【レーザー治療は花粉症に効かない?】オーソモレキュラー療法で体質改善

いまや花粉症は国民病といわれ、日本人の4人に1人の割合で発症しています。
症状がひどい方にとって、花粉の時期をどうやって乗り越えるかは悩みの種ではないでしょうか?
そこで今回は花粉症の治療法やセルフケアについてまとめてみました。
本記事を読んで、花粉症に負けない体作りを目指しましょう。

花粉症の原因とメカニズム

本来、花粉は人間の体に害を与える物質ではありません。
ではなぜ花粉症は起こるのでしょうか?
その原因とメカニズムについてまずは解説します。

花粉症の原因は生活環境の変化

戦前、花粉症は珍しい症状で、国内で花粉症患者を見かけることはほとんどありませんでした。
実際に国内ではじめて花粉症が確認されたのは1961年のブタクサによる花粉症です。

花粉症が近年急増した背景には、さまざまな要因が予測されていますが以下のような生活環境の変化がもっとも濃厚な説とされています。

・衛生面の変化

まず第1に考えられるの要因は衛生面が清潔になりすぎたことによるアレルギーへの免疫反応の増加。

本来であればウイルスや細菌への免疫と、アレルギーへの免疫が同じくらいの環境が理想的とされています。

しかし、近年は衛生面が清潔になりすぎたためウイルスや細菌への免疫反応が減り、アレルゲンへの免疫反応が増加してしまったと考えられています。

・住環境の変化

戦後、復興のために焼け野原となった各地に大量のスギが植栽されました。
さらに風通しの良い木造住宅は減り、高層マンションなどの気密性の高い住宅が増えたことが花粉症の増えた理由といわれています。

北海道と沖縄ではスギの植栽が行われなかったため、花粉症患者は少なかったようです。
気密性が高い空間は花粉がこもりやすく高音・高湿気の空間はカビやダニの増殖に好条件。

アレルギー体質の方は、普段から換気や掃除を心がけた方が良いでしょう。

・抗生物質の普及

20世紀の最大の発明といわれる抗生剤。さまざまな感染症による死者を減らし、多くの人の命を救ってきました。
「魔法の薬」といわれ有害なウイルスを排除してくれる抗生物質ですが、有益な腸内細菌までも排除してしまう可能性があります。

そのため抗生物質を飲むと腸内フローラが乱れやすく、下痢や腹痛などの副作用に注意が必要となります。

抗生物質はひと昔前まではとてつもなく高価で、なかなか手に入らない薬でしたが大量生産ができるようになり1960年以降は一般の人でも使用できるようになりました。

この抗生物質の普及が、花粉症増加の要因にもつながると考えられています。

花粉症のメカニズムは免疫システムの誤作動

鼻の粘膜や喉に花粉が張り付くと、免疫システムにより花粉を追い出そうと大量のヒスタミンが分泌されます。
すると鼻水や涙に花粉を包み込んで体の中から排出しようと過剰な反応が起こります。

これが、花粉症の症状となるのです。

通常であれば、花粉は体に無害なためアレルゲンとなることはありません。

しかしなんらかの理由により、免疫システムが正常に働いていないとこのように無害な物質を有害と認識してしまうのです。

花粉症治療を行うのも大切ですが、それ以前に普段から免疫システムが正常に働く体作りを意識することが重要です。

花粉症になりやすい人の特徴

時代とともに生活環境などが変わっても、花粉症にならない人となりやすい人がいます。
その違いは一体何なのでしょうか?

そこで花粉症になりやすい人の共通点をまとめてみました。
当てはまる項目があるかチェックしてみましょう。

食生活が乱れている人

意外と思われるかもしれませんが、食生活の乱れは花粉症に大きく影響します。
その鍵は「腸内環境」です。

腸内には人間の体全体の約7割もの免疫細胞が存在しているため、腸内環境が悪化すると免疫システムが誤作動を起こしやすくなります。

食事が肉や脂っこいものなど動物性のタンパク質に偏っていると、腸内の悪玉菌が優位になりやすく腸内環境が乱れる原因となります。

ビタミンやミネラル、食物繊維、善玉菌のエサとなるプロバイオティクスの食品もバランス良く取り入れるようにしましょう。

無意識に口呼吸している

鼻呼吸であれば空気中に含まれる花粉や細菌、バクテリア、汚染物質などが鼻から侵入しても鼻毛が天然のフィルターとなり、鼻腔粘膜によってさらに小さな異物を絡めとってくれます。

しかし鼻毛や鼻腔粘膜が存在しない口呼吸はダイレクトにこれらのアレルゲン物質が体内に入りやすく、アレルギー疾患や皮膚疾患、自己免疫疾患、精神性疾患になるリスクが高くなります。

