hammond らの研究)結果から、健康な視覚を長く保つためには、1日にルテイン10mgとゼアキサンチン2mgを摂取することの有効性が示唆されました。*1

スマートフォンやパソコンの画面を見る時間が格段に増えた昨今、目がブルーライト にさらされる時間も増えており、ますます目の負担が増えてきています。そこで目の健康のために十分量のルテイン摂取の手段として、ルテイン含有のサプリメントを利用することも一つの選択肢となり得るでしょう。

青汁にはどれくらいのルテインが含まれている?

では青汁には、どれくらいの量のルテインが含まれているでしょうか。ルテインの含有量は青汁の主原料によって異なるのか、異なるとしたらどの程度の違いがあるのか知りたいですよね。
緑黄色野菜にはカロテノイドが含まれているので、青汁の原料として使われている緑黄色野菜のケールには、もちろんルテインが含まれています。野菜とは呼ばれませんが、大麦若葉にもルテインが含まれています。ルテインの含有量を表示している青汁もあれば、表示していない青汁もあります。

青汁の粉末中に含まれるルテイン量を表示している同一メーカーの青汁があったので、参考までに原材料に大麦若葉を使った青汁とケールを使った青汁でルテイン量を比較してみました。ルテイン量は同じ野菜でも産地・品種・栽培法などにより異なるためあくまでも参考程度に考えてください。

ケールと大麦若葉を原材料とした青汁粉末に含まれるルテイン量の比較

同じメーカーで作られているケールの青汁と大麦若葉の青汁のパッケージに記載されたルテイン量は、それぞれ以下の通りでした。

◆ケール粉末100g中に含まれるルテインの量:20mg
◆大麦若葉粉末3g中に含まれるルテインの量:1.6mg

表示が粉末100gあたりと3gあたりのルテイン量になっているため、3gあたりに換算すると以下のようになります。

◆ケール粉末3g中に含まれるルテインの量:0.6mg
◆大麦若葉粉末3g中に含まれるルテインの量:1.6mg

次に1日あたりに飲む目安量を見ると、いずれも6g程度なので一日で摂取するルテイン量は、

◆ケールの青汁6g中のルテイン量:1.2mg
◆大麦若葉の青汁6g中のルテイン量:3.2mg

となり、大麦若葉の青汁は、ケールの青汁の2倍近くのルテインが摂取できることになります。

目の健康のためのルテイン摂取は青汁で十分か?

仮に健康な視覚を長く保ちたいと考え、大麦若葉の青汁でルテインを摂取したとすると、前述のアメリカで行われた試験で示唆された1日のルテイン摂取量10mgには程遠い量であることがわかります。
つまり青汁に含まれるルテイン以外からもルテインを摂取することが必要だとわかります。

ルテインが含まれる青汁を飲むメリット・デメリット

十分な量のルテインが摂取できないとしても、ルテイン含有の青汁を飲むメリットはあるのでしょうか。逆にどんなデメリットがあるのかについても考えてみたいと思います。

ルテインが含まれる青汁を飲むメリット

食生活で緑色の野菜が不足しがちと感じている人は、ルテインを含む青汁を飲むメリットがあります。ルテインは緑色の野菜だけではなくにんじんやかぼちゃなど黄色の野菜にも含まれていますし、フルーツや卵にも含まれています。緑色の野菜を食べる機会が少ない人は、緑色の野菜で作られている青汁で栄養素を補え、ルテインも補足することができます。

ルテインが含まれる青汁を飲むデメリット

反対に緑色の野菜を十分に食べる食生活ができている人は、ルテインが含まれている青汁を飲むメリットはなく、緑色野菜に多く含まれている栄養素の過剰摂取になる可能性があります。青汁に多く含まれる栄養素は食物繊維・ビタミン・ミネラルですが、それらも過剰摂取により健康を害する危険があるため、注意しなくてはなりません。

どの栄養素が過剰摂取になるかというところは個人の食習慣により異なるので、普段食べる食材に含まれる栄養素がどのようなものであるか、大まかにでも把握しておくことが必要です。
参考までに、過剰摂取により体調に悪影響を及ぼす可能性のある栄養素をいくつか紹介します。

