【嘘とホント】炭(チャコール)ダイエットのウワサ6つの真実

炭(チャコール)ダイエットは炭のデトックス効果を利用して痩せるというウワサのダイエット法です。でも見た目が真っ黒なため、本当に効くのか半信半疑な人も多いかもしれません。実際、チャコールダイエットはデトックス効果がある、痩せるなどのウワサがある反面、全然効果ないというウワサもあって、本当のところが知りたいと思っている人は多いのではないでしょうか。そこで今回は、炭ダイエットを科学的に分析して、ウワサの真実を探ってみたいと思います。

炭とは何?木の燃えかすとどう違う?

ウワサの真偽を探るには、まず炭がどんなものでどんな働きをするものなのかを、きちんと知る必要があります。炭はバーベキューするときに使うので、身近なものではありますが、炭はどうやって作られるのかは、意外と知られていません。そこでこの機会に、炭とは何かについて、きちんと理解した上でダイエット効果についても考えていきましょう。

炭はどうやって作られる?

焚き火をした後の木は真っ黒に焦げていますが、これは炭ではありません。木を燃やして黒色になっていたとしても、炭とは構造も性質も全然違います。
炭は木など植物を酸素の少ないところで、280℃以上に加熱して作ります。280℃を超えると、木を構成する成分が分解しはじめ、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、炭化水素などのガスになり、揮発します。
焚き火でも同じくらい高温になると、木を構成する成分が分解しはじめ、同じように揮発性のガスが発生します。炭を作るときと異なるのは、焚き火は酸素が十分にある状態で行うので、発生した揮発性のガスは燃えます。しかし酸素の少ないところで作る炭の場合、揮発性のガスは燃えません。

炭の構造と性質

焚き火した後の木と炭の構造と性質の違いは、「揮発性ガスが燃えるか燃えないか」にあります。つまり焚き火の後の黒くなった木は、揮発性ガスが燃えて木を燃やされ尽くしたものです。それに対して炭は揮発性ガスは燃えずに抜け、木はまだ燃え尽くされていない状態のものです。
炭が多孔質(表面にたくさんの小さな孔が空いている状態)なのは、揮発性ガスが抜けた後の孔(あな)です。木がまだ燃え尽くされておらず、小さな孔には空気が入っているため、再び火をつけると燃えはじめます。木の中に空気をたくさん含むので、木よりも燃えやすく、火持ちも良いのです。*1

なぜ炭はダイエットに利用されるの?

炭は燃料として使われる他、脱臭、調湿などにも使われています。炭の表面には多数の小さな孔が空いていると説明しましたが、脱臭や調湿の用途では孔に臭いや水分を吸着させるなど、その構造をうまく利用してさまざまな用途で活用されているのです。

ダイエットでも同じように、炭の表面にある多数の小さな孔に、物質が吸着される性質を利用しているようです。炭がダイエットに利用される理由を調べてみると、デトックス作用があるからのようです。デトックスとは解毒のことですが、体の中に取り込まれた毒素、体内で作られた毒素を体から排出することをいいます。

デトックスされる「毒素」とは何?

そもそもデトックスで排出する体内の「毒素」とはどんな物質のことをいうのでしょうか。それを理解した上で、デトックスとダイエットの関係を考えたいと思います。

毒素とは、簡単にいうと私たちの体にとって有害な物質や不要な物質のことを指すようです。体にとって有害な物質とは、食べ物に含まれる酸化剤や防腐剤などの添加物、微量に含まれる重金属、アルコール、タバコなどです。薬は「毒をもって毒を制す」ものなので、体にとっては毒素となります。

体内で発生する毒素もあります。例えば腸内の悪玉菌はタンパク質を分解して、硫化水素やインドール、スカトール、アンモニアなどの有毒物質を産生します。*2 また体内の代謝産物も毒素です。
そしてもともと、体内には有毒物質を肝臓で解毒する(デトックス)機能が備わっており、毒素は汗、尿、便として排出される機能が備わっています。

ダイエット法で実践されるデトックスは、体に備わっているデトックス機能を助けて、体の負担を軽くするという意味合いになります。

デトックスとダイエットの関係は?

ではデトックスはダイエットに効くのか?というところを考えたいと思います。デトックスで排出する体内の毒素の中には、腸内の悪玉細菌が産生した毒素があります。それらを吸着して体外に排出することは腸活にもなります。
腸活をして腸内細菌を整えることで、太りにくい体ができてきます。詳しくは「【間違うと効果なし?】腸活ダイエットの5つのやり方とよくある失敗5例」をご覧ください。
腸活はダイエット方の一つなので、デトックスが腸活になるのであれば、デトックスはダイエットにも有効といえそうです。

炭にはデトックス効果があるの?

