【注目の乳酸菌9選】数ある種類の中で効果が期待される乳酸菌をご紹介

近年は健康志向の高まりの中、生きて腸まで届く乳酸菌(プロバイオティクス)や乳酸菌を腸内で増やす成分(プレバイオティクス)など、さまざまな商品が開発されています。そんな中、新型コロナウイルスの世界的流行を受け、これまで以上に健康維持の意識が強くなった方も多いのではないでしょうか。
それを象徴するように、乳酸菌市場も新たな商品が生まれています。やはり今の流行りは「免疫力」でしょう。そこでこの記事では、身近で比較的手に入りやすい乳酸菌の中でもっとも注目を集めている「免疫」をキーワードとする乳酸菌を中心に紹介します。

コロナ禍で注目されている乳酸菌とは?

コロナウイルスの感染対策と同時に、コロナウイルスに負けない身体作りに対する意識も高まっているようです。自宅勤務の時間が増え、行動範囲が狭くなってしまったために、運動不足になり「コロナ太り」という表現も生まれました。

運動不足は免疫力が低下すると言われています。適度に身体を動かして、身体の代謝機能をあげると体温も上がり、病原菌に打ち勝つ力になります。運動以外には食事にも気をつけようと思う人も増えていると思います。

ヨーグルトの売り上げが伸びた

それを表すかのように、コロナ禍でのヨーグルト市場は「免疫」をキーワードとする機能性ヨーグルトが牽引し、ここ数年伸び悩んでいた市場が好調のようです。*1 総務省による家計調査では、2020年7~9月におけるヨーグルトの購入頻度は前同比104%、支出金額107.5%を示しています。*2 これは通常に比べてヨーグルトを購入する世帯が増え、購入額も増えていることを表しています。

「免疫」をキーワードとする乳酸菌に注目が集まった

「免疫」がキーワードの乳酸菌の中でもっとも注目を集めたのは、L. lactis strain Plasma(L.ラクティスプラズマ、又はプラズマ乳酸菌)です。日本で初めて免疫機能を訴求する機能性表示食品に使われています。
乳酸菌と免疫機能の関係については、プラズマ乳酸菌以外にもさまざまな乳酸菌の研究が発表されています。そのいくつかを順に紹介していきます。

免疫機能に働きかけるプラズマ乳酸菌」

まず、1つ目は最近メディアでも話題を集めている乳酸菌の1つ「プラズマ乳酸菌」です。
プラズマ乳酸菌は正式名称はL.ラクティスプラズマプラズマという菌名です。
プラズマ乳酸菌を含む飲料摂取の臨床試験が行われており、様々な臨床効果があるという研究結果が報告されています。
例えば、薬理と治療という文献の中でこんな実験報告があります。
健康な成人男女にプラズマ乳酸菌の死菌1000億個を含む飲料、又はプラセボ飲料を4週間摂取してもらい、免疫の司令塔であるpDC活性を調べたそうです。するとプラズマ乳酸菌入り飲料を飲んだグループの血中pDC活性がプラセボ飲料を飲んだグループよりも有意に上昇していましたという結果になったそうです。*3

プラズマ乳酸菌で活性化された「pDC」とは

pDCとは樹状細胞の一種です。樹状細胞とは枝のように分岐した突起を持つ細胞で、免疫の司令塔としての役割をになっています。体内に病原菌などの異物を見つけると、マクロファージなどとともに異物を細胞内に取り込みます。*4 取り込んだ異物を細胞内で消化・分解し、分解したものの一部(ペプチド)を細胞の表面にある糖タンパク(MHC-Ⅱ)上に掲示します。*5 これが他の免疫を司る細胞への抗原提示となり、T細胞・B細胞などが働き始めます。
さらにpDCは受ける刺激の違いにより異なるヘルパーT細胞に反応を誘導することから、免疫反応の強さに関する指令を出すだけではなく、方向性までも決める働きを持つことがわかっています。*6

乳製品以外から摂取する注目の乳酸菌とは?

