薬機法に抵触しない「伝わるライティング」の基礎基本
『体に脂肪がつきにくい、食後の脂専門トクホ。黒烏龍茶』
このキャッチコピーは有名で、ラーメンや焼肉など脂っこい食事をする時に愛用している方も多いかと思います。
しかし、「痩せます!」「体脂肪が気になる方へ」などのメッセージの方が消費者が商品を選ぶ際には良いのでは?と思う方も少なくないと思います。
これらは薬機法という法律が関わっているため、本当に良い商品であったとしても効果効能を直接伝えることはできません。
法律で決められていることだから、表現できない!と諦めてしまうと、それこそ消費者にとっては、情報が曖昧になり商品選定ができないというデメリットに繋がってしまいます。
そこで、今回は薬機法等に特化したライターである私が、薬機法を守る訴求の基礎基本をまとめましたので、紹介します。
薬機法とは
薬機法の正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」といいます。
今まで薬事法と呼ばれていたものが、2014年(平成26年)11月、名称変更と共に施行された法律です。2019年にも大きく内容が見直されていて、2021年の8月にも改正され、業界に衝撃を与えました。
「薬機法」は正式名称のとおり、医薬品、医療機器等の品質と有効性および安全性を確保するなど、製造・表示・販売・流通・広告などについて細かく定めた法律です。
ここで、重要なのことは薬機法は医薬品、医療機器等について定めている法律であり、健康食品の定義を行っている法律ではないということです。
正確には、医薬品、医療機器等の定義を定めているので、そのルールに表現次第では、健康食品であっても抵触してしまうということです。
また、8月には法改正に伴い、薬機法の課徴金制度というものがスタートしました。これにより今まで以上にルールを守ることが必要だとメーカーの方々は思っているでしょう。
ここで重要なのは、薬機法の対象になるものが何かをきちんと理解することです。
薬と名のつく法律のイメージ通り、製薬メーカー・病院・薬局はもちろん薬機法の規制対象です。
しかし、広告に対しては「何人も(誰もが)虚偽・誇大な記事を広告・記述・流布してはならない」と定められており、代理店・メディア・配信事業者・ライター・アフィリエイターなども規制対象として処分を受けるおそれがあります。
薬機法で規制される広告の3要件とは
まず確認すべきは、その広告が薬機法上の広告や表現に該当するかという点です。
薬機法では広告の3要件というものが定義されており、該当すれば規制の対象となりますが、該当しなければ広告としての規制を受けることはありません。
健康食品や化粧品に対して何かしらの情報発信をしたもの全てが対象になるわけではありません。
<広告の3要件>
1、顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昴進させる)意図が明確であること
2、特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
3、一般人が認知できる状態であること
参考:1998年9月29日付厚生省医薬安全局監視指導課長通知
この条件をすべて満たした場合、薬機法上では広告とみなされ、規制対象となります。
どの情報発信が薬機法の規制対象になるかがわかったところで、健康食品・化粧品の基本的な考え方などを紹介します。
この商品は何に分類されるか。
薬機法を意識した表現かどうかを確認する前に、この表品が何に分類されるかを判断しましょう。
医薬品、医療機器、医薬部外品、化粧品、健康食品、雑貨などに分類することができると思います。分類されたものによって表現できる内容が異なるので、これは非常に重要なことです。
健康食品
まずは健康食品から。
近年急成長を遂げている健康食品市場。
矢野経済研究所が発表した国内の健康食品市場調査によると、2019年度の健康食品市場規模はメーカー出荷金額ベースで、8,623億円(前年度比0.1%増)、2020年度は8,680億1,000万円(同0.7%増)が見込まれていると報告されました。
しかしその反面、虚偽の表示や、摂取・飲用効果を過剰(違法)にアピールするなどで行政指導を受けるケースも増え続けている実態もあります。
また、健康食品という言葉は有名ですが、法律上「健康食品」を定義しているものはありません。「普通の食品よりも健康に良い食品」ということです。
そのため、大元は食品として考える必要があります。
また、ここでは、特定保健用食品(トクホ)・機能性表示食品、栄養機能食品に関しては別のルールがあるので、それらを除いた健康食品についてまとめていきます。
医薬品と誤解される表現をしてはいけない
健康食品は食品なので、医薬品と誤解されるような表現はしてはいけません。
具体的には、以下の4つを守る必要があります。
1、成分本質:医薬品専用の成分を指定しているか
2、形状:医薬品と思わしき形状であるか
3、効能効果:身体の変化を表現しているか
4、用法用量:決まった用法用量が明示されているか
1、成分本質
