青汁は免疫力にどの程度有効なのか

病原菌などが身体に進入するのを防いだり、たとえ進入しても病原菌に対抗して身体を守るのは、身体に免疫という機能が備わっているからです。逆に免疫力が下がると病気になりやすくなり、治るまでにも時間を要します。免疫力を上げて、健康に暮らしたいと誰もが願うことですね。私たちの健康は、身体を作る基本になる食べ物のこと抜きでは考えられません。そこで今回は、現代の食事には不足しがちといわれる野菜、特に緑の葉野菜(緑色野菜)が含む栄養素と免疫力の観点から、健康に過ごすために日々の生活の中で私たちにできることをまとめたいと思います。

緑色野菜から作る青汁

タイトルにある青汁について、はじめに解説します。なぜ青汁なのかというと、食べ物が豊かな社会に住んでいる反面、手軽かつ簡単に食事を済ませることができるということもあり、新鮮な野菜を食べる機会が昔に比べて減ってきています。それが近年の野菜摂取不足といわれる原因ともいえるでしょう。
生の緑色野菜には、豊富なビタミン類や抗酸化物質などが含まれています。そのうちのいくつかは、熱に弱く加熱調理によって失われてしまいます。また、1日に必要な量の栄養を摂るためには大量の生野菜を食べなくてはなりません。

そこで緑色野菜を絞って得た汁(青汁)にすれば、加熱調理の必要がないため熱で失われる栄養素はなく、全体の量(カサ)を減らすこともできるので、簡単に緑色野菜の栄養を摂ることができます。青汁はそういう狙いで作る食品です。今回の記事では緑色野菜の栄養価に注目し、身体の免疫力との関わりや、日々の食生活にもっと積極的に取り入れる方法を紹介したいと思います。

免疫とは?免疫の仕組み

私たちの身体は常に病原菌やウイルスにさらされていますが、例え病原菌やウイルスが体内に進入してきたとしても、直ちに病気になるわけではありません。身体の中に「免疫」という機能が備わり、身体にとって有害なものが体内に進入してきたときに、進入を阻止したり進入した場合でも攻撃して排除することができるからです。この免疫の仕組みについて、詳しく説明します。

粘膜免疫で防御

インフルエンザウイルスや結膜炎を起こすウイルス、またはアレルギーを引き起こす花粉やハウスダストなどは、喉や目の粘膜を介して体内に進入します。これらの有害物質の進入を防ぐため、まず粘膜がガードします。粘膜に病原菌などが付着すると、粘液を分泌して進入を防ぎます。花粉症の人が花粉を吸い込むと鼻水が出ますが、これが粘膜免疫の働きです。

それだけではなく、粘膜にはIgAという抗体が多く存在しています。IgAは病原菌などの外敵を察知するとくっついて動けなくし、体外へ排出したりマクロファージの働きを助けます。マクロファージとは、外敵を自分の細胞の中に取り込んで食べてしまう細胞です。(*1)

体内では全身免疫で健康を守る

粘膜を突破して体内に侵入した外敵は、全身免疫と呼ばれる免疫の仕組みで排除されます。白血球の一種である好中球とマクロファージが侵入者を直接捕獲し食べてしまうことにより、外敵を排除します。さらにヘルパーT細胞が他の免疫細胞に外敵の侵入を知らせ、増殖・分化の指令を出します。この指令を受けて活性化したNK(ナチュラルキラー)細胞は、外敵及び病原菌に感染した細胞も同時に攻撃をはじめます。ヘルパーB細胞の指令を受けたB細胞は、抗体を産生して外敵の封じ込めにかかります。(*2)

免疫力が低下する原因

病原菌などの健康を脅かす外敵に対して、私たちの身体を守ってくれる免疫機能ですが、免疫力が何らかの理由で低下すると、病気にかかりやすくなります。免疫力が低下する原因は、加齢・睡眠不足・食生活の乱れ・ストレス・過度な運動などといわれています。(*3)(*4)(*5)(*6)

これらに共通していることは、体内に発生する活性酸素の量が増えることです。活性酸素とは通常の酸素よりも活性化された酸素で、非常に反応性が高く体内で他の物質と反応して身体に有毒な物質を作り、細胞や組織にダメージを与えることで免疫力が低下します。しかし活性酸素は悪者なだけではなく、その強い反応性で病原菌などの外敵を殺す作用もあります。免疫機能の一員として、役立つ存在でもあるのです。(*7)(*8)