実は口呼吸をするのは人類だけで、食生活やライフスタイルの変化が原因といわれています。
口呼吸は口の中が乾燥しやすく殺菌作用のある唾液が少なくなるので、虫歯にもなりやすくなります。

口呼吸の癖が習慣づいている方は、鼻呼吸テープなどで日頃から鼻呼吸を習慣づけるように練習しましょう。

飲酒と喫煙習慣がある

飲酒をすると、アルコールを分解する時に「アセトアルデヒド」が発生します。
アセトアルデヒドは、アレルギー症状の根源となるヒスタミンの発生を促してしまいます。


またアルコールは血管を拡張し鼻づまりや鼻の粘膜のむくみを促進してしまうため、花粉症の人には適していません。

同じく喫煙も鼻の粘膜を刺激してしまうため、花粉症の方は控えた方が良いでしょう。

病院での花粉症治療法

実際に花粉症になってしまった場合、どのような治療法があるかご存じでしょうか?
以下で、症状が軽い順番に治療法をまとめてみました。

点眼・点鼻薬

「初期療法」といわれる方法で花粉が飛散し始める約1~2週間前から点鼻薬や点眼薬などを使用し、症状を抑えます。

基本的に使用する点眼・点鼻薬は抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤で、これらを使っても改善しない場合はステロイド剤を使用します。

内服薬

比較的症状が軽い人は抗アレルギーの内服薬、症状がひどい人はステロイドの内服薬を服用します。基本的に点眼もしくは点鼻薬との併用が多くなります。

ひと昔前はアレルギーを抑える内服薬として抗ヒスタミン剤も用いられていましたが眠気や口の乾きなどの副作用が多いため、現在では副作用が少ない抗アレルギー剤が開発され「第2世代抗ヒスタミン剤」として普及しています。

注射による治療

注射による治療は、アレルゲン物質に対してのアレルギー反応を根本的に治す「アレルゲン免疫療法」とつらい症状を抑える「ステロイド注射」などがあります。

以前は花粉などの抗原の抽出液で作った薬剤を注射し、慣れさせていくアレルゲン免疫療法が主流でした。

最近ではアレルギー性鼻炎全般が治療できる「ヒスタグロビン注射」や重症な方に向けた「ゾレア皮下注」、ヒスタミン自体に抗体をつくりアレルギー反応を改善する「ヒスタグロミン注射」などさまざまな種類があり、自分に合った薬剤が選べます。

なおステロイド注射は、感染症、胃潰瘍など消化器の潰瘍、糖尿病、高血圧、緑内障、生理の異常などの副作用のおそれがあるため、厚生労働省では注意を促しているようです。

舌下免疫療法

治療薬を下の上に置いて、一定時間経過したあとに飲み込む治療法です。
効果がでるまで数年間毎日継続が必要ですが、自宅でケアができるため毎回通院する必要がありません。

また幅広い年齢層が治療対象となるため子供でも治療が行えます。

従来の内服薬は花粉症による症状を治療するものですが、舌下免疫療法は花粉が舞うよりも前に治療を開始し、花粉症の症状が出ないように予防します。

ただしスギ花粉にしか効果がみられないため、他の花粉にアレルギー反応が出る人はこの治療法は適していません。

レーザー治療

鼻粘膜の表面に炭酸ガスレーザーを照射することで腫れを凝固し、鼻の空間を確保し鼻づまりを解消する治療法です。
同時に鼻の粘膜も硬くなるため、外から新たに侵入してきた花粉も付着しにくくなります。
1度の施術時間は約30分で、出血や痛みはほぼありません。

スギ以外の花粉にも効果があり、体の負担が少ないため妊娠中で内服薬が飲めない方にも人気がある治療法です。

後鼻神経切断術

内視鏡を使って粘膜を超音波凝固装置で焼きながら、後鼻神経を切断する方法です。
下鼻甲介という部分の知覚が鈍くなるためムズムズ感やくしゃみ、重度のアレルギー性鼻炎にも効果を発揮します。

ただし費用は高いので、重度な花粉症に悩んでいる方におすすめです。

粘膜下下鼻甲介骨切除術

鼻の中にある下鼻甲介骨という箇所を切除し、鼻の通りをよくする方法です。
全身麻酔下でメスを使用するため1~2日入院が必要となりますが、粘膜へのダメージ
と再発が少ない手術です。

この治療法も内服薬や点鼻薬でも効果がない人、重度の鼻づまりにも有効です。
また病院によっては、上記の「後鼻神経切断術」と同時に手術を行うこともあります。

最新のレーザー治療は効かない?

