【ビタミンAの効果効能】多く含む食品・摂取量基準・研究情報について

炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維、ファイトニュートリエント。これらは7大栄養素とよばれ、人の成長や健康維持には欠かせない栄養素である。

その中でもビタミンは身体の生理機能の重要な役割をになっていますが、人は体内で生成することができず食事から摂る必要があります。
ビタミンAは視力の維持に欠かせない成分であることは有名ですが、近年、化粧品の成分としても注目されています。また、がんに対しての研究も盛んに行われています。

様々な分野で注目されているビタミンAについて話していきたいと思います。

ビタミンAとは

そもそもビタミンAは、レチノイドといい、その化学構造式の末端構造により大きくレチノール(アルコール)、レチナール(アルデヒド)、レチノイン酸(カルボン酸)に分類されます。それぞれ体内での役割も異なります。

食事などから摂取した場合、体内でビタミンA活性を有する化合物は、レチノールやレチナール、レチニルエステルのほか、β-カロテン、α-カロテン、β-クリプトキサンチンなどおよそ50種類のプロビタミンAカロテノイドが知られています。

体内ではプロビタミンAとして貯蔵されており、ビタミンAが不足すると、プロビタミンAから必要な分だけビタミンAが作られます。プロビタミンAはたくさん摂取したとしても、過剰摂取にはならないと言われています。
食事から摂取され、吸収されたビタミンAはタンパク質とくっつき、血液にのって肝臓や他の場所まで厳重に運ばれ、いざというときに備えて貯められます。せっかく摂ったビタミンAを体中に運び届けるために、十分なタンパク質も合わせて摂りましょう。

また、50種類ほどあるプロビタミンAのなかでは、β-カロテンが最も効率良くビタミンAに変換されます。α-カロテンとβ-クリプトキサンチンの変換効率は、β-カロテンの半分程度です。β-カロテンのビタミンAへの変換効率が良いとはいえ、β-カロテン自身はビタミンAの約1/12の作用だといわれています。

ビタミンAの効果効能・体内における作用や役割

体内で様々な作用や役割をになっているビタミンAですが、主に視物質の構成成分、粘膜・皮脂の維持、抗がん作用があると言われています。

視力に関わっているというイメージは強いかと思いますが、皮膚に関しては美容成分として中もされ現在も多くの研究が行われています。

視物質の構成成分

光を感じることの出来る視細胞は桿体細胞と錐体細胞に分類され、そのうちレチナール(ビタミンA)は桿体細胞に働きに重要な役割をになっています。
桿体細胞は弱光でも働き、明暗を識別する細胞であり、ロドプシンという視物質が関与しています。光を感じる視物質のロドプシンは、オプシンと呼ばれるタンパク質とレチナールから構成されています。レチナールが光を受けると形が変化し 、そのことによりオプシンも形が変化することで、光を感じ、脳へ信号が送られます。

粘膜・皮脂の維持

角質剥離、表皮ターンオーバー促進、皮脂分泌抑制、繊維芽細胞を活性化など、様々な効果があり、ビタミンAは粘膜・皮脂の維持に重要な役割をになっています。

抗がん作用

1926年に発表された論文でビタミンA欠乏マウスにがんが発生したという研究を皮切りにレチノイド(ビタミンAの一種)やプロビタミンAであるβ-カロテンは動物ほとんどすべての実験腫瘍に抑制効果があることが証明されています。人に対しても天然や合成のレチノイドががんの予防や治療に有効であることが認められ臨床的にも用いられています。レチノイドは細胞の核に到達すると遺伝子の発現を調整し、正常な分化を維持し発がんを抑制するという機序が考えられています。

急性前骨髄球性白血病では、ビタミンAの誘導体であるオールトランス型レチノイン酸(ATRA:All-trans Retinoic Acid)がタミバロテンが使用されます。他の抗がん剤が白血病細胞を直接破壊するのに対し、ATRA、タミバロテンは白血病細胞を分化・成熟させることによって、正常な白血球と同様な経過をたどって死滅させることで、急性前骨髄球性白血病の治療に用いられています。

体の健康を支える重要な役割

抗がん作用というと大事にも聞こえますが、普段の風邪などに対する免疫にも働き、視力の維持だけではなく、美容・健康の分野でビタミンAは必要な栄養素となっております。

ビタミンAの欠乏症(症状/対策)

体に必要なビタミンですが、足りなくなってしまうとどうなってしまうのでしょうか。

ビタミンAの典型的な欠乏症として、乳幼児では角膜乾燥症から失明に至ることもあり、成人では夜盲症を発症します。その他、成長阻害、骨及び神経系の発達抑制もみられ、皮膚の細胞の分化・増殖の障害、皮膚の乾燥・肥厚・角質化、免疫能の低下や粘膜上皮の乾燥などから感染症にかかりやすくなると言われています。