栄養素過剰摂取による健康障害
ビタミンA頭痛、めまい、発熱、吐き気、顔面のむくみなど
ビタミンK溶血性貧血、吐き気、軟便など
葉酸亜鉛の吸収阻害
食物繊維(フラクトオリゴ糖)緩下作用(排便が促され、時に腹痛や下痢を伴う)
カルシウム高カルシウム血症、高カルシウム尿症など

*7、*8、*9

青汁などの健康食品は健康な人を対象とした食品です。薬を服用している人は健康食品に含まれる栄養素が薬の作用に影響を及ぼす場合があるため、自己判断で健康食品を摂取することは控えましょう。服用前に、必ず主治医に相談してください。*10

ルテインを含む青汁をあえて選ぶ必要はない?

ルテインはカロテノイドと呼ばれる黄色の色素なので、緑黄色野菜や黄色の食材に含まれることが多く、それらの食品を食べる機会が少ないとルテインが不足していることがあるかもしれません。ルテインは網膜の黄斑部に存在し、物の輪郭をくっきり見せる働きと、活性酸素から目を守る働きがあるので、不足すると目の健康を保てなくなる可能性があります。

ルテイン不足を補うためには、ルテインを含む食品を意識して食べることが最も重要で、それでも足りないと感じる場合には、次の選択肢としてサプリメントを利用することが考えられます。
ルテインを含む青汁はルテインの配合量が1日あたりおよそ3mgで、サプリメントのおよそ20mgに比べてあまり多くないため、ルテイン不足を感じている人には青汁でルテイン補給をすることを積極的にはおすすめしません。

逆にルテインを含む青汁を摂るとよい人は、緑色野菜が不足しがちな食生活を送っている人です。青汁の主成分は緑色野菜なので、ルテインを含んでいたとしてもメインはビタミン・ミネラル・食物繊維と考えた方がよいでしょう。
緑色野菜不足を感じている人で、普段スマートフォンやパソコンの画面をよく見る人には、ルテインが含まれている青汁はおすすめです。

ルテインを摂る目的、青汁を選ぶ目的を考えよう

この記事ではルテインとその働きについて説明してきました。ルテインは目の健康を維持するために必要な栄養素であることを理解していただけたと思います。ルテインは緑黄色野菜などに含まれる栄養素で、大麦若葉やケールを主原料とする青汁にも含まれることがわかっています。
そこで、身体によいといわれる青汁にルテインが含まれているのなら一石二鳥ということで、ルテイン含有量を基準に青汁を選ぶとよいようにも思えます。

しかし青汁は緑色野菜を主原料にして作られ、野菜の摂取不足による栄養の偏りを補える健康食品です。そのため緑色野菜を普段から不足なく食べる習慣のある人は、ややもすると記事で示したような栄養素の過剰摂取に陥り、健康を害することがあるかもしれません。また目の健康を目的にするなら、1日にルテイン10mgの摂取が有効と示唆されたアメリカの試験結果に照らす と、青汁は1日3mg程の摂取量となり十分量とはいえません。これに対し、ルテインのサプリメントは1日あたり20mgの摂取量です。

以上から目の健康を維持する目的であるなら、青汁商品を選ぶ基準をルテインの含有量で決めることは得策ではありません。目の健康維持を目的にする場合には、第一に食事、第二に青汁よりもルテインのサプリメントがふさわしいでしょう。

ルテイン含有の多めの青汁がふさわしいのは、緑色野菜が不足気味の食生活を送っている人です。結局のところ、青汁はルテインを重視するよりも緑色野菜不足によるビタミン・ミネラル・食物繊維不足を補うことを第一に考えるべきです。

<参考文献>

*1:公益社団法人 日本薬学会
*2:独立行政法人 農畜産業振興機構(alic )
*3:United States Department of Agriculture(USDA)
*4:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
*5:厚生労働省
*6:厚生労働省
*7:一般法人 愛知県薬剤師会
*8:日本食物繊維学会
*9:厚生労働省
*10:厚生労働省医薬食品局食品安全部

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