手術よりも手軽で内服薬を飲まないため、体に負担の少ないレーザー治療は最新の治療法として大人気。
しかし鼻の粘膜は2~3年で再生するといわれ、効果が持続する期間は個人差があります。
早い人では1シーズンで効果がなくなってしまうため、繰り返し治療が必要となるようです。


また繰り返しレーザーを照射すると粘膜は萎縮し、分厚くなるため鼻から空気を取り入れれる量が減ってしまうことも。さらに萎縮した粘膜は、がんになりやすいといったデメリットがあります。

レーザー治療は鼻の症状のみに効果があるもので、アレルギーを根本的に治療できるわけではありません。

目のかゆみなどが気になる人はどちらにしても、点眼薬が必要になるでしょう。

オーソモレキュラー療法とは

前項でご紹介した画期的な治療法でも、アレルギーを根本的に治療するのは治療が限られてくるのがわかったと思います。

そこで注目されたのが、薬や治療だけに頼らない「オーソモレキュラー療法」です。
「オーソ」は整えるという意味で「モレキュラー」は分子の意味。

「栄養療法」「分子栄養学」「分子整合栄養医学」とも呼ばれ、栄養学に基づいて食事やサプリメント、点滴、糖質制限を用いて体の細胞自体を分子レベルで元気にする方法です。

分子レベルをわかりやすく説明すると、私たち人間の体はビタミン、ミネラル、タンパク質、脂肪酸などの栄養素でできています。

これらの栄養素をしっかりと摂取し、体内の分子を健康な状態にしておくと細胞の栄養も保たれ、機能を正常に果たしてくれるようになります。

結果、花粉症以外でも生活習慣病といわれる糖尿病や高血圧、高脂血症などのリスクも軽減するというわけです。

基本的にオーソモレキュラー療法は薬を使わないため、花粉症の症状がひどく薬も必要な方は一部分だけ取り入れて良いとこ取りしましょう。

オーソモレキュラー療法の3つの根本

オーソモレキュラー療法は3つの根本から成り立っています。
以下で、その詳細について説明します。

食生活

オーソモレキュラー療法では「血糖値の安定」と「タンパク質の最適な量の摂取」を基準とした食事法が採用されています。

体のさまざまな組織を構成しているタンパク質をしっかり摂取し、皮膚や髪、爪などをよい状態に保ちながら、脳やその他の臓器の機能を高めるためにタンパク質の代謝回転を早くします。

また肥満や生活習慣病の原因となりやすい血糖値の急上昇を糖質制限で抑えることにより、リーキーガット症候群や腸内環境の悪化を防ぎ、体に必要な栄養素の吸収力を高めます。

糖質によって体の中で糖化が起こると美肌に欠かせないコラーゲンをはじめ、骨密度にも悪影響を及ぼすことも。腸管のコラーゲンまで糖化すると腸内が荒らされ、免疫システムが正常に働きにくくなります。

すると花粉に対して誤作動を起こし、アレルギー反応が出やすくなります。

サプリメント

代謝の促進のために、高用量サプリメントで栄養素の補充を行うことも重要視されています。
たとえばビタミンD。ビタミンDは抗菌ペプチドという細菌やウイルスを排除してくれるタンパク質をつくる指令を出すため、免疫システムに不可欠な栄養素です。

日光浴をすると体内で生成されますが食事で摂取するのは難しく、サプリメントで摂取した方が効率良く吸収できるのです。

この他にもビタミンAや鉄分、亜鉛など食事で摂取しにくい栄養素は積極的にサプリメントで補充することが望ましいといえるでしょう。

生活習慣

体に栄養素が行きわたっていても、運動や睡眠、日常生活に潜むストレスなどによって自律神経が乱れていては、腸内環境が悪化し免疫システムが正常に働いてくれません。

運動には幸せホルモンで有名な「セロトニン」や気分が向上する「エンドルフィン」などを分泌させストレスを軽減する効果が認められています。

また睡眠時間が5時間を切る場合、交感神経が優位になり常に緊張状態となります。
緊張状態が続くと、便秘や肩こり、自律神経の乱れの原因となります。
できれば生活習慣病による死亡リスクが最も低い7時間睡眠を心がけるようにしましょう。

花粉症対策は腸内環境改善がポイント

何度か軽く触れましたが、このオーソモレキュラー療法の効果を生かすも殺すも全ては腸内環境次第。

食事やサプリメントで摂取した栄養素は腸内できちんと消化・吸収されなければ意味がないのです。
腸内には多くの免疫細胞が存在するだけでなく神経細胞も存在し、独自で働くことができるため「第2の脳」とよばれています。