2つ目はPediococcus acidilactici K15(K15株)という乳酸菌です。
日本食の代表ともいえるぬか漬け。Pediococcus acidilactici K15(K15株)はぬか床から分離された乳酸菌です。K15株も免疫機能に作用する乳酸菌と考えられ、研究がすすめられています。

インフルエンザ流行期に幼稚園児2グループに、K15株とプラセボをそれぞれ経口投与し、免疫力を調べました。結果はK15株グループの唾液中IgA*濃度がプラセボグループより有意に高い数値を示しました。

*IgA:IgAは喉などの粘膜に存在し、ウイルスや病原菌などの侵入を防ぐ役割をする。

またK15株投与グループとプラセボ投与グループの中でも発酵食品をほとんど食べない園児達を比較すると、発熱期間にも有意差がありました。K15株投与グループの発熱期間は、発酵食品をほとんど食べない園児グループに比べると有意に短いことがわかりました。*7

粘膜の免疫力を高める乳酸菌

3つ目も乳製品以外から摂取できるB240と呼ばれる乳酸菌が今注目を集めています。
乳酸菌B240(lactobacillus pentosus strain b240)は、タイ北部で噛み茶や食茶として利用されてきた発酵茶から単離された乳酸菌です。インビトロの試験でIgA産生能が高いことがわかり、研究が進められています。

乳酸菌B240を摂取したヒトの唾液中へのIgA分泌速度は、プラセボ摂取群と比較すると有意に高くなるという報告があります。また健常者300名を乳酸菌B240を含む錠剤とプラセボ錠剤を摂取するグループに割り当て、20週間摂取してもらい、風邪罹患率の割合を調べました。結果は乳酸菌B240摂取したグループの風邪罹患率は、プラセボ群と比べて有意に低かったことがわかりました。*8

上気道感染症への抵抗力を高める乳酸菌

4つ目はまもり高める乳酸菌として様々な商品が発売されている有名な乳酸菌の1つである乳酸菌L-137です。
乳酸菌L-137(Lactobacillus plantarum L-137)は風邪やウイルスなどによる上気道感染症に対する抵抗力を高める働きがあるという研究報告があります。
ストレスを抱えている成人男女に対し、乳酸菌L-137を摂取するグループ、プラセボ摂取グループに分け、12週間摂取してもらいました。4週間ごとに罹患率を調べた結果、乳酸菌L-137を摂取したグループの罹患率はプラセボグループよりも有意に低かったことがわかりました。
また風邪をひいた人でも、乳酸菌L-137を摂取したグループでは風邪薬を飲む日数がプラセボグループよりも短く済んでいました。*9

免疫機能自体を高める乳酸菌?!

5つ目も乳酸菌サプリや乳酸菌飲料商品で高い人気を誇る乳酸菌の1つである1073R-1乳酸菌です。
1073R-1乳酸菌(Lactobacillus bulgaricus OLL1073R-1)は、ESP(extracellular polysaccharides)という多糖体を多く作り出します。インビトロ*において、EPSは生体に対して免疫機能を活性化することがこれまでの研究で分かっています。

*インビトロ:ヒトや動物などから取り出した組織を用いて、試験管や培養器などの中で一定条件の下、物質の作用について試験すること。

ヒトでの試験では、40歳以上の健常者が1073R-1乳酸菌で作ったヨーグルトを摂取したところ、免疫細胞の機能が高まりインフルエンザの罹患率も低かったことが、明治乳業などの研究で明らかになっています。*10

乳酸菌の整腸作用と免疫機能の関係性

乳酸菌の新たな機能性として、今もっとも注目を集めている「免疫」ですが、乳酸菌といえばなんといっても整腸作用です。免疫機能を高める作用のある乳酸菌が研究されていますが、乳酸菌は腸内で善玉菌として棲みつき腸を良い状態に保つ働きは、すでに知られています。