活性酸素は反応性の高さゆえ諸刃の剣ともいえる存在であり、過剰な発生をできるだけ少なくしなければなりません。

免疫力を高める栄養素と野菜

免疫力低下の原因はすでに紹介しましたが、どの原因にも共通するのは活性酸素なので、対策は体内に過剰な活性酸素を作らないようにすることです。つまり十分な睡眠を取ること、バランスのよい食生活を心がけること、ストレスをため込まないこと、適度な運動を心がけることなどで、過剰な活性酸素を抑えることができます。

次に免疫力向上をサポートする栄養素と食材について説明します。食材については緑色野菜を中心に紹介したいと思います。

抗酸化作用のある栄養素と緑色野菜

緑色野菜の中には、体内の活性酸素と反応して除去する作用(抗酸化作用)のある成分を多く含むものがあるので、上手に取り入れましょう。抗酸化作用のある栄養素とそれらの栄養素を多く含む緑色野菜を次に紹介しますので、食品選びの参考にしてください。

<抗酸化作用のある栄養素と緑色野菜>
ビタミン類:E・C(ほうれん草、モロヘイヤ、明日葉、ケール、ブロッコリー)カロテン類:βーカロテン、リコピン(しそ、モロヘイヤ、ほうれん草、明日葉、パセリ)キトサン類:アスタキサンチン、ルテインなど(モロヘイヤ、ほうれん草、ケール、アボカド、小松菜)ポリフェノール類:カテキン、アントシアニンなど(ほうれん草、ケール、セロリ、アスパラガス、パセリ)

抗酸化作用のある食材は緑色野菜以外にも、ビタミンA・ビタミンEは肉類・ナッツ類・人参や南瓜などの黄色野菜にも多く含まれています。キトサン類の中のアスタキサンチンを多く含むのは鮭・エビ・いくらなどの赤い魚介類が豊富です。ポリフェノール類はブドウや茄子に含まれるアントシアニン、緑茶にはカテキン、豆類にはイソフラボン、生姜にはショウガオールなど、様々な食品があります。

腸内環境を整える食物繊維

腸には免疫細胞の70%が存在するので、腸を健康に保つことも免疫力UPにつながります。腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整えるため、善玉菌の餌になるオリゴ糖などの水溶性食物繊維を含んだ食品を積極的にとりましょう。腸内の善玉菌の餌になる水溶性食物繊維・オリゴ糖を含む食品はゴボウ、ニンニク・玉ねぎ・大麦・バナナなどです。緑色野菜ではモロヘイヤ、パセリ、しそ、ブロッコリーなどがあります。(*9)

ビタミンB群で粘膜を強化

ウイルスや病原菌・アレルギー物質などが体内に入る第一関門が粘膜です。粘膜には、有害物質が身体の中に入るのを阻止するための機能があります。粘膜が荒れていると粘膜免疫が機能しないので、しっかりケアしましょう。粘膜の健康維持・強化には、ビタミンB群が欠かせません。特にビタミンB2、ナイアシン(ビタミンB3)、ビタミンB6が必要です。

<粘膜を健康に保つビタミンB群が含まれる食品>
ビタミンB2 :モロヘイヤ、ほうれん草、アーモンド、ぶりなど
ナイアシン:たらこ、赤身マグロ、鶏ささみ・ムネ、エリンギなど
ビタミンB6:カツオ、赤身マグロ、豚ヒレ、バナナなど
(*10)

生の緑色野菜を使う青汁のここがすごい

生の緑色野菜を絞って作る青汁は、野菜の量(カサ)を減らすことができることと、加熱しないため熱に弱いビタミンCなどの栄養素も摂取できるという利点があることを本記事のはじめの方で説明しました。でも実は緑色野菜を青汁にするともっとよいことがあるのです。
それは生野菜と違い、青汁は液状なので消化が早いことです。生野菜をそのまま食べる場合には、よく噛まなければ体内での消化に時間がかかってしまい、消化管に負担がかかります。消化に時間がかからないということは、それだけ消化管への負担も軽くなるということです。