これらの神経細胞は自律神経の一部にあたるため、腸内環境が悪化すると自動的に脳内にも不快感を覚えてしまうのです。

反対に緊張やストレスで腹痛を起こしてしまうことがあるのもこの作用によるもの。
この関係を「腸脳相関」と呼び、近年注目を浴びています。

さまざまな研究データによると、花粉症患者は腸内環境が乱れていることが多い傾向にあります。根本的なアレルギー改善には、オーソモレキュラー療法にあわせて腸内環境を整えることも不可欠といえるでしょう。

積極的に摂りたい栄養素

オーソモレキュラー療法で積極的に摂ってもらいたい栄養素をいくつかまとめてみました。
食事の方が効率良く補える栄養素と、サプリメントの方が効率良く補える栄養素があるので、バランスよく組み合わせてみましょう。

タンパク質・・・内臓や皮膚、髪、爪、筋肉、骨などほとんどの組織に主要成分として存在するだけでなく、体の機能の調節に欠かせないホルモンや酵素、抗体などの材料になります。肉や魚、卵、乳製品、大豆などに含まれますが、肉に偏ると腸内環境が悪化する恐れも。大豆食品などの植物性タンパク質も組み合わせてタンパク質を補いましょう。

ビタミンD・・・細胞内の毒素を排除し、神経に必要な栄養因子を増やします。また免疫システムの立役者となり血糖値改善効果もあることから、花粉症にも有効な栄養素といわれています。サケやイクラ、スジコ、ウナギ、サンマ、イワシ、シシャモ、干しシイタケ、キクラゲなどに多く含まれますが、1日20分の日光浴でも体内でビタミンDを生成することができます。屋外で日光照射をする機会が少ない方はサプリメントでの摂取を取り入れてみましょう。

ビタミンA・・・ビタミンDと一緒に摂取することで相乗効果を高め、働きをサポートしてくれます。ウナギやレバー、ニンジン、モロヘイヤ、卵黄などに多く含まれます。
ビタミンAは脂溶性なので食品で摂取する場合、炒め物や揚げ物がおすすめです。

フラクトオリゴ糖・・・フラクトオリゴ糖からつくられる酪酸は善玉菌のエサとなり、腸内環境を整えるだけでなく他の有益菌が育ちやすい環境を作ってくれます。また酪酸は「芽胞」と呼ばれる外殻に守られているため大腸まで届き、しっかりと働いてくれます。ゴボウや、ネギ、ニンニク、アスパラガス、玉ねぎなどに含まれます。

・・・生理がある女性には不足しやすい栄養素で、花粉症患者も鉄分を補うことで症状が緩和されることがわかっています。また腸や鼻、目などの粘膜を丈夫にし、活性酵素を除去してくれる働きもあります。鉄不足になるとエネルギー不足になりやすく、タンパク質の代謝に悪影響を与え、細胞の機能が低下します。吸収率が変わるため、できればホウレンソウやひじきに含まれる非ヘム鉄よりも、レバーや赤身肉、マグロ、カキなどに含まれる動物性のヘム鉄で摂取するようにしましょう。

亜鉛・・・免疫の働きと粘膜の働きを高め、花粉やウイルスの侵入を防いでくれます。また体内の炎症を抑える作用があるため、花粉症の症状緩和にも役立ちます。
男性はとくに不足しやすので意識して摂取するようにしましょう。鉄と同じようにレバーや赤身の肉、カキなどに含まれます。こちらも食品で摂取が難しい場合、サプリメントで代用しましょう。

花粉症における目や鼻のケア

花粉が飛散している時期は、外出先から帰宅したらすぐに玄関先で衣服についた花粉をはらい洗顔・手洗い・うがいを心がけましょう。

外出先で花粉が目に付着したと感じた場合、すぐに点眼薬で洗い流しましょう。
また「マスク」「眼鏡」「つばが広い帽子」なども花粉を避けるアイテムとして役立ちます。最近では花粉症防止用のゴーグルも発売されているので、徹底的に防止したい方にはおすすめですよ。

今年は辛い花粉症で悩まない!

花粉症は、鼻や目だけの表面的な病気でないことはおわかりいただけたでしょうか?
病院で症状を治療することも大切ですが、体の中から体質改善を行う方が花粉症改善の近道かもしれませんね。
体の内側と外側からのきちんしたケアで今年は花粉症知らずの体になりましょう。

参考文献
1)溝口 徹.花粉症は1週間で治る!:株式会社さくら舎,2018年,171p.9784865811391

2)小柳津 広志.花粉症は1日で治る!:株式会社自由国民社,2020年,195p.9784426126193

関連カテゴリー

関連キーワード

関連記事