【ヨウ素の効果効能】多く含む食品・摂取量基準・研究情報について

炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維、ファイトニュートリエント。これらは7大栄養素とよばれ、人の成長や健康維持には欠かせない栄養素です。

ミネラルとは、生体を構成する酸素、炭素、水素、窒素以外のものをいい、無機質とも呼ばれます。ミネラルは、体内でつくることができないため、食べ物などから摂取する必要があります。それらは必須ミネラルと呼ばれ、現在は16種類あり、今後の研究によって必要不可欠であることがわかれば、その種類はさらに増える可能性があると言われています。

そんな必須ミネラルの一種であるヨウ素。
ホルモンと深い関係がることで有名なので、一度は耳にしたことがあるかもしれません。

今回はそんなヨウ素について、ヨウ素の役割、どれくらい毎日摂れば良いのかなどについて話していきたいと思います。

ヨウ素とは

ヨウ素(iodine)は原子番号53、元素記号 I のハロゲン元素の一つです。

中学生の時にでんぷんに液体を加えると、色が変わった実験をしたことがある人も多いかと思います。こちらはヨウ素デンプン反応と言い、ヨウ素溶液を加えることで起きる反応のことです。デンプン分子のラセン構造の内部にヨウ素分子が入り込むことで、ラセン構造の長さによって青色〜赤色を呈する鋭敏な化学反応です。

また、化学系の大学などで勉強していた人は、ヨウ素を使った反応として、試料中の水分量を決定するための方法であるカール・フィッシャー滴定を浮かべる人も少なくないでしょう。

何かしら運動系の部活に入っていた人は消毒液のイメージがあるかもしれません。ヨウ素のアルコール溶液のことをヨードチンキと言い、ヨウ素とポリビニルピロリドンの錯化合物はポビドンヨードと言い、有名かと思います。

このようにヨウ素は馴染みのある元素ですが、体内でも多くの役割をになっていて、無くてはならない存在です。

ヨウ素の効果効能・体内における作用や役割

ここで体内でのヨウ素の役割をまとめてみました。

甲状腺ホルモンの合成

ヨウ素は体内で甲状腺ホルモンを生産するのに必須なミネラルです。
甲状腺ホルモンはたんぱく質、脂肪、炭水化物の代謝に大きく関わり、妊娠・授乳期では胎児や乳児の骨や脳が正常に発育するためにも必要なホルモンです。

そもそも甲状腺ホルモンには、4つのヨウ素を持つサイロキシン(T4)と、3つのヨウ素を持つトリヨードサイロニン(T3)の2種類があります。甲状腺ではおもにT4が合成されますが、肝臓などでT4がT3に変換されることによってホルモンとしての働きを発揮するようになります。
これらホルモンは脳にある下垂体と呼ばれる部位によって、血液中のT4、T3の量が常に一定の範囲を維持できるように調節されています。

また、甲状腺ホルモンはたんぱく質合成も促進するので、髪、肌、爪を美しく保つため効果があると言われ、美容業界でも注目されています。

ビタミンAへ転換

食事から摂取したカロテンが肝臓でビタミンAに変換される時にヨウ素が必須です。

ヨウ素はどういった時、意識して摂取するべきか

体内、特に甲状腺ホルモンの合成にヨウ素が必須であることがわかったかと思います。
そんなヨウ素ですが、どんな時に意識して摂取すればいいのでしょうか。

十分な量のヨウ素を摂取することは誰にとっても大切ですが、乳児や妊娠中の女性では特に重要で、意識して摂取する必要があります。
先ほども述べましたが、甲状腺ホルモンは胎児や乳児の骨や脳が正常に発育するためにも必要なホルモンですので、その分、ヨウ素も十分に摂取する必要があります。

細かな研究は現在も行われていますが、妊娠中の女性は、十分な量のヨウ素を胎児に供給するために、妊娠していない女性よりもヨウ素を約50%多く必要とするとも言われています。
日本人は他の諸外国と比較すると、ヨウ素の摂取量は十分であるとも言われていますが、妊娠・授乳中は普段と食生活が異なる可能性もあるので、十分に注意が必要と言われています。

ヨウ素の欠乏症(症状/対策)

そんな体にとって必須なミネラル、ヨウ素が欠乏してしまうとどうなってしまうのでしょうか。症状や対策についてまとめてみました。

症状

ヨウ素が欠乏すると、甲状腺ホルモンの分泌に必要なヨウ素をより多く取り込もうとして甲状腺が腫大し、甲状腺腫と呼ばれる腫瘍が形成されてしまいます。その結果、甲状腺機能低下症と呼ばれる甲状腺の機能が低下し、甲状腺ホルモンがほとんど分泌されなくなってしまいます。