その他、実は腸管は身体の中でも最大の免疫器官が集まっています。具体的には免疫を担う樹状細胞・B細胞・T細胞などの免疫細胞、IgAなどの免疫グロブリンが身体全体に存在する量の約60%が集まっているのです。*11

そして腸内の善玉菌である乳酸菌が、ヒトの免疫機能に影響を与えることがわかってきています。腸内の乳酸菌が減ると悪玉菌が増え、健康が損なわれますが、それと同時に免疫機能に対しても、マイナスになることが想像できます。

そのため健全な腸内環境を維持することがまず前提にあり、その上で免疫機能の維持・向上を目的とした乳酸菌摂取を考えることが必要です。

摂取した乳酸菌を腸管内に留まらせるには?

整腸・免疫のどちらの目的にせよ、乳酸菌を摂取したとしてもそれらの乳酸菌はそのまま腸管内に留まるわけではありません。そのまま腸管内に棲みつくのなら良いのですが、普通の食べ物同様に、排泄されてしまいます。
そのため効果を期待するときには、継続して乳酸菌を摂取する必要があります。

摂取した乳酸菌を腸管内に留まらせるため、乳酸菌が腸管に付着して定着するメカニズムが研究されています。その研究で、ムチンという粘液の中に含まれる糖タンパク質に乳酸菌が付着することで定着できるのではないかと考えられています。しかし同じ菌種でも、菌株が異なる性質を持つなど、腸内環境は複雑であることからメカニズム解明までの課題が残されているようです。*12

免疫以外で注目されている乳酸菌4種

最後に免疫機能以外で注目を集めている乳酸菌を紹介します。

内臓脂肪を減らすのを助けるガセリ菌SP株

ガセリ菌SP株(Lactobacillus gasseri SBT2055)の入ったヨーグルトを1日1個、12週連続で摂取することで内臓脂肪の有意な減少が確認されました。*13
ガセリ菌SP株を使ったヨーグルトが特定保健用食品として販売されています。特定保健用食品とは、消費者庁による審査を受けて許可された、特定の保健の用途に適する旨を表示できる食品です。*14 ガセリ菌SP株のヨーグルトは「内臓脂肪を減らすのを助ける」という表示がされています。

目や鼻の不快感を緩和する乳酸菌ヘルベ

乳酸菌ヘルベ(L.helveticus SBT2171)を含む飲料を、ハウスダストやダニアレルギーを持つ成人男女に12週間摂取してもらいました。その結果、乳酸菌ヘルべを含んだ飲料を飲んだグループは、含まない飲料を飲んだグループよりもくしゃみの回数や目と鼻の不快感が有意に減少しました。
マウスで作用機序を調べたところ、乳酸菌ヘルべは腸管免疫を介しアレルギー反応を起こす物質の産生を抑制し、症状が緩和する可能性を示しました。
乳酸菌ヘルべを含む乳飲料は「目や鼻の不快感を緩和する」と表示され、機能性表示食品として届出されています。*15
機能性表示食品とは安全性を前提とし、科学的根拠に基づいた機能性について、企業の責任のもとに表示されるものです。内容について、国の審査を受けたものではありません。*16

血糖値の上昇を抑える腸球菌YM0831

ショ糖摂取後に血糖値の上昇を抑える腸球菌YM0831(Enterococcus faecalis YM0831)がカイコの実験で発見されました。腸球菌YM0831は、ヒトの腸管内でグルコースの取り込みを阻害することも明らかになりました。今後は腸球菌YM0831を用いた食後高血糖を抑制する食品開発が、期待されるでしょう。*17

尿酸値の上昇を抑えるL.gasseri PA-3

Lactobacillus gasseri PA-3痛風の原因物質である、血中尿酸値の上昇を抑える働きがあることで注目されています。尿酸はプリン体の代謝物であるため、痛風患者及び痛風を予防するためにはプリン体の過剰摂取を控えなければなりません。

L.gasseri PA-3が尿酸値の上昇を抑えるのは、L.gasseri PA-3がプリン体を取り込み利用しているためです。*18 L.gasseri PA-3を使ったヨーグルトは機能性表示食品として存在しています。「尿酸値の上昇を抑える」「プリン体と戦う乳酸菌」という表示がされています。

