【ビタミンHの効果効能】多く含む食品・摂取量基準・研究情報について

炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維、ファイトニュートリエント。これらは7大栄養素とよばれ、人の成長や健康維持には欠かせない栄養素です。

その中でもビタミンは身体の生理機能の重要な役割をになっていますが、人は体内で生成することができず食事から摂る必要があります。

ビタミンHと聞いても馴染みがない方もいらっしゃるかもしれません。それでは、ビタミンHの別名、ビオチンではいかがでしょうか。美容に興味がある方には有名なビオチン。これもビタミンの仲間です。

今回はそんなビタミンH(ビオチン)について、ビタミンHの役割、どれくらい毎日摂れば良いのかなどについて話していきたいと思います。

ビタミンHとは

1927年にM.A.Boasは、実験動物に生卵白を多量に与えると,皮膚炎や脱毛などが起こることを発見しました。これは、いわゆる卵白障害であり,肝臓に存在する防御因子Xという物質によって治癒することが可能でした。1931年にP.Gyorgyは、この因子をビタミンHと名付け、根粒菌の補酵素Rと同一の物質であることを明らかにしました。

一方、1901年にE.Wildiersらが酵母の成長を促進させる有機成分を発見しました。この栄養成分は、ビオスと呼ばれ、その後三つの成分からなることが明らかにされました。その一つがビオスIIbという物質で、ビオチンと名付けられました。

その後、ビタミンHは、ビオチンと同一の特性を持つことが認められ、ビタミンH=ビオチンと認識され、ビオチンの方が馴染みある名前として認知されています。 

ビタミンHの正式な化学名は、5〔-(3aS、4S、6aR)-2-オキソヘキサヒドロ-1H-チエノ[3、4-d]イミダゾール-4-イル〕ペンタノン酸です。その中でもd-異性体のみが生理作用を有しています。

また、ビオチンは水溶性ビタミンの一種で、ビタミンB群の仲間でもあります。
そのため、ビタミンB7とも呼ばれ、ビタミンH、補酵素R以外にも呼び名がある珍しいビタミンです。

ビタミンH(ビオチン)の効果効能・体内における作用や役割

そんなビタミンH(ビオチン)の体内での作用や役割をまとめてみました。

代謝

糖・アミノ酸・脂質などの代謝に関わる補酵素として働き、エネルギーを作り出す手助けをしています。具体的には、糖代謝に関与するピルビン酸カルボキシラーゼ、脂肪酸代謝に関与するアセチルCoAカルボキシラーゼやプロピオニルCoAカルボキシラーゼ、アミノ酸の代謝に関与する3-メチルクロトノイルCoAカルボキシラーゼの補酵素として働いています。

皮膚や粘膜の維持、爪や髪の健康維持

ビオチンが不足するとタンパク質や免疫機能などの低下がおこり、皮膚形成が損なわれると言われています。また、体内でアレルギー反応を引き起こすヒスタミンのもとになるヒスチジンを体外へ排出する作用があるとも言われ、アトピー性皮膚炎などの改善に関わる作用へ影響があると考えられています。

ビタミンH(ビオチン)はどういった時、意識して摂取するべきか

ビタミンHは栄養素の代謝や皮膚等の健康維持に必要な栄養素です。それでは、特にどういった時に意識すべきかをまとめてみました。

疲れている時

これはビタミン全般にも言えることになりますが、特にビオチンは糖・アミノ酸・脂質などの代謝に関わります。そのため、疲れている・イライラしている時などは特にビオチンの消費量が増えると言われています。

そのため、疲れやストレスを感じている、感じる環境に身を置いている場合は、ビオチンを含めたビタミンを意識的に摂取してみると良いでしょう。

皮膚、爪、髪の調子がよくない時

ビオチンは皮膚や粘膜の維持、爪や髪の健康維持に関与しています。
そのため、皮膚、爪、髪の調子がよくない時はビオチン不足な可能性もあります。もちろん他の栄養不足や寝不足なども原因も考えられますが、食生活の乱れなどを感じる場合は意識的にビオチンを摂取してみると良いでしょう。

ビタミンH(ビオチン)の欠乏症(症状/対策)

