【銅の効果効能】多く含む食品・摂取量基準・研究情報について

私たちの身の回り、食品には多くのミネラルが存在しています。その中でも今回注目するのは銅です。銅は私たちの健康や美容との関係がイメージしづらいかもしれませんが、健康維持に欠かすことができないミネラルです。人体にも銅が含まれていて、普段口にしている食べ物からも日々補っています。

でも、一体銅はどんな働きをしているミネラルなのでしょう?また、どれくらいの量を、どんな食品から補えば良いのでしょうか。この記事では銅のはたらき、摂取量の目安から、多く含む食品、さらには最新の研究情報やおすすめの摂取方法まで一挙にご紹介します。

銅とは

銅は元素記号Cuと書き、自然界にも多く存在するミネラルです。必須微量元素であり、私たちの体に約80~100mgほど存在しています。血液を作る、骨や血管を丈夫に保つ、脳の働きを助けるなど、重要な役目をもつミネラルです。

さらに、銅は活性酸素を除去する酵素としても働き、体の機能を健やかに維持するために欠かすことができません。骨、骨格筋に約50%、肝臓中に約10%存在しているほか、血液、脳などにも含まれます。*1,2 銅はタンパク質と結合して、さまざまな生体反応に関わっています。

1 一般社団法人 日本銅センター
2 健康長寿ネット, ミネラル成分の銅の働きと1日の摂取量

銅の効果効能・体内における作用や役割

銅の働きについては良く知らない方が多いのではないかと思います。まずは基本的なはたらきをわかりやすく解説します。

酵素の活性中心として働く

銅は体内で腸管から吸収され、その後肝臓へと運ばれアポセルロプラスミンというタンパク質と結合します。そしてセルロプラスミンという形へと変換されて、全身に運ばれると、約10種類の酵素の活性中心に結びつきます。これにより酵素が活性化されて、体内のさまざまな化学反応を助けます。

赤血球を作る

赤血球を作るのに欠かせないミネラルといえば鉄が有名ですが、鉄は銅の存在なくしては十分な働きを発揮することができません。つまり、赤血球を作る上で銅は欠かすことができないのです。鉄があっても銅がなければ赤血球を作れなくなってしまいます。

先ほど紹介した銅から作られるセルロプラスミンはヘモグロビン合成に欠かせない酵素です。 ヘモグロビンの形成において銅が必要であり、つまり貧血予防においても銅が役立ちます。*2

免疫力を高める効果

ウイルスや細菌など病原体から体を守るために働いている免疫力。銅は免疫力の維持にも関わっています。マクロファージと呼ばれる免疫細胞などのエネルギー代謝に関わる「チトクロムCオキシダーゼ」という酵素の構成成分として欠かせません。つまり銅が不足すれば免疫力低下にもつながり、病気にもかかりやすくなります。

動脈硬化の予防

近年注目されているのが動脈硬化の予防効果です。赤血球中に存在する「SOD酵素(スーパーオキシドディスムターゼ)」という活性酸素を消去する酵素に含まれており、抗酸化作用を示すことがわかっています。その作用による動脈硬化の予防効果に期待が集まっています。

エネルギー代謝や鉄代謝を促す

銅は酵素に含まれることで、さまざまな生体内の反応を助けています。例えば、エネルギー代謝、鉄代謝、活性酸素除去、白血球細胞の成熟やメラニン形成などにも、銅が欠かせません。*2

銅はどういった時、意識して摂取するべきか

銅は基本的な食生活を送っている限り、不足することはごく稀です。ただ、極端に不足した場合には銅欠乏性の貧血などになります。とくに極端に不足する可能性があるのは、次のようなケースです。

・遺伝性の吸収不全
・難治性の下痢症

このような特別な状態で貧血が起きることがありますが、通常の食生活であれば特に意識することはないといわれています。貧血気味の人は鉄の補給に加えて銅も意識して補うようにすると良いでしょう。