夜盲症

ビタミンA欠乏症に夜盲症があげられます。初期の段階では、ビタミンAの欠乏によってロドプシンが作られなくなる結果、眼が暗さに慣れなくなるといった症状が合わられます。更にビタミンAの欠乏が進むにつれ、眼の乾きや涙の分泌減少、視力の低下までもみられてきます。他には皮膚の乾燥、粘膜の乾燥にも繋がります。

ビタミン剤の大量投与で、ビタミンA欠乏症を効果的に治療することができます。症状が悪化している時や網膜に異常がある時は、筋肉に直接ビタミンAを注射することで短時間で症状を緩和させる事ができます。視力の低下や粘膜の炎症などの症状がある場合でも、ビタミン剤を使用した治療法で炎症を治すことができます。
また、再発を防ぐために、定期的にビタミン剤の投与を受ける必要があります。

原因

ビタミンAの欠乏症は現在でも発展途上国では深刻化されている問題です。
ただ、長期にわたり日本でも主に野菜に含まれているβ-カロチンの摂取量が不足してしまったり、体内で作られたビタミンAを全身に運んでくれる血液中のタンパク質が、重度の怪我や、火傷などの影響により減少し、ビタミンAの摂取量が減少したと感じた場合にも症状が現れます。

予防と対策

ビタミンA欠乏症を予防するには、濃い緑色の葉野菜、黄色やオレンジ色の果物(パパイヤやオレンジなど)、ニンジン、黄色い野菜(カボチャなど)を食べる必要があります。その他に野菜以外にもビタミンAで栄養強化された牛乳とシリアル、レバー、卵黄、魚の肝油などの食品を摂ることで予防することができます。
また、好き嫌いが多い、食生活の乱れが気になる場合はサプリメントなどでビタミンAを補うことが大事になります。

ビタミンAの過剰症(症状/対策)

逆にビタミンAを摂りすぎてしまった場合、どのような症状がでてくるのでしょうか。

ビタミンAの過剰摂取による臨床症状では頭痛が特徴であり、急性毒性では脳脊髄液圧の上昇が顕著であり、慢性中毒としては、体重の減少や食欲不振、四肢の疼痛性腫脹、頭蓋骨の変形、微熱、脱毛、甲状腺機能低下、肝障害などさまざまな症状が報告されています。

また、ビタミンAの副作用として催奇形性があり、妊娠中の女性の方は注意が必要で、妊娠中の方はビタミンAを多く摂取する機会がある場合、医療機関で相談することをオススメします。

骨折

レチノイン酸は、骨芽細胞を阻害し破骨細胞を活性化することが知られている中、推奨量の2倍程度(1,500 µgRAE/日)以上のレチノール摂取を30年続けていると、推奨量(500 µgRAE/日)以下しか摂取していない者に比べて高齢者の骨折のリスクが2倍程度になるとの報告があります。
一方、この報告の後に、世界各国で行われた疫学的研究では、否定的な報告も多く研究が進められています。

参考文献
Michaelsson K, Lithell H, Vessby B, et al. Serum retinol levels and the risk of fracture. N Engl J Med 2003; 348: 287─94.
Ribaya-Mercado JD, Blumberg JB. Vitamin A: is it a risk factor for osteoporosis and
bone fracture? Nutr Rev 2007; 65: 425─38.

原因と治療

また、ビタミンAは食品からの摂り過ぎの危険は少ないと言われていますが、医薬品や健康食品で摂り過ぎた場合はビタミンA過剰症になる事が報告されています。
ビタミンA過剰症の治療法として最も身近にできるものは、ビタミンAを含む食べ物の摂取制限があります。特にビタミンAのサプリメントを服用している場合には使用を中止します。

ビタミンAの研究情報

体を支える重要なビタミンAですが、近年様々な分野で研究が行われているので一部紹介します。
特に注目されているのががんの予防です。

がん予防

培養細胞や実験動物における研究から、天然及び合成のレチノイドが、皮膚、乳、肝臓、結腸、前立腺その他の部位において、発がんを抑制する能力があると報告されています。しかし、既成ビタミンAの摂取とがんとの因果関係を試験した人の研究結果は、あまり明確にはなっていません。

参考文献
Ross AC. Vitamin A and retinoids. In: Shils M、 Olson JA、 Shike M、 Ross AC. ed. Modern Nutrition in Health and Disease. 9th ed. Baltimore: Lippincott Williams & Wilkins; 1999:305-327.