成人では、甲状腺機能低下症によって、皮膚の浮腫、声がれ、精神機能障害、皮膚が乾燥しうろこ状になる、毛髪が硬く薄くなる、寒さに耐えられない、体重増加といった症状が生じることが報告されています。

妊婦がヨウ素欠乏症になると、流産と死産のリスクが増大すると言われています。胎児の成長が遅くなることがあり、脳の発達に異常が現れることもあります。生まれてすぐに治療を受けないと、知的障害と低身長を引き起こすクレチン症が発生するとも報告されています。クレチン症の新生児は耳が聞こえずものが言えないことがあり、併せて先天異常や甲状腺機能低下症がある場合も報告されています。

診断

ヨウ素欠乏症の診断は、血液検査で甲状腺ホルモンの血中濃度が低いか、もしくは甲状腺ホルモンの分泌量を調整している甲状腺刺激ホルモンの濃度が高いかで診断されます。成人の場合では甲状腺腫があるか否かで診断されることもあります。

また、すべての新生児について、甲状腺機能低下症がないか確認するために血液検査が行われています。場合によっては、甲状腺の大きさを測定し異常の評価を行うために超音波検査や甲状腺シンチグラフィーなどの画像検査が行われることもあります。

予防/治療

妊婦ではヨウ素の摂取量が不十分なことがあるため、サプリメントなどからヨウ素を摂取することが推奨されています。

ヨウ素欠乏症の乳児、小児、成人には、ヨウ素のサプリメントで治療を行います。乳児には甲状腺ホルモンのサプリメントも数週間投与され、症状次第では一生投与されることもあります。小児および成人にも、甲状腺ホルモンのサプリメントが投与されることがあります。

ヨウ素の過剰症(症状/対策)

逆に体内でヨウ素が過剰になってしまった場合もまとめてみました。

発症状況

ヨウ素の過剰摂取はまれであまり起こらないとも言われています。
しかし、長期間のヨウ素欠乏症を治療するためにヨウ素のサプリメントを摂取することで発症することがあると言われています。場合によっては、日本の北部など海の近くに住む人が大量の魚介類や海藻を食べ、ヨウ素を多く含む水を飲むためにヨウ素の摂取量が過剰になり発症することが報告されています。

また、基本はヨウ素を過剰に摂取しても、通常は甲状腺機能への影響はありませんが、ときに影響が出ることもあると言われています。甲状腺機能亢進症と呼ばれる甲状腺の働きが過度に活発になって、過剰な量の甲状腺ホルモンが合成されてしまうことがあります。甲状腺機能亢進症は特にこれまでヨウ素の摂取量が少なすぎた人で比較的多く報告されています。

しかし、ときに過剰なヨウ素によって逆に甲状腺機能低下症と言った甲状腺ホルモンの分泌が低下することがあります。その結果として、甲状腺が腫大して甲状腺腫が形成されることが報告されています。

診断

症状に基づいて過剰なヨウ素による甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症を疑い、ヨウ素のサプリメントを服用していると報告している人では特に疑い、血液検査などが行われます。

血液検査では甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度を測定し、画像検査も行われることがあります。

治療

ヨウ素が添加されていない塩を使用し、魚介類、海藻、ヨーグルト、牛乳など、ヨウ素を含む食品の摂取量を減らすことが推奨されます。また、ヨウ素の過剰摂取による甲状腺機能低下症の場合は、ヨウ素の摂取量を減らすことで治療できますが、生涯にわたって甲状腺ホルモンを服用しなければならない人もいるとも言われています。

ヨウ素の研究情報

そんなヨウ素ですが、多くの研究が行われていますので、その一部を紹介します。

放射線誘発性甲状腺がん治療

放射性ヨウ素の甲状腺への蓄積は、特に子供で甲状腺がんのリスクを高めることに繋がります。ヨウ素欠乏状態で甲状腺のヨウ素捕捉活動が高まると、放射性ヨウ素(131I)の甲状腺への蓄積が増えるため、ヨウ素欠乏症は放射線誘発性甲状腺がんの発症の危険性が高まると言われています。

とある研究では、原子炉事故による放射線被曝の48時間前または8時間後以内に薬理学的服用量のヨウ化カリウム(成人に50~100 mg)を投与すると、甲状腺のヨウ素131Iの摂取を著しく減らすことができ、放射線誘発性甲状腺がんのリスクを減らすことができたと報告されています。

また、1986年のチェルノブイリ原子炉事故後に、ポーランドで予防としてヨウ化カリウムを迅速に広範囲で使用したことが、ヨウ化カリウムによる予防があまり行われていなかった放射性物質の降下地域に比べてポーランドでの子供の甲状腺がんの発生率の低下に繋がった原因だと推測されています。

そのため、米国では、原子力発電所からの重大な放射性物質放出の事態における一般大衆の防護措置として、ヨウ化カリウムの使用を考慮することを原子力規制委員会(NRC)が要求しています。

参考文献
Zanzonico PB, Becker DV. Effects of time of administration and dietary iodine levels on potassium iodide (KI) blockade of thyroid irradiation by 131I from radioactive fallout. Health Phys. 2000;78(6):660-667.