もっと免疫力をUPするには

栄養素を中心に免疫力の高める方法を説明してきました。食品に関しては、別の視点からも免疫力を高める方法があります。
体内に病原菌などが進入すると発熱します。これは体温を上げて免疫細胞の働きを活発にするためです。しかし免疫は病気になったときだけ働くのではなく、外からの有害物質の進入に対して常に見張り続けています。そのため病気に対する抵抗力を高めるには、免疫細胞が動きやすい体温を保つ必要があります。体温が低いと病気になりやすいといわれるのはそのためです。(*11)

冬は特に身体が冷えやすいので、温かい飲み物や洋服の重ね着などで冷えを防ぎましょう。食事で免疫力アップのことを説明しましたが、身体を温める食材を活用するとさらに効果的です。冬は温かい飲み物に生姜を加えると身体が温まります。寒さで血行が滞り、足先や指先が冷たくなることがあると思います。そんなとき、身体を温める飲み物で血液循環をよくすることができます。

冬は青汁をホットにして生姜を加えると、免疫力を高めるのを助ける栄養素の摂取と同時に身体も温めることができます。青汁をホットにすると匂いが気になる人は、生姜の香りを強めにきかせて飲んでみてはいかがでしょう。青汁をホットにする場合、熱湯ではなくちょうど飲めるくらいの温度にすると、熱に弱い栄養素が壊れることなく飲めます。

免疫力を高めるための食習慣

この記事では、免疫力を高めるためにはどのような栄養素が必要であるかについて説明してきました。必要な栄養素を含む食品も合わせて紹介しましたが、肉類や野菜・果物などもバランスよく食べることが必要だということを感じていただけたと思います。また身体を健康な状態に保つためには、免疫力のことだけを考えるのではなく、身体全体のことも考えなくてはなりません。

現代の食生活は野菜が不足しがちなので、野菜を意識して摂るようにするのがよいですが、1日の必要な栄養素を生野菜から摂取するとかなりの分量になり食べきれないと感じることがあると思います。そこで熱に強い栄養素の物は加熱調理をして量を減らす工夫も必要です。熱に弱い栄養素は生で食べるのが理想的なので、野菜のほか果物なども取り入れるようにするとよいでしょう。生の緑色野菜を絞って作る青汁も、量(カサ)を減らせして効率的に栄養が摂れる一つの方法です。

これらのいくつかを組みわせることで、毎日無理なく必要な栄養を摂取できます。できるだけ多くの種類の食材から栄養を取るようにすることが栄養の面からも、マンネリ化を防ぐ観点からも大事です。

免疫力UPは日々の食事から

生きるためには食べなくてはなりません。そして食べた物で身体が作られます。毎日の活動に十分な栄養を摂らなければ、すぐに疲れてしまいます。免疫力を高めるためには食べる物だけではなく、規則正しい生活習慣や運動、ストレス発散も必要です。それらをバランスよく行うためにも、身体作りが基本です。

また免疫力を高める栄養素を紹介しましたが、青汁を作る材料になる緑色野菜だけではなく、他の食材にも免疫力を高めるのに役立つ栄養素が含まれています。理想の食事は野菜や肉類のどちらかに偏るのではなく、万遍なくできるだけ多くの食材から栄養素を摂取するのが理想です。青汁は緑色野菜が足りていないときに、効率的に摂取できるよい方法ですが、それだけに頼らないようにしましょう。

楽しい食事を心がけることと同時に、食事のバランスを考えて上手に栄養摂取を行い、免疫力をUPして人生を楽しく豊かに過ごしましょう。

(参考)
*1:https://www.otsuka.co.jp/b240/mechanism/mechanism2.html
*2:https://www.otsuka.co.jp/b240/mechanism/mechanism3.htm
*3:https://www.otsuka.co.jp/b240/mechanism/reason1.html
*4:http://www.minamitohoku.or.jp/information/konnichiwa/201706/homedoctor.html
*5:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcam/1/1/1_1_31/_pdf/-char/ja
*6:https://lci.c.u-tokyo.ac.jp/200619.html
*7:https://www.cremona.gr.jp/medical-check-up/human-dog/free-radical/
*8:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-04-003.html
*9:人の健康と活性酸素 新潟県立看護短期大学紀要(2001-12, 9-19p)杉田 収著
*10:https://www.alic.go.jp/y-kanri/yagyomu03_000001_00040.html
*11:https://www.nips.ac.jp/sp/release/2012/04/_trpm2.html

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