ただ、銅は貧血以外にもすでに紹介したように、約10種類の酵素の活性中心として働き、私たちの代謝、エネルギー産生をコントロールしています。毎日を生き生きと過ごすためにも、銅の不足に陥らないようにバランスのよい食生活を心がけましょう。

銅の欠乏症(症状/対策)

日本人の通常の食生活であれば、欠乏することはほとんどないと言われています。ただし、長期的に経腸栄養管理されている人、人工栄養の未熟児では摂取量不足に陥ることがあります。

銅の欠乏症は次のとおりです。

貧血、骨異常、毛髪異常、白血球減少、好中球減少、心血管系や神経系の異常、成長障害、コレステロールの代謝異常など *2

また、遺伝的な銅代謝異常であるメンケス病という疾患があります。この場合は、血液中、脳や肝臓の銅が減少することで知能低下、発育不全、中枢神経障害などが起こります。*3

3 吉田企世子ら著, からだにおいしい あたらしい栄養学, 高橋書店 (発行;2016.3)

銅の過剰症(症状/対策)

過剰症は普通の食生活である限り、ほとんど起こりません。ただし、稀に化学薬品の誤飲などによる特殊な急性中毒や、遺伝性のウイルソン病などで過剰症が起きることはあります。

ウィルソン病とは銅が胆汁中に分泌されず肝臓に蓄積する遺伝病です。銅が過剰になると、脳神経障害、重度の肝障害、関節障害などを起こすことがあります。*2

なお、不注意により日常生活で銅を摂りすぎてしまうケースがあることを覚えておいてください。酢などの酸性の食品や調味料を銅製の鍋などに入れると、銅が溶け出して過剰摂取を引き起すことがあります。銅製品を使う場合には酸性食品をなるべく扱わないように気をつけましょう。

銅の研究情報

銅に関しては近年さまざまな生活習慣病との関係が明らかになりつつあります。欠乏も過剰も両方とも健康に対する影響があると報告されているのです。実際の研究報告をご紹介します。

銅欠乏とアテローム性動脈硬化症

近年の研究により、銅の欠乏とアテローム性動脈硬化症の関係が注目されています。アテロームとはしぼうの塊という意味があり、動脈の内膜にどろどろとした脂分が溜まって、次第に肥厚することで動脈硬化が起こります。

銅は心臓血管系の維持に不可欠な微量元素であり、銅欠乏は冠状動脈性心臓病で観察されるものに匹敵する構造的および機能的変化を誘発する可能性があると示唆されています。*4

4  I M Hamilton. Biol Trace Elem Res. Winter 2000;78(1-3):179-89.

ダウン症の酸化ストレス増大に銅が関与している

京都薬科大学の研究チームにより、これまで不明確であったダウン症の脳の酸化ストレス亢進に銅が関係していることが見出されました。銅の量的変動がダウン症の病態に関与している可能性を示唆する新しい知見として注目を浴びています。

ダウン症は染色体異常による疾患ですが、通常2本の21番染色体が3本(トリソミー)となることで精神遅滞、記憶学習障害など様々な症状をもたらします。これらの有害な症状には酸化ストレスの亢進が関係していると長年考えられており、京都薬科大学の研究チームにより脳に銅が過剰に蓄積していることが酸化ストレスを引き起こしていると示唆されました。今後、ダウン症の病態を解明する上で、銅は鍵を握っているかもしれません。*5

5 大学ジャーナルオンライン, ダウン症の酸化ストレス亢進に銅蓄積が関与、京都薬科大学が発見(参照; 2021年5月11日)

高年齢女性の物忘れと銅の過剰摂取

東京医科歯科大学の研究チームの報告で、高年齢の女性における物忘れと銅の摂りすぎに関係があることが示唆されています。閉経後、閉経期の女性は閉経前の女性と比べて、物忘れが多いことが明らかとなっています。

この研究ではさまざまな栄養素について解析されていますが、銅の摂取量が多いことは、物忘れの重症度と有意に関連しているというのです。銅の過剰摂取による物忘れの発生機序としては「アミノ酸と結合した銅の一部は血液脳関門を通過して脳内に到達。その結果、酸化ストレスや細胞障害を惹起する可能性がある」と述べられています。*6