体にとって重要なビタミンH(ビオチン)不足になってしまうとどうなってしまうのでしょうか。

そもそも通常の食生活ではビオチンが不足することはないと言われていますが、生卵白を多量に長期間にわたって摂取した人では、ビオチン欠乏症になる可能性があると報告されています。卵白に含まれているアビジン (糖タンパク)が、ビオチンと強く結合してビオチン-アビジン結合体を作るため、消化管でのビオチンの吸収を阻害するためと考えられています。また、ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症やビオチニダーゼ欠損症などの先天性代謝異常症で欠乏症が起こることが報告されています。

症状

食欲不振、吐き気、悪心、うつ症状、舌炎、蒼白、乾燥鱗片皮膚炎、筋肉痛、結膜炎、脱毛、運動失調、緊張低下、ケト乳酸アシドーシス、有機酸尿、けいれん、皮膚の感染、知覚過敏などの症状が出ると言われています。

治療

基本的にはビオチンの投与で回復することが知られており、食生活の改善やサプリメント等での定期的なビオチン摂取を推奨することが対策として考えられています。

ビタミンH(ビオチン)の過剰症(症状/対策)

一方、ビタミンH(ビオチン)を過剰に摂取しても、速やかに尿中に排泄されるので、一般的には過剰症は起こらないと言われています 。
しかし、妊娠中に多量のビオチンを投与すると、哺乳動物では胎仔の吸収(妊娠初期の胚死亡)や胎盤、卵巣の委縮が起こるとの報告がありますので、必要以上に過剰摂取はしない方が良いでしょう。

参考文献
ビタミンの辞典:朝倉書店

ビタミンH(ビオチン)の研究情報

体に必要なビタミンH(ビオチン)ですが、現在でも多くの研究が行われていますので、その一部を紹介します。

糖尿病

ビオチン欠乏ラットにおけるグルコース利用効率の悪化は昔から知られているので、糖尿病の研究時にビオチン欠乏ラットが用いられてきました。
人間では43名の2型糖尿病患者の血中ビオチン濃度は健常者よりも有意に低下し、空腹時血糖値と血中ビオチン濃度の間に逆相関の関係が認められた。1ヶ月間のビオチン補給(9,000 µg/day)によって空腹時血糖値は平均45%減少したと報告されています。しかし、一方、10名の2型糖尿病患者と7名の健常者の研究では、28日間ビオチンを補給(15,000 µg/day)しても空腹時血糖値には何ら変化が認められませんでした。

また、別の研究では1週間のビオチン内服(16,000 µg/day)によって7名の1型糖尿病患者の血糖値が減少することが報告されています。
ビオチンによる血糖降下作用はいつくかの作用機序で説明することができ、ビオチンは、脂肪酸合成に必須の酵素(アセチルCoAカルボキシラーゼ)の補酵素として作用するため、脂肪酸合成でグルコースの利用を増加することが推察されています。また、ビオチンは、肝臓においてグルコースの貯蔵型であるグリコーゲンの合成を亢進するグルコキナーゼを活性化することで血中のグルコース量の減少に作用していると言われています。

しかし、人間を対象としたビオチンの糖尿病への効果を検証した研究は少なく、更なる研究が必要であると考えられています。

参考文献

Maebashi M, Makino Y, Furukawa Y, Ohinata K, Kimura S, Sato T. Therapeutic evaluation of the effect of biotin on hyperglycemia in patients with non-insulin dependent diabetes mellitus. J Clin Biochem Nutr. 1993;14:211-218.

Baez-Saldana A, Zendejas-Ruiz I, Revilla-Monsalve C, et al. Effects of biotin on pyruvate carboxylase, acetyl-CoA carboxylase, propionyl-CoA carboxylase, and markers for glucose and lipid homeostasis in type 2 diabetic patients and nondiabetic subjects. Am J Clin Nutr. 2004;79(2):238-243.

Romero-Navarro G, Cabrera-Valladares G, German MS, et al. Biotin regulation of pancreatic glucokinase and insulin in primary cultured rat islets and in biotin-deficient rats. Endocrinology. 1999;140(10):4595-4600.