今後の乳酸菌研究と新しい乳酸菌商品への期待

「病気になってから対処する」から「病気にならないよう対策する」時代になりました。コロナ禍で、感染予防のために体力づくりや栄養補給に気を使い、免疫力保持を心がける人も多いと思います。
ヨーグルトはそんな私たちの願いに応えてくれる、そんな期待が十分に持てる近年の乳酸菌研究の進歩を垣間見ることができました。これから積極的に最新情報を入手して、上手に日常生活に生かしたいですね。

<参考文献>

*1:ヨーグルト コロナ禍で転換 進撃する3千億市場 キーワードは“免疫”“健康”|食品新聞  / 株式会社食品新聞社

*2:家計調査(家計収支編) / 総務省統計局

*3:乳酸菌Lactococcus lactis subsp. lactis JCM5805 含有飲料の摂取による抗ウイルス免疫応答および体調の維持に対する効果―プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験―< 薬理と治療 Volume 43, Issue 10, 1465 – 1472 (2015)> / ライフサイエンス出版

*4:樹状突起<日本鼻科学会誌 52⑴:73~74,2013> / 日本鼻科学会

*5:第4回 MHC(major histocompatibility complex)分子とは<シリーズ 自己免疫疾患をより良く理解するための免疫学> | JBスクエア 医療関係者向け情報 / 一般社団法人 日本血液製剤機構

*6:ヒト樹状細胞による免疫制御<Cytometry Research 25(1):7 ~ 12,2015> / 日本サイトメトリー学会

*7:A Double-Blind, Randomized, Placebo-Controlled Trial of Heat-Killed Pediococcus acidilactici K15 for Prevention of Respiratory Tract Infections among Preschool Children <Hishiki H, Kawashima T, Tsuji N, Ikari N, Takemura R, Kido H, and Shimojo N, Nutrients, 12, 1989 (2020)> / MDPI

*8:乳酸菌B240の粘液免疫サポート及び抗感染効果のコンディショニングフードとしての応用<日本栄養・食糧学会誌 第73巻 第2号 55-60 (2020)> / 公益社団法人 日本栄養・食糧学会

*9:Oral intake of heat-killed Lactobacillus plantarum L-137 decreases the incidence of upper respiratory tract infection in healthy subjects with high levels of psychological stress<J Nutr Sci. 2013 Dec 6> / National Center for Biotechnology Information

*10:Lactobacillus delbrueckii ssp.  bulgaricus OLL1073R-1で発酵したヨーグルトおよび産生多糖体の免疫賦活効果<日本シルク学会誌 Vol.58 No.2 2009> / 日本シルク学会

*11:用語集 腸管免疫(gut immunity) / 公益財団法人 腸内細菌学会/(旧)ビフィズス菌センター

*12:平成24年度日本酪農科学会奨励賞 受賞記念総説 有用乳酸菌の単離と腸管付着メカニズムの解明に関する研究<Millk Sience Vol.61, No.3 2012>  / 日本酪農学会

*13:内臓脂肪を減らすのを助ける(恵) / 雪印メグミルク株式会社

*14:特保(特定保健用食品)とは? eヘルスネット / 厚生労働省

*15:Lactobacillus helveticus SBT2171(乳酸菌ヘルベ)のアレルギー反応抑制作用を確認<雪印メグミルクニュースリリース> / 雪印メグミルク株式会社

*16:消費者の皆様へ 「機能性表示食品」って何? / 消費者庁

*17:Enterococcus faecalis YM0831 suppresses sucrose-induced hyperglycemia in a silkworm model and in humans <Communications Biology. 2019 May 2> / National Center for Biotechnology Information

*18:プロダクトイノベーション プリン体吸収低減作用を有する新規機能性ヨーグルトの研究開発<化学と生物 Vol. 54, No. 11, 2016> / 日本農芸化学会

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