【ホウ素の効果】生活に必要不可欠!知られざる役割を解剖

周期表では炭素の隣にくる元素、ホウ素。
名前を聞いたことがあっても具体的な役割について説明できる、そもそも勉強したという人はあまり多くないかもしれません。

実はホウ素は私たちの生活でもかなり身近に存在し、重要な役割を担っていることをご存知でしょうか。

今回はそんなホウ素について、ホウ素の役割、私たちの健康とホウ素の関係性などについて話していきたいと思います。

ホウ素とは

ホウ素は原子番号5、元素記号は B の元素です。

金属としての用途も多く、ガラスはホウ素の主要な用途の1つです。

また、ホウ素は、植物における細胞壁を維持するのに重要な栄養素であることが有名です。
また、根や新芽の生育を促進したり、細胞分裂や受粉に関わることが知られています。一部の植物では、土の中に含まれるホウ素よりも成長に必要としているホウ素の量が多いため、必須な栄養素としてホウ素が含まれる肥料が用いられています。

そんなホウ素ですが、まだ研究途中な部分も多いところもありますが、体内でも重要な役割をになっています。

ホウ素の歴史

ホウ素の効果や役割を話す前にホウ素の歴史をまとめてみました。

人類は古くから、ホウ砂(Na2[B4O5(OH)4]・8H2O)という砂ををガラスやエナメルの原料として利用していましたが、その中に未知の元素が含まれていることに気づきませんでした。

そんな未知の元素は1808年にゲイ・ルサックとテナール、デービーによってホウ砂から得られたホウ酸から同時に発見されました。

ホウ素(boron)という名前の由来は、ホウ砂(borax:アラビア語の「白い」)と炭素(carbon)に性質が似ているということから名付けらえました。しかし、単体のホウ素は黒色固体なので、実際は白くないという矛盾が実はあります。

また、この世で一番硬い鉱物として有名なダイヤモンド。鉱物の硬度を測る基準に「モース硬度」というものがありますが、ダイヤモンドは15と最高位です。
炭素とホウ素の化合物である炭化ホウ素(B4C)は、モース硬度が14と2番目の硬度をほこる鉱物としても有名です。

そんなホウ素ですが、私たちの日常生活でも重要な役割を担ってくれています。
ここでは、主に「ガラス原料」「ゴキブリ退治」にフォーマスを当ててまとめてみました。

ホウ素はガラスの原料

現代において、ガラスを見ない日はないと言っても過言ではないでしょう。
自宅、お店、私生活で使用する容器など幅広い分野でなくてはならないガラス。そんなガラスの一種である耐火ガラス、理科の実験などで使用されるビーカーなどが耐火ガラスです。

石英ガラスの軟化点を下降させ、膨張係数をなるべく小さく保つために酸化ホウ素を添加したのがケイホウ素ガラスで、その代表が耐火ガラス(パイレックスガラス)です。
ガラス細工が容易で、急加熱、急冷却にも耐えるので、様々な用途で活躍しています。

ホウ素はゴキブリ退治の救世主

ゴキブリだけではなく、ネズミ退治にもちいられるホウ酸団子。
雑食昆虫・小動物の好物であるジャガイモ・タマネギ・小麦粉、砂糖、米ぬかなどに、毒餌としてホウ酸を混ぜてダンゴ状に成形したものです。市販されているものは多種多様で、ホウ酸の濃度は様々です。

ホウ酸がゴキブリに対する効果の作用機序は実はあまりよくわかっていません。ホウ酸団子を食べたゴキブリが脱水症状を起こして死ぬという考えが有力です。また、その死骸や糞を他のゴキブリが食べてしまうことで、そのゴキブリも脱水症状で死んでしまうということもあるようです。

また、ホウ酸団子が有名になった自治体の大作戦があります。岐阜県池田町の町ぐるみで行ったゴキブリ撲滅大作戦です。

住民がタマネギ主体のホウ酸団子を作り、一斉に各自の家に設置したところ、町内からゴキブリを一匹残らず追い払うことができたと言われています。
この経験から多くの会社がホウ酸団子を作成し販売し始めたとも言われています。

ホウ素の研究でノーベル賞

ホウ素に関する研究で語らずにはいられない研究結果があります。
それらの研究結果でノーベル化学賞を受賞した人が過去に3人います。そのうち1人は日本人です。

1976年にアメリカの化学者リプスコムがホウ素と水素の化合物であるボランの構造に関する研究でノーベル化学賞を受賞。同様に1979年にアメリカの化学者ブラウンが酵素化合物を用いた有機合成反応の開発によりノーベル化学賞を受賞しています。

そして、2010年には北海道大学名誉教授の鈴木章氏が有機ホウ素化合物をもちいたパラジウム触媒クロスカップリング反応(鈴木ー宮浦クロスカップリング)の開発でノーベル化学賞を受賞しています。

ホウ素の研究でノーベル化学賞を受賞した人が3人もいるということはそれだけ、ホウ素が重要な存在であることを示唆していると考えられます。

ホウ素の効果効能・体内における作用や役割

日常生活でのホウ素の役割をまとめてみましたが、次は私たちの健康の分野での役割についてまとめてみます。まだまだ研究中の内容も多いのですが、ホウ素は体内でも様々な働きに関わっています。

ここでは体内でのホウ素の役割をまとめてみました。

骨・軟骨の強化

カルシウムとビタミンDが骨の育成に関わり、発育や骨の強化に重要な栄養素として知られています。ホウ素もそれらの働きをサポートすることが知られたおり、骨や軟骨の強化に関わっています。

そのため、ホウ素が不足すると関節痛や関節症になることが考えられています。

エストロゲン分泌促進

女性ホルモンの一種であるエストロゲン。思春期においては、乳房の成長や子宮・膣の発育などを促すとともに、身長や体重の増加に関与しています。その後は生理にも密接に関わっており、閉経まで、生理の周期ごとに分泌量の増減を繰り返すホルモンです。

ホウ素はそんなエストロゲンの分泌を促進することが知られています。

エストロゲンには、女性らしさに関わる以外にも、髪や肌のうるおいを保つ働きがあります。さらに、丈夫な骨を維持したり、コレステロール値の調整をしたり、動脈硬化を防ぐなど、様々な働きで女性のからだを守ってくれます。

エストロゲンの分泌量が減少してしまうと、からだを守っていた作用も弱まってしまうので、適切な量が出続けることが重要になります。

ホウ素の医薬品としての役割

日本ではまだホウ素を使用した医薬品は存在しませんが、海外では承認されているものがあります。

中性子捕捉療法(BNCT)

こちら日本ではまだ臨床研究中ですが、正常細胞にあまり損傷を与えず、腫瘍細胞のみを選択的に破壊する治療法です。

ホウ素を含む専用の薬液を点滴することで、ホウ素ががん細胞に集まります。その後、体外から中性子線を照射します。中性子線は、非常にエネルギーが小さく、人体への影響はほとんどありませんが、ホウ素とぶつかると核反応を起こし、放射線を発生させます。

この放射線は、体内では非常に短い距離(細胞1つ程度)しか飛ばないため、ホウ素を取り込んだがん細胞をピンポイントで破壊することができるという理論からがんの治療方法として確立すべく、多くの研究が行われています。

ホウ素は生活に不可欠な元素

ホウ素についてまとめてみましたがいかがでしたか。

私たちの生活を支えるだけではなく、将来のがん治療の中心になる可能性を秘めているホウ素。これからの研究により多くの効果、役割が発見されるかもしれません。

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