Nauman J, Wolff J. Iodide prophylaxis in Poland after the Chernobyl reactor accident: benefits and risks. Am J Med. 1993;94(5):524-532.

Nuclear Regulatory Commission. Consideration of potassium iodide in emergency plans. Nuclear Regulatory Commission. Final rule. Fed Regist. 2001;66(13):5427-5440.

乳腺線維嚢胞症治療

有害ではありませんが、乳房に痛みを伴う凹凸ができる乳腺線維嚢胞症という疾患があります。主に妊娠可能な年齢の女性に発生しますが、閉経後にも発生する場合があります。

エストロゲンで治療したラットでは、ヨード欠乏症によって乳腺線維嚢胞症に見られるものと似た変化が現れたが、ヨウ素を再補充してやるとこれらの変化が元に戻ったと報告され、乳腺線維嚢胞症の治療にヨウ素が効果的だと考えられています。

乳腺線維嚢胞症の233人の女性を対象とした非対照研究では、ヨウ素分子(I2)の水溶液を毎日体重1 kgあたり0.08 mgの分量で6~18ヶ月間服用することで、70%以上が痛みやその他の症状がよくなったとの報告があります。

確かに非常に高用量のヨウ素を補充することで、乳腺線維嚢胞症の痛みやその他の症状を軽減できるかもしれませんが、確証を得るにはさらに研究が必要だと言われています。また、高用量のヨウ素は有害な場合があるので、乳腺線維嚢胞症のためにヨウ素剤を服用する場合は、事前に医療機関にて相談のうえ治療を進めるか判断していきましょう。

参考文献
Eskin BA, Grotkowski CE, Connolly CP, Ghent WR. Different tissue responses for iodine and iodide in rat thyroid and mammary glands. Biol Trace Elem Res. 1995;49(1):9-19. 

Ghent WR, Eskin BA, Low DA, Hill LP. Iodine replacement in fibrocystic disease of the breast. Can J Surg. 1993;36(5):453-460.

ヨウ素を摂取に気をつけるべき人(薬の飲み合わせ等)

一部、ヨウ素のサプリメントを服用する場合に注意が必要な場合があるので、まとめてみました。

甲状腺機能亢進症の治療薬

メチマゾールなどの抗甲状腺薬とヨウ素サプリメントを併用すること、体内で甲状腺ホルモンがほとんど産生されなくなってしまいます。

高血圧治療薬

ベナゼプリル、リシノプリル、フォシノプリルと言ったACE阻害薬と呼ばれる高血圧治療薬とヨウ化カリウム(ヨウ素のサプリメントの一種)を併用することで、血中カリウムの濃度が上昇して、予期せぬ副作用が生じてしまうことが報告されています。

一部紹介しましたが、これら薬剤を服用中の方は注意が必要です。
気になることがあれば、かかりつけの医療機関にて相談をしてみましょう。

ヨウ素の1日摂取量の目安(年齢別)

ヨウ素の効果について説明しましたが、1日どれくらいのヨウ素を摂ればいいのでしょうか。厚生労働省が発表しています「日本人の食事摂取基準」というものを見ていきましょう。

ヨウ素の食事摂取基準(μg/日)

  男性 女性
年齢等 推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量
1~2(歳) 35 50 35 50
3~5(歳) 45 60 45 60
6~7(歳) 55 75 55 75
8~9(歳) 65 90 65 90
10~11(歳) 80 110 80 110
12~14(歳) 95 140 95 140
15~17(歳) 100 140 100 140
18~29(歳)  95 130 95 130
30~49(歳)  95 130 95 130
50~64(歳)  95 130 95 130
65~74(歳) 95 130 95 130
75~(歳) 95 130 95 130

参照:厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年版)