もろい爪

ビオチン補給は馬や豚の蹄の治療に効果があり、古くから活用されてきました。
こうした事実から、ビオチン補給は人間のもろい爪の強化にも有効と推測されてきました。3つの非対照試験において、もろい爪の女性患者に対するビオチン補給(6か月間まで2.5 mg/day)の効果が検討されています。2つの試験では、治療期間の最後までフォローアップが可能であった参加者のうち69-91%で自覚的な臨床症状の改善が報告されています。もうひとつの試験では、電子顕微鏡によるスキャンニングによって爪の厚みと縦裂を評価しており、ビオチン補給によって爪の厚みが25%増加し、縦裂が減少することが報告されています。

これら3つ非対照試験では、ビオチン補給がもろい爪の補強に有用であることを示唆しています。しかし、もろい爪の治療に対する高濃度のビオチン補給の有効性を評価するためには大規模なプラセボ対照試験が必要で、さらなる研究が進められています。

参考文献

Romero-Navarro G, Cabrera-Valladares G, German MS, et al. Biotin regulation of pancreatic glucokinase and insulin in primary cultured rat islets and in biotin-deficient rats. Endocrinology. 1999;140(10):4595-4600.

Floersheim GL. [Treatment of brittle fingernails with biotin]. Z Hautkr. 1989;64(1):41-48. 

Hochman LG, Scher RK, Meyerson MS. Brittle nails: response to daily biotin supplementation. Cutis. 1993;51(4):303-305.

脱毛

脱毛は重度なビオチン欠乏症の症状のひとつであるが、人間の脱毛予防・治療に対する高濃度のビオチン補給の有効性について科学的に検証した研究報告はありません。これからの研究に期待がされています。

ビタミンH(ビオチン)を摂取に気をつけるべき人(薬の飲み合わせ等)

一部、ビタミンH(ビオチン)は薬との飲み合わせに注意が必要なケースがあるので紹介します。

抗菌薬

ビオチンは食事からの摂取意外にも、腸内細菌から産生されます。そのため、抗菌スペクトルの広い抗生物質などを長期で服用し続けると腸内細菌叢バランスの乱れによってビオチン欠乏症が起こると言われているので、注意が必要である。

抗てんかん薬

カルバマゼピンやフェノバルビタールやバルプロ酸などの抗てんかん薬を長期服用することで、ビオチン欠乏症の症状が生じることが報告されているので、注意が必要である。

パントテン酸

パントテン酸(ビタミンB5)はビオチンと類似した構造のため、多量に摂取すると腸管からの吸収や細胞への取り込みでビオチンと競合する可能性があると報告されています。

上記は一例になるので、気になることがありましたら、かかりつけの医療機関に相談するのが良いでしょう。

ビタミンH(ビオチン)の1日摂取量の目安(年齢別)

ビタミンH(ビオチン)の効果について説明しましたが、1日どれくらいのビオチンを摂ればいいのでしょうか。厚生労働省が発表しています「日本人の食事摂取基準」というものを見ていきましょう。

ビタミンH(ビオチン)の食事摂取基準(μg/日)

男性女性※
年齢等目安量目安量
1~2(歳)2020
3~5(歳)2020
6~7(歳)2525
8~9(歳)3030
10~11(歳)3535
12~14(歳)5050
15~17(歳)5050
18~29(歳) 5050
30~49(歳) 5050
50~69(歳) 5050
70~(歳)5050

参照:厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年版)

ビタミンH(ビオチン)を多く含む食品上位20位

ビタミンH(ビオチン)の効果や1日の必要量がわかったところで、具体的にどのような食品にビタミンHが多く含まれるかを紹介します。

順位食品名成分量(μg/100g)
1酵母 パン酵母 乾燥309.7
2まいたけ 乾242.6
3鶏肉 肝臓 生232.4
4からし 粉158.1
5豚肉 じん臓 生99.5
6バターピーナッツ95.6
7らっかせい 乾92.3
8牛肉 じん臓 生89.6
9インスタントコーヒー88.4
10しろきくらげ 乾86.9
11ヘーゼルナッツ フライ 味付け81.8
12ひまわり フライ 味付け80.1
13豚肉 肝臓 生79.6
14牛肉 肝臓 生76.1
15あおのり 素干し71.0
16卵黄 生65.0
17アーモンド フライ 味付け61.6
18バジル 粉61.5
19卵黄 ゆで54.9
20せん茶 茶51.6