炭の表面には多数の小さな孔が存在し、空気中や水中にある物質を吸着する性質があります。そのため炭は脱臭、吸湿のほか、水質や土壌の改良や薬品の製造など、いろんな場面で利用されています。
炭にデトックス効果があるといわれるのは、炭が物質を吸着する性質があるからでしょう。確かに吸着作用があったとしても、体内に取り込まれた炭は毒素を吸着するのでしょうか。

毒素だけを吸着するのではない

炭の表面にある孔(あな)深くに物質が入り込んだ状態を「吸着」といいますが、炭は孔に入らないサイズの物質は吸着できません。また毒素を選択的に吸着しているわけでもありません。液体の中での炭の吸着は、吸着したい物質が液体に溶けている場合、炭と液体のどちらとの親和性が高いかで、吸着できたりできなかったりします。*3
炭の吸着はこのようにさまざまな要因が絡みますが、毒素であるかどうかでは決まるわけではありません。

炭の原料は木、竹、ヤシ殻などがあり、原料により炭の性質が異なります。また炭の特徴である孔を作る工程を「賦活」といい、用いる賦活剤によっても炭の性質が異なります。
炭は毒素だけを選んで吸着することはできませんが、吸着して欲しい物質を吸着する炭を選ぶことはできそうです。

吸着して完全に取り除いてくれるわけではない

炭には物質を吸着する性質があることはわかりましたが、取り除いて欲しい物質をどの程度体外に排出できるのかも気になります。どれくらい吸着する能力があるかは、効果を出すために必要な摂取量の把握にも関わるからです。
消化管の中の状態に近い、水中での吸着の特性として知られているのは、炭に吸着している物質の量と、水中に存在している同じ物質の濃度は平衡を保つということです。つまり吸着する物質全てを吸着するのではなく、水中に存在する量と吸着量は釣り合いが取れた時点で、それ以上は吸着しないということです。*4

チャコールダイエット6つのウワサの真偽

以上のことを踏まえて、チャコールダイエットのウワサが本当なのかウソなのかを、考えてみましょう。

「炭はダイエットに効く」は本当?

炭は解毒作用があるだけではなく、炭は糖質や脂肪も吸着して排出するのでダイエットに効くというウワサです。これは本当でしょうか?
まず解毒作用ですが、炭は物質を吸着する性質はあっても毒素を選んで吸着しているのではありません。炭の種類によって吸着する物質が変わるので、炭選びが大事になってくるでしょう。
次に炭は糖質や脂肪を吸着するかという点ですが、炭が吸着しやすいのは水に溶けにくい物質や炭素を多く含む物質です。これに関しては、エビデンスになる資料は見つけられませんでした。しかし前半で説明した炭の性質から、糖質は水に溶けやすいので吸着しにくいといえそうです。反面、糖質が分解された後の単糖類や二糖類ではなく分解される前の多糖類なら炭素を多く含むので、吸着はしやすくなるでしょう。

「炭を摂りすぎると便秘になる」は本当?

炭には調湿作用があり、空気中の湿気を調節するために利用されます。そのような働きのある炭を摂りすぎると、腸内の水分を吸着して便秘になるというウワサがあります。この点についてエビデンスになる資料は見つかりませんでした。また炭が吸着できる水の量は、表面に存在する孔の体積以上は不可能です。炭の種類によって多少の違いはあると思いますが、これまで説明した炭の性質と、摂取する炭の量から考えると、便秘になるほどの水分は吸着しないと考えるのが妥当です。
便秘になるとすると、腸内の水分を吸収するからという理由以外と考えたほうが良いでしょう。

「摂りすぎると必要な栄養素まで排出してしまう」は本当?

炭は毒素を選んで吸着するわけではなく、親和性の高い物質を吸着するのでした。このウワサをサポートするエビデンスは見つかりませんでしたが、可能性は否定できないでしょう。

「遠赤外線効果で体を温める」は本当?

炭は遠赤外線を放出しています。炭火やストーブなどで体がポカポカに温まるのは、遠赤外線の効果です。ただしこれらは体外であること、燃やしていることが、体内に取り込んだ場合と条件が異なります。
摂取する炭の量は少量であることと、炭を体内に取り込み体温と同じ温度に温めることで、どれだけの遠赤外線効果が得られるか、データはありません。しかし想像してみると、実感できるほどの暖かさは感じないのではないかと思います。それよりも、食事を摂った後の代謝による体温上昇の方が実感はできるのではないでしょうか。

「腸内ガスを吸着して、ガス溜まりを改善する」は本当?

炭は脱臭効果があり、空気中の臭いを吸着することができます。腸内に取り込まれた炭も、ガスが存在していれば吸着することは可能です。腸内ガスを吸着する、炭が成分の医薬品も存在します。ただし医薬品の場合、炭はカプセルに内包されていますので、粉で摂取する場合も同じとはいえません。

「飲むだけで痩せる」は本当?

「炭を飲むだけで痩せる」というのは、炭でデトックスできると肝臓で解毒する負担が減るため、その分新陳代謝が活発化するためと説明されています。間違いとはいえませんが、基礎代謝や運動で消費するカロリーと摂取カロリーのバランスを考えることなしには、痩せられるかどうかはわかりません。
基礎代謝は運動によっても上げることができ、その効果は非常に大きいので、運動も取り入れると、もっと効果的に痩せることができます。

炭の性質を知って、うまく取り入れよう

炭の構造や性質を知ることで、ウワサをそのままうのみにすることもなくなります。それだけではなく、炭の原料や作り方によって吸着しやすい物質が異なることも知ると、自分が必要な炭の種類がわかり、商品選びにも生かすことができるようになります。
上手に炭を使えるようになるためにも、炭の基礎をマスターしましょう。

(参考文献)

*1: 図解よくわかる炭の力(杉浦銀治、よくわかる炭の力、日刊工業新聞社、2014年、pp.8-9)

*2: vol.146 肥満や病気に深い関係のある「腸内フローラ」の秘密(健康コラム OMRON)

*3: 炭の吸着のひみつ(林産誌だより1995年12月号 pp.5-9)地方独立行政法人 北海道立総合研究機構
*4: 特別公演 活性炭の一般特性と用途について(資源処理技術 1990年 第37巻第2号(夏季号 p83)一般社団法人 環境資源工学会

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