乳がん予防

10以上の研究で、ビタミンA濃度と発がん率の研究が行われています。それらの中で、1つの研究だけから、血清中レチノールと肺がんリスクとの間に統計的有意な逆相関が認められています。
しかし、他の研究では良い結果が出ておらず、明確なものは明らかになっていません。

参考文献
Comstock GW、 Helzlsouer KJ. Preventive nutrition and lung cancer. In: Bendich A、 Decklebaum RJ、 eds. Preventive Nutrition: The Comprehensive Guide for Health Professionals. 2nd ed. Totowa: Humana Press Inc; 2001:97-129.
Omenn GS、 Goodman GE、 Thornquist MD、 et al. Effects of a combination of beta carotene and vitamin A on lung cancer and cardiovascular disease. N Engl J Med. 1996;334(18):1150-1155.

ビタミンAでがん予防ができることを期待し、現在も多くの研究が行われています。

ビタミンAを摂取に気をつけるべき人(薬の飲み合わせ等)

体にとって重要な栄養素であるビタミンAですが、注意が必要な場合があります。

妊娠中、あるいは妊娠を希望する女性の場合、妊娠中のビタミンAの過度な摂取は、奇形の発症リスクが高まるため注意が必要になります。そのため、ビタミンAが多い動物性食品や緑黄色野菜、関連サプリメントなどの取り過ぎに注意が必要となります。

参考文献
Azaïs-Braesco V, Pascal G. Vitamin A in pregnancy: requirements and safety limits.
Am J Clin Nutr 2000; 71: 1325S─33S.
Rothman KJ, Moore LL, Singer MR, et al. Teratogenicity of high vitamin A intake. N
Engl J Med 1995; 333: 1369─73.

薬との相互作用

また、薬との飲み合わせも注意が必要です。

  • ワーファリン(血液凝固防止薬)

ビタミンAの多量摂取でワルファリンの抗血液凝固作用が増強されることが報告されています。

抗生物質

テトラサイクリン系抗生物質であるアクロマイシンとの飲み合わせの副作用として激しい頭痛が起こる可能性があります。

角化症治療剤

チガソンとの飲み合わせではビタミンA過剰症と類似した副作用症状があらわれることがあります。

抗悪性腫瘍薬

ベサノイドとの飲み合わせではビタミンA過剰症と類似した副作用症状があらわれることがあります。

参考文献:一般社団法人 愛知県薬剤師会

上記は一例になりますので、何か気になることがある場合は、かかりつけの医療機関にて確認してみましょう。

ビタミンAの1日摂取量の目安(年齢別)

これまで、ビタミンAの効果や過剰・欠乏してしまうとどうなるのか説明しましたが、1日どれくらいのビタミンAを摂ればいいのでしょうか。
厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準」から紹介します。

ビタミン A の食事摂取基準(μgRAE/日)

  男性 女性
年齢等 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量
1~2(歳) 300 400 600 250 350 600
3~5(歳) 350 450 700 350 500 850
6~7(歳) 300 400 950 300 400 1,200
8~9(歳) 350 500 1,200 350 500 1,500
10~11(歳) 450 600 1,500 400 600 1,900
12~14(歳) 550 800 2,100 500 700 2,500
15~17(歳) 650 900 2,500 500 650 2,800
18~29(歳)  600 850 2,700 450 650 2,700
30~49(歳)  650 900 2,700 500 700 2,700
50~64(歳)  650 900 2,700 500 700 2,700
65~74(歳)  600 850 2,700 500 700 2,700
75~(歳) 550 800 2,700 450 650 2,700
  • 推定平均必要量:プロビタミン A カロテノイドを含む。
  • 推奨量:プロビタミン A カロテノイドを含む。
  • 耐容上限量:プロビタミン A カロテノイドを含まない。

参照:厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年版)

ビタミンAを多く含む食品上位20位

ビタミンAの効果や1日の必要量がわかったところで、具体的にどのような食品にビタミンAが多く含まれるかを紹介します。

順位食品名成分量(μg/100g)
1鶏レバー(生)14,000
2豚レバー(生)13,000
3あんこう きも(生)8,300
4やつめうなぎ(生)   8,200
5養殖あゆ 内臓(焼き)   6,000
6養殖あゆ 内臓(生)   4,400
7うなぎ きも(生) 4,400
8あまのり ほしのり3,600
9あまのり 味付けのり   2,700
10まつも 素干し   2,500
11養殖うなぎ(生)2,400
12抹茶  2,400
13あまのり 焼きのり   2,300
14いわのり 素干し   2,300
15パセリ 乾   2,300
16天然あゆ 内臓(焼)   2,000
17あゆ うるか  2,000
18やつめうなぎ 干しやつめ   1,900
19ほたるいか(ゆで)  1,900
20ぎんだら 水煮1,800