製品の成分本質(原材料)が「医薬品に該当するか否か」は、医薬品としての使用実態や毒性、麻薬様作用等を考慮して判断されています。
具体的には、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」(医薬品リスト)に、医薬品に該当しない原材料は「医薬品的な効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(非医薬品リスト)に例示されているので、そちら確認していただけたらと思います。
2、形状
スプレーやアンプル形状など通常の食品としては流通しない形状を用いることなどにより、消費者に医薬品と誤認させることを目的としていると考えられる場合は、医薬品と判断されます。
ただし錠剤、丸剤、カプセル等の形状で「食品」と明示されている場合には、原則として、形状のみによって医薬品とは判断されません。
3、効能効果
その物の容器、包装、添付文書並びにチラシ、パンフレット、刊行物、インターネット等の広告宣伝物あるいは演述によって、次のような効能効果が表示説明されている場合は、医薬品的な効能効果を標ぼうしているものと判断されます。
また、名称、含有成分、製法、起源等の記載説明において、これと同様な効能効果を標ぼうし又は暗示するものも同様に効果効能を記載していると判断されます。
疾病の治療又は予防を目的とする効能効果
(例) 糖尿病、高血圧、動脈硬化の人に、胃・十二指腸潰瘍の予防、肝障害・腎障害をなおす、ガンがよくなる、眼病の人のために、便秘が治るなど
身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効能効果
(例) 疲労回復、強精(強性)強壮、体力増強、食欲増進、老化防止、勉学能力を高める、回春、若返り、精力をつける、新陳代謝を盛んにする、内分泌機能を盛んにする、解毒機能を高める、心臓の働きを高める、血液を浄化する、病気に対する自然治癒能力が増す、胃腸の消化吸収を増す、健胃整腸、病中・病後に、成長促進など
※ただし、栄養補給、健康維持等に関する表現はこの限りではありません。
医薬品的な効能効果の暗示
(a) 名称又はキャッチフレーズよりみて暗示するもの
(例) 延命○○、○○の精(不死源)、○○の精(不老源)、薬○○、不老長寿、百寿の精、漢方秘法、皇漢処方、和漢伝方など
(b) 含有成分の表示及び説明よりみて暗示するもの
(例) 体質改善、健胃整腸で知られる○○○○を原料とし、これに有用成分を添加、相乗効果をもつなど
(c) 製法の説明よりみて暗示するもの
(例) 本邦の深山高原に自生する植物○○○○を主剤に、△△△、×××等の薬草を独特の製造法(製法特許出願)によって調製したものである。など
(d) 起源、由来等の説明よりみて暗示するもの
(例) ○○○という古い自然科学書をみると胃を開き、欝(うつ)を散じ、消化を助け、虫を殺し、痰なども無くなるとある。こうした経験が昔から伝えられたが故に食膳に必ず備えられたものである。など
(e) 新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、経験談などを引用又は掲載することにより暗示するもの
(例) 医学博士○○○○の談
「昔から赤飯に○○○をかけて食べると癌にかからぬといわれている。〜癌細胞の脂質代謝異常ひいては糖質、蛋白代謝異常と○○○が結びつきはしないかと考えられる。」など
4、用法用量
医薬品は、適応疾病に対し治療又は予防効果を発揮し、かつ、安全性を確保するために、服用時期、服用間隔、服用量等の詳細な用法用量を定めることが必要不可欠です。
したがって、ある物の使用方法として服用時期、服用間隔、服用量等の記載がある場合には、原則として医薬品的な用法用量と判断されます。ただし、調理の目的のために、使用方法、使用量等を定めているものもあるかと思いますので、そちらについてはこの限りではありません。
一方、食品であっても、過剰摂取や連用による健康被害が起きる危険性、その他合理的な理由があるものについては、むしろ積極的に摂取の時期、間隔、量等の摂取の際の目安を表示すべき場合もあるかと思います。これらの実態等を考慮し、栄養機能食品にあっては、時期、間隔、量等摂取の方法を記載することについて、医薬品的用法用量には該当しないと考えられています。
ただし、この場合においても、「食前」「食後」「食間」など、通常の食品の摂取時期等とは考えられない表現を用いるなど医薬品と誤認させることを目的としていると考えられる場合においては、引き続き医薬品的用法用量の表示と判断されます。
具体的には、次のような事例は、これに該当すると考えられます。
(例) 1日2~3回、1回2~3粒
1日2個
毎食後、添付のサジで2杯づつ
成人1日3~6錠
食前、食後に1~2個づつ
お休み前に1~2粒
化粧品
次に化粧品です。
化粧品広告で意識することをまとめる前に化粧品の定義についてまとめてみました。
化粧品でイメージするものは、いわゆるメイクアップ用品が多いかもしれませんが、歯磨き粉やシャンプー、シェービングフォーム、入浴剤、ヘアカラー、ベビーオイルなども化粧品に分類されます。