参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ビタミンH(ビオチン)を多く含む野菜上位10位

次に野菜類に特化し紹介します。

順位食品名成分量(μg/100g)
1らっかせい 未熟豆 生43.5
2モロヘイヤ 茎葉 生13.6
3和種なばな 花らい・茎 生12.2
4えだまめ 生11.1
5ブロッコリー 花序 生9.3
6えだまめ 冷凍9.2
7カリフラワー 花序 生8.5
8かんぴょう 乾8.0
9くわい 塊茎 生7.2
10そらまめ 未熟豆 生6.9

参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ビタミンH(ビオチン)を多く含む魚類/肉類上位10位

魚類/肉類に特化し紹介します。

順位食品名成分量(μg/100g)
1鶏肉 肝臓 生232.4
2豚肉 じん臓 生99.5
3牛肉 じん臓 生89.6
4豚肉 肝臓 生79.6
5牛肉 肝臓 生76.1
6まがれい 生23.9
7あさり 生22.7
8缶詰 アンチョビ22.1
9かたくちいわし 生18.3
10ししゃも 生干し 生17.9

参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ビタミンH(ビオチン)を多く含む穀類上位10位

最後に穀類に特化し紹介します。

順位食品名成分量(μg/100g)
1米ぬか38.2
2そば粉 表層粉38.2
3えんばく オートミール21.7
4そば粉 中層粉18.4
5そば粉 全層粉17.0
6アマランサス 玄穀16.3
7もろこし 玄穀15.4
8あわ 精白粒14.4
9強力粉 全粒粉10.8
10こむぎ10.7

参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ビタミンH(ビオチン)はサプリメントで意識的に摂取すべきか

これまでビタミンH(ビオチン)の必要量や、含まれている食材について紹介してきましたが、そもそも私たちはきちんと必要なビタミンHを毎日摂ることができているのでしょうか。正確な数字は発表されていませんが、ビオチンの摂取量は目安量に届いていると言われています。

ビオチンは様々な食材に満遍なく含まれ、腸内細菌からの産生も合わせると基本的に欠乏症にはならないと言われています。
しかし、一部の薬剤を長期で服用していたり、長期にわたる過度なダイエットや食事制限によって、食事からビオチンが取り除かれてしまうと欠乏症が起こることがあるため、どうしても食事制限をしないといけない時などは、サプリメント等で代用することで欠乏症は防げると言われています。

また、その場合他の栄養素も不足していることも多いので、ビオチンに特化したサプリメントより、マルチビタミンなどを意識的に摂取すると良いでしょう。

ビタミンH(ビオチン)と合わせて摂取すると効果的な栄養素

ビオチンは主にアミノ酸代謝に大きな影響を与えているので、タンパク質やアミノ酸を多く摂取するときは意識的にビオチンが含まれる食材を一緒に摂取すると良いでしょう。

ビタミンB群はお互いに吸収や体内での働きをサポートし合っているので、他のビタミンも一緒に摂取できるとより効果的にビタミンが働いてくれると言われています。

また、ビオチンは爪や皮膚の維持に重要な栄養素です。その際に、ミネラルと一緒に摂取することでより効果が期待できると言われているので、一緒に摂取してみてはいかがでしょうか。

青汁でビタミンH(ビオチン)は効率的に摂取可能か

先ほど、ビタミンH(ビオチン)を食事から吸収できない時はサプリメント等で代用することを提案しましたが、サプリメントの代わりに青汁はどうでしょうか。

結論から話しますと、青汁はあまり効果的でありません。
ビオチンは、きのこ類、肉類、種実類、卵類、魚介類に多く含まれているので、青汁に使われている緑黄色野菜にはそこまで多くのビオチンは含まれておらず、ミックスビタミンのサプリメント等で他のビタミンと一緒に摂取した方が効果的にビオチンを摂取することが期待できます。


ビオチンは多くの食材に含まれているので、規則正しくバランスの取れた食生活を心がけていれば問題ないと言われています。

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