ヨウ素を多く含む食品上位20位

ヨウ素の効果や1日の必要量がわかったところで、具体的にどのような食品にヨウ素が多く含まれるかを紹介します。

順位食品名成分量(μg/100g)
1刻み昆布230,000
2ながこんぶ 素干し210,000
3まこんぶ 素干し200,000
4ひじき ほしひじき ステンレス釜 乾45,000
5ひじき ほしひじき 鉄釜 乾45,000
6つくだ煮11,000
7カットわかめ8,500
8昆布だし5,400
9あおのり 素干し2,700
10あおさ 素干し2,200
11あまのり 焼きのり2,100
12わかめ 乾燥わかめ 素干し 水戻し1,900
13わかめ 原藻 生1,600
14かつお・昆布だし1,500
15あまのり ほしのり1,400
16プレミックス粉 お好み焼き用1,400
17ひじき ほしひじき ステンレス釜 油いため1,300
18ひじき ほしひじき 鉄釜 油いため1,300
19ひじき ほしひじき ステンレス釜 ゆで960
20ひじき ほしひじき 鉄釜 ゆで960

参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ヨウ素を多く含む野菜上位10位

次に野菜類に特化し紹介します。

順位食品名成分量(μg/100g)
1切干しだいこん 乾20
2かいわれだいこん 芽ばえ 生12
3れんこん 根茎 生9
4パセリ 葉 生7
5みずな 葉 生7
6リーフレタス 葉 生7
7とうがん 果実 生7
8しそ 葉 生6
9かぶ 葉 生6
10しゅんぎく 葉 生5

参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ヨウ素を多く含む魚類/肉類上位10位

次に魚類/肉類に特化し紹介します。

順位食品名成分量(μg/100g)
順位食品名成分量(μg/100g)
1まだら 生350
2あわび 生180
3すけとうだら 生160
4すけとうだら たらこ 生130
5さざえ 生97
6あんこう きも 生96
7なまこ 生78
8うなぎ かば焼77
9ししゃも 生干し 生74
10かき 養殖 生73

参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ヨウ素を多く含む穀類上位10位

最後に穀類に特化し紹介します。

順位食品名成分量(μg/100g)
1プレミックス粉 お好み焼き用1,400
2焼きおにぎり25
3即席中華めん 非油揚げ13
4ビーフン5
5そば 生4
6米ぬか3
7白玉粉3
8そば粉 表層粉2
9即席中華めん 油揚げ2
10うどん 生2

参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

ヨウ素はサプリメントで意識的に摂取すべきか

これまでヨウ素の必要量や、含まれている食材について紹介してきましたが、そもそも私たちはきちんと必要なヨウ素を毎日摂ることができているのでしょうか。

環境省が発表しているデータでは、ヨウ素の推定平均摂取量は1~3 mgであり、推奨量に届いています。
日本では、海藻や魚介類を多く摂取する食習慣があるため、必要量に対して十分にヨウ素を摂取していると考えられています。


ただし、過度のダイエットや海藻、魚介類がどうしても食べれないという人はもしかしたらヨウ素が足りず欠乏症に繋がってしまう可能性もあります。

どうしても食事制限をしないといけない時などは、サプリメント等で代用することで欠乏症は防げると言われていますので、選択肢に加えてみると良いでしょう。

参考文献
環境省:第3章 放射線による健康影響「3.7 がん・白血病」ヨウ素について

ヨウ素と合わせて摂取すると効果的な栄養素

あまり多くないのですが、一部食べ合わせに関して研究が行われたものがあるので紹介します。

それはヨウ素とキャベツの食べ合わせです。
その他にもキャベツ、トウモロコシ、タケノコ、サツマイモ、大豆などが甲状腺へのヨウ素の蓄積を阻害し、甲状腺腫を引き起こす成分が含まれています。しかし、通常食べる程度では問題ありませんので、あまり心配する必要はないと言われています。

そもそもヨウ素は海藻、魚介全般に含まれ、昆布だしや醤油にも含まれています。
日本人は日常的に摂取していることが多く、毎回全ての食事で同じタイミングで食すことがない限りは特に気にしなくても大丈夫と言われています。

青汁でヨウ素は効率的に摂取可能か

先ほど、ヨウ素欠乏が心配される場合、サプリメントを利用するということを紹介しましたが、サプリメントの代わりに青汁はどうでしょうか。

結論から話しますと、青汁はあまり効果的でありません。
青汁に使われている緑黄色野菜にはそこまで多くのヨウ素は含まれておらず、そもそも日常的にヨウ素を摂取する食事をしている、どうしても食事から摂取できない場合はヨウ素単体のサプリメント等を摂取した方が良いかと思います。


ヨウ素は日本食で使われる多くの食材に含まれているので、規則正しくバランスの取れた食生活を心がけていればわざわざサプリメントや青汁を選ばなくても問題ないでしょう。

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