参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ビタミンAを多く含む野菜上位10位

次に野菜に特化し紹介します。

順位食品名成分量(μg/100g)
1とうがらし 果実(乾燥)1,500
2しそ 葉(生)880
3モロヘイヤ 茎葉(生)800
4にんじん 根葉(生)720
5とうがらし 果実(生)640
6パセリ 葉(生)620
7よめな 葉(生)560
8バジル 葉(生)520
9明日葉 茎葉(生)440
10よもぎ 葉(生)440

参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ビタミンAを多く含む魚類/肉類上位10位

魚類、肉類に特化し紹介します。

順位食品名成分量(μg/100g)
1鶏レバー(生)14,000
2豚レバー(生)13,000
3あんこう きも(生)8,300
4やつめうなぎ(生)   8,200
5養殖あゆ 内臓(焼き)   6,000
6養殖あゆ 内臓(生)   4,400
7うなぎ きも(生) 4,400
8養殖うなぎ(生)2,400
9天然あゆ 内臓(焼)   2,000
10あゆ うるか  2,000

参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ビタミンAを多く含む穀類上位10位

最後に、穀物類に特化し紹介します。

順位食品名成分量(μg/100g)
1とうもろこし(ポップコーン)180
2とうもろこし(コーンフレーク)120
3こむぎ(クロワッサン)69
4こめ(黒米)32
5こむぎ(ロールパン)15
6五穀12
7キヌア12
8こむぎ(マカロニ)9
9こむぎ(食パンの耳)7
10こむぎ(食パンの耳を除く)5

参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ビタミンAはサプリメントで意識的に摂取すべきか

これまでビタミンAの必要量や、含まれている食材について紹介してきましたが、そもそも私たちはきちんと必要なビタミンAを毎日摂ることができているのでしょうか。

厚生労働省が発表している「平成30年国民健康・栄養調査報告」によると、ビタミンAの平均摂取量は505 μgREであり、推定平均必要量には届いておりません。
また、2004年頃から徐々にビタミンAの摂取量が減っているという報告もあります。

ただ、日本では日常生活での食事内容や摂取量からビタミンA欠乏症になることはあまりないと言われております。しかし、過度なダイエット、断食や野菜嫌いでほぼ食べないなどの極端な食生活でビタミンAを摂取することが難しいという場合を除き、ビタミンA欠乏の心配はありません。気になる方は食事にプラスしてサプリメント等で補う程度で欠乏症の心配はなく、必要推奨量には十分だと言われています。

ビタミンAと合わせて摂取すると効果的な栄養素

また、しっかりと野菜からビタミンAを摂るぞと思ってい場合、ビタミンAは脂溶性ビタミンなので、油と一緒に摂ると吸収率がアップします。ほうれん草のバターいためなどのように、普段気づかないところで実行していることもあるかと思います。

しかし、脂質の吸収を抑える作用が期待できる成分と一緒に摂ってしまうと、その栄養素の吸収率を低下させる可能性もあります。

食べ合わせや一緒に調理する食材によっては効果が弱まってしまうこともありますので、注意が必要になります。

青汁でビタミンAは効率的に摂取可能か

野菜からビタミンAを摂取できるのが一番いいのですが、仕事が忙しいなどで難しい場合もあるかと思います。多くの人はサプリメントや青汁で野菜の栄養素を補っているかもしれません。
その時に「青汁でビタミンAを十分に摂取できるのか」と疑問があるかと思います。

青汁に使われている野菜

青汁に使われていることが多い野菜に、緑黄色野菜のほうれん草や明日葉などがあげられます。

緑黄色野菜にはビタミンAの前段階であるβ-カロテンが豊富に含まれています。そもそもカロテンは野菜や果物の色素成分で、植物が自分の身を守るために持っている成分です。植物は日光を浴び、光合成によってエネルギーを得ていまが、日光を浴びると一方で活性酸素が発生し、細胞を酸化して傷つけてしまいます。抗酸化作用があるβ-カロテンはその酸化を防ぐ働きがるので、結果として緑黄色野菜にはβ-カロテンが豊富に含まれていると言われています。

なので、それら緑黄色野菜が含まれている青汁はビタミンA不足を補うのに最適と言えます。

実際、日本人はビタミンA不足になりにくいと言われていますが、十分かと言われるとそうではございません。
それらの不足を補うために、サプリメントや青汁を利用してみはいかがでしょうか。

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