「健康食品の裏側2」こんなPRをする商品は要注意!!薬機法に抵抗するメーカー事情

「健康食品の裏側」では、健康食品の表現についてまとめました。

そんな健康食品といっても特保(トクホ)、栄養機能食品など色々な種類があることを聞いたことがある人もいるかもしれません。

今回は、
そもそも健康食品とは何か。
栄養機能食品、栄養機能表示食品、特定保健用食品との違い。
前回お話しできなかった具体的にどのような薬機法違反があったのか。
などをまとめてみました。

健康食品とは

そもそも健康食品とはどういったものを指すのでしょうか。
実は「健康食品」というものの定義は法律上、定まっていません。「健康に良いとされる食品」が健康食品と呼ばれます。

そのため、この食品は健康に良い、この製品は健康に良い、とメーカー側が訴求することで、それらは健康食品と呼ばれるものになります。サプリメントなどと呼ばれることもありますが、ほぼ同意義と考えられています。

一方アメリカでは、「Dietary Supplement」を「従来の食品・医薬品とは異なるカテゴリーの食品で、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ハーブ等の成分を含み、通常の食品と紛らわしくない形状(錠剤やカプセル等)のもの」と定義し、またヨーロッパでも同様のものを「Food supplemennt」と定義しています。

予防医学が当たり前として普及しているアメリカ、ヨーロッパらしい定義だと思います。

健康食品の種類

一括りに健康食品といっても、いくつかの種類や名称があります。細かな種類や名称に関してはしっかり法律で定められています。
例えば、栄養補助食品、健康補助食品、機能性食品、保健機能食品、特定保健食品、栄養機能食品、特別用途食品などがあります。

ここでは、健康食品の中でも国の制度上、機能等の表示を許可しているものと、それ以外のものに分類して説明していきます。行政上、いわゆる「健康食品」は国が保健効果や健康効果などの表示を許可していない製品(一般食品)を指すとも考えられています。

また、普段私たちが口に含むことができるものは大きく医薬品、医薬部外品、食品の3種類のいずれかで、原則、食品に対して医薬品のような身体の構造や機能に影響する表示をすることは認められていません。ただし、特別用途食品、特定保健用食品、栄養機能食品については、例外的に限られた範囲で、特定の保険機能や栄養機能を表示することが認められています。

以上を踏まえ、食品は大きく3つに分類されることが多いので、こちらまとめてみました。

1、一般食品
2、保健機能食品
3、特別用途食品

1、一般食品

いわゆる「健康食品」がここに分類されます。また、健康食品と呼ばれない一般的な食品もここに分類されると考えられています。

ここで重要なのは「効果効能や機能の表示はできない」ということです。

2、保健機能食品

保健機能食品は大きく2種類に分類できます。
「特定保健用食品」と「栄養機能食品」です。

細かな説明は省略しますが、特定保健用食品は消費者庁の審査が必要で、保健の機能表示が可能です。栄養機能食品は消費者庁の審査不要で、栄養成分の機能表示が可能です。

3、特別用途食品

病者用食品、乳児用調製粉乳、妊産婦・授乳婦用粉乳、えん下困難者用食品などが該当し、こちらは消費者庁の審査を経て、特定の用途表示が可能になります。

このように「保健機能食品」「特別用途食品」では特定の効果効能を謳うことができますが、健康食品は効果効能を謳うことができないということです。

薬機法違反となる表現に注意!!

健康食品は効果効能を謳うことができないということを説明しましたが、こちらは薬機法のルールによるものです。
正確にいいますと、医薬品と誤認されるような効能効果を表示・広告することはできないというものです。

つまり、
「糖尿病を治します」
「糖尿病の方にオススメです」
「腸内環境を整えます」
「これを飲めば夜もぐっすり眠ることができます」
といった表現はできないということです。

薬機法の正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」といいます。

今まで薬事法と呼ばれていたものが、2014年(平成26年)11月、名称変更と共に施行された法律です。2019年にも大きく内容が見直されていて、2021年の夏にも見直しが予定されています。

「薬機法」は正式名称のとおり、医薬品、医療機器等の品質と有効性および安全性を確保するなど、製造・表示・販売・流通・広告などについて細かく定めた法律です。

ここで、重要なのことは薬機法は医薬品、医療機器等について定めている法律であり、健康食品の定義を行っている法律ではないということです。
つまり、薬機法は医薬品、医療機器等の定義を定めている法律であるため、医薬品ではない健康食品が医薬品と誤解されるような表現をしてしまうと薬機法違反になってしまうということです。

過去の違反事例

そんな健康食品の薬機法違反、具体的にはどのようなものが過去あったのでしょうか。
刑事摘発+罰金が行われたケースをいくつかまとめてみました。

セレブ事件

2005年1月22日、長崎県警により健康食品販売会社「セレブ」の従業員ら計7人を薬事法違反の容疑で逮捕されました。健康食品販売会社「セレブ」の従業員ら6名は2004年8月、長崎県有馬町の高齢者3名らに健康食品「黒大豆スーパー寿元」を計57本、約230万円(1本約4万円)で販売していました。

その際に「血圧が下がり心臓にいい」など効能を説明し、販売していました。また、自称クリニック経営者は、医師免許がないにもかかわらず、白衣を着て、問診や血圧測定を行い、「このままでは病状が悪化する」などと言って、商品が病気の治療に効果があるような説明をし、同社の販売に協力していたようです。また、同年2月10日には長崎県警は同社社長を逮捕、先月逮捕した従業員ら7名については、2004年12月にも同健康食品を販売していたとして同容疑で再逮捕されました。さらに同年3月2日には、健康食品販売会社「セレブ」の幹部ら7名が薬機法違反容疑で逮捕され、同事件に係わる逮捕者は計15名に及びました。