同じような言葉に「薬用化粧品」というものがありますが、こちらは「医薬部外品」であり、化粧品とはまた違った表現ができますので、今回は「化粧品」での表現方法をまとめていきます。
化粧品の定義
そもそも薬機法で、化粧品は以下と定義されています。
人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なもの
すなわち、人の身体に塗るなどの方法で使用され、作用が緩和なものです。
ここで気になるのは、「作用が緩和」ということだと思います。
どの程度だと緩和とみなされるのかわかりにくいかと思いますが、その緩和な作用に関して厚生労働省がまとめた資料があります。
56項目の効能効果
化粧品は医薬品と同様、事前に効能効果について届出がなされていますので、広告ではその効果効能について表現することが基本です。仮に言い換えする場合でも、消費者に誤認されない範囲での表現となるよう注意が必要で、その表現をまとめたものが「56項目の効能効果」です。
具体的には、以下です。
(1)頭皮、毛髪を清浄にする。
(2)香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。
(3)頭皮、毛髪をすこやかに保つ。
(4)毛髪にはり、こしを与える。
(5)頭皮、毛髪にうるおいを与える。
(6)頭皮、毛髪のうるおいを保つ。
(7)毛髪をしなやかにする。
(8)クシどおりをよくする。
(9)毛髪のつやを保つ。
(10)毛髪につやを与える。
(11)フケ、カユミがとれる。
(12)フケ、カユミを抑える。
(13)毛髪の水分、油分を補い保つ。
(14)裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。
(15)髪型を整え、保持する。
(16)毛髪の帯電を防止する。
(17)(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。
(18)(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)。
(19)肌を整える。
(20)肌のキメを整える。
(21)皮膚をすこやかに保つ。
(22)肌荒れを防ぐ。
(23)肌をひきしめる。
(24)皮膚にうるおいを与える。
(25)皮膚の水分、油分を補い保つ。
(26)皮膚の柔軟性を保つ。
(27)皮膚を保護する。
(28)皮膚の乾燥を防ぐ。
(29)肌を柔らげる。
(30)肌にはりを与える。
(31)肌にツヤを与える。
(32)肌を滑らかにする。
(33)ひげを剃りやすくする。
(34)ひがそり後の肌を整える。
(35)あせもを防ぐ(打粉)。
(36)日やけを防ぐ。
(37)日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。
(38)芳香を与える。
(39)爪を保護する。
(40)爪をすこやかに保つ。
(41)爪にうるおいを与える。
(42)口唇の荒れを防ぐ。
(43)口唇のキメを整える。
(44)口唇にうるおいを与える。
(45)口唇をすこやかにする。
(46)口唇を保護する。口唇の乾燥を防ぐ。
(47)口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ。
(48)口唇を滑らかにする。
(49)ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)
(50)歯を白くする(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)
(51)歯垢を除去する(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)
(52)口中を浄化する(歯みがき類)
(53)口臭を防ぐ(歯みがき類)
(54)歯のやにを取る(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)
(55)歯石の沈着を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)
(56)乾燥による小ジワを目立たなくする。
注1)例えば、「補い保つ」は「補う」あるいは「保つ」との効能でも可とする。
注2)「皮膚」と「肌」の使い分けは可とする。
注3)( )内は、効能には含めないが、使用形態から考慮して、限定するものである。
実際はこれ以外の表現をしている化粧品広告を見たことがあるかもしれません。
薬機法以外にも「化粧品等の適正広告ガイドライン」などで細かなルールがまとめられているので、そちらも確認してみると良いかもしれません。
まとめ
特に近年健康への意識の高まりと共に健康食品や計商品市場が拡大していることや、暮らしに欠かせない商材であることを考えれば、薬機法をより意識した広告の作成は必須になっていきます。
ルールを守ることはもちろん大事ですが、一番は消費者目線で居続けられるか。消費者に商品の価値をいかに伝えるかが大事になってきますので、本当に良い商品を素敵な表現で伝え続けていきましょう。