同事件の判決の内容は次のとおりです。
・移動店長及び自称薬学博士の2名につきそれぞれ罰金50万円、30万円の略式命令が出されました。
・同社会長及び従業員ら6名の初公判が行われ、6名全員が起訴事実を認めました。その結果、同社会長には懲役1年6ヶ月と罰金200万円、従業員ら5名に対しては懲役8~10ヶ月、罰金各50万円が言い渡されました。

サイエンス・サプリ事件

2017年3月、子宮内膜症の治療薬とうたって健康食品を販売したとして、東京都の健康食品販売会社「サイエンス・サプリ」の社長が薬機法違反の疑いで逮捕されました。

2012年4月以降、この商品を約2千人の顧客に販売し、1億3千万円以上を売り上げていました。2016年5~11月の間でインターネットのホームページ上で、「ピクノジェノールスーパーピーディーアール」という商品を子宮内膜症や月経困難症の治療薬と宣伝し、120粒入りのボトル1本を約1万3千円で販売していました。商品の原価は1本あたり1500円程度で、服用した人の中には「出血した」と話す人もいたようです。

いき水事件

2017年2月、「がんが小さくなる」などと根拠のない効能を謳って、液体を販売したなどとして、埼玉県の会社社長が薬機法違反で逮捕されました。

2012年1月~2016年10月に47都道府県の約1,600人に販売し、約3,500万円を売り上げていました。内容としては、医薬品として厚生労働省の承認を受けていない「いき水」について、インターネットでがんや切り傷などに効果があるかのように宣伝し、40代の女性4人に計20本(1本20ml)を5万円で販売していました。

「違法と分かっていたが効果があると信じて売っていた」と証言し、液体の成分はクエン酸などを大量の水で薄めたもので、幸いなことに健康被害は確認されていませんでした。

MIRO事件

2016年11月、ED治療薬に似せた健康食品をホームページで販売したとして、大阪市都島区の健康食品販売「MIRO」社長が薬機法違反の容疑で逮捕されました。

「どんな商品を売っていたかなど、一切タッチしていないのでわからない」と容疑を否認していました。
本事件は、健康食品のタブレットを「ジェネリクス」という医薬品だと称して、「バイアグラをしのぐ」などと効能があるかのように表示し、2015年12月~2016年8月、30錠入りの1箱を約4,000円で販売してました。

ステラ漢方事件

2020年7月、健康食品のECサイトを運営するステラ漢方の従業員や広告代理店の社長ら6人が薬機法違反の疑いで逮捕されました。

同社の従業員らは、健康食品について、「肝臓疾患の予防に効果がある」などと広告に表示した疑いがありました。

これ以外にも薬機法違反で指摘、処分されている企業が後をたたないのが現状です。

しかし、その中でも本当に優れた商品も存在しますが、薬機法のルール上、その良さを直接伝えることができず、が分からず埋もれていく商品もあると言われています。

商品選定のコツ

そんな良い健康食品を選ぶためにも注意すべきことがあります。

それは、薬機法違反をしていない健康食品を選ぶことです。

2021年8月に薬機法の改訂が予定され、新たに「課徴金制度」が導入されます。
具体的には、悪質な薬機法違反が認められた場合、違反を行っていた期間中における対象商品の売上額×4.5%を課徴金として支払うこと」になります。

しかし、除外される条件があります。
それは、「累計の売上高が5,000万円未満」の場合、課徴金の対象外となります。

そのため、極端な話かもしれませんが、売上が5,000万円いかないと思っていた場合、効果効能を謳い、薬機法違反してもいい。という考えや、指摘されたら直せば良いや、という考えの会社が平気で効果効能を謳っているケースが見られます。

もちろん、メーカーとしては違反していないつもりだったとうケースもあるかもしれません。

しかし、裏を返せば、そうしないと売れない商品であるとも捉えることができ、消費者にとってもデメリット(ただの浪費)となる可能性が高いと考えられます。自身の健康のために、健康食品を選び、自己投資をするのであれば、きちんとルールを守って宣伝している企業の商品の方が、商品自体にも信頼が置けるのではないでしょうか。

また、効果効能だけではなく、安全・安心を必要以上に強調している場合にも注意が必要です。詳しい説明は省かせていただきますが、健康食品といっても、必ずしも安心・安全ではありません。

効果効能と同様に、「天然成分で体に優しい」「販売数No.1だから安心」といった表現で安全・安心を売りにしている健康食品があるかもしれませんが、注意が必要です。

より良い商品を選ぶ際のコツは別記事で詳しくまとめていますので、そちら参照にしてみてください。

販売側のPRのコツ

また、消費者として選ぶ立場ではなく、販売側がPRする際に注意すべきことがあります。

それは、他社の真似をしないことです。

まだまだ、メーカー側が意図せずとも、薬機法違反になってしまっている広告は多数存在まします。そのため、他社がこの表現をしているから大丈夫。というロジックは全く通用しなくなってきました。

そもそも他社の広告を真似ても、同じような売上等になることはあまり期待できません。
メーカーの人がしっかりと想いを込めて作成することが重要になります。

また、薬機法をクリアしても景品表示法や健康増進法など、健康食品に関わる法律が多数存在します。そのため、これだけ守れば大丈夫!ということは言えず、商品開発の段階、広告を作成した際は詳しい人にコンサル、チェックをしてもらうのがいいでしょう。

まとめ

健康食品は食品です。
うまく健康食品を選ぶことで、日々の健康に貢献することができます。

販売元はしっかり薬機法等の法律を守り、消費者側は上記のポイントを意識しながら、良い健康食品を選んでいきましょう。

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