6 Tamami Odai. Food Science&Nutrition.2020 Aug.;8(8) 4422-4431

銅の摂取に気をつけるべき人(薬の飲み合わせ等)

銅の摂取はすでに紹介したように、もともと銅が蓄積しやすい「ウィルソン病」などの場合には注意する必要があります。

また、薬との飲み合わせについては特に報告が見当たりませんが、過剰に併用した場合の影響は不明です。もしお薬を服用している場合に、サプリメント等から銅を補うのであれば医師に相談しておきましょう。

銅の1日摂取量の目安(年齢別)

銅は欠乏症、過剰症ともに起こしにくいミネラルですが、バランスの良い食事から十分量を摂取することが基本です。銅の1日あたりの摂取目安量は次のとおりです。

  男性 女性
  推奨量(mg/日) 耐容上限量(mg/日) 推奨量(mg/日) 耐容上限量(mg/日)
0~5(月) 0.3※ 0.3※
6~11(月) 0.3※ 0.3※
1~2(歳) 0.3 0.3
3~5(歳) 0.4 0.3
6~7(歳) 0.4 0.4
8~9(歳) 0.5 0.5
10~11(歳) 0.6 0.6
12~14(歳) 0.8 0.8
15~17(歳) 0.9 0.7
18~29(歳) 0.9 7 0.7 7
30~49(歳) 0.9 7 0.7 7
50~64(歳) 0.9 7 0.7 7
65~74(歳) 0.9 7 0.7 7
75以上(歳) 0.8 7 0.7 7
妊婦(付加量)     0.1
授乳婦(付加量)     0.6
※18歳未満では耐容上限量の掲載がありませんが、耐容上限量がないということではありません。該当する年齢の推奨量を参考に適度な量を摂取しましょう。
※妊婦、授乳婦では耐容上限量の掲載がありませんが耐容上限量がないということではありません。通常時の耐容上限量を参考に適度な量を摂取しましょう。
※1歳未満については推奨量ではなく目安量です。 *7

7 厚生労働省, 日本人の食事摂取基準(2020 年版)

以上の基準値を参考に、年齢に応じた適度な量を補うことを目指しましょう。

銅を多く含む食品群

銅はレバー、イカや牡蠣などの魚介類にとくに多く、種実(ナッツ)類にも多く含まれます。毒性が低いミネラルであり、基本的な食生活で取り入れる限り、過剰症を起こすことは一部の疾患を除いてほとんどありません。

なお、摂取量が少ない場合は、腸管での吸収率が上がり、多い場合には吸収率が下がるといわれています。そのため基本的に欠乏症や過剰症が起こりにくいように、生体内で調整されています。

肉類(100g中)

牛レバー 5.30mg
豚タン 0.20mg

魚介類(100g中)

ホタルイカ 3.42mg
カキ 0.89mg
しゃこ 3.46mg

種実類(100g中)

くるみ 1.21mg
ピスタチオ 1.15mg
カシューナッツ 1.89mg
ピュアココア 3.80mg

以上のような食品には他にもミネラルやビタミンなどが豊富に含まれています。バランスの良い食事を心がけるとともに、これらの食品も上手に活用してみましょう。*3

銅を多く含む野菜上位10位

野菜にも銅は含まれていますが、含有量としてはそれほど多くありません。ただ、野菜にはミネラルやビタミン、ポリフェノール、食物繊維など体に必要な栄養や成分が豊富に含まれています。バランスよい食生活では、肉類や魚類に偏らないで、野菜も合わせて補うことが大切です。

(100g中)
えだまめ(ゆで)0.36mg
マッシュルーム(ゆで)0.36mg
そらまめ(ゆで) 0.33mg
さつまいも(やき)0.20mg
やまのいも 0.16mg
ごぼう(ゆで) 0.16mg
にんにく(生) 0.16mg
まいたけ(ゆで) 0.14mg
さといも(水煮)0.13mg
アスパラガス(ゆで)0.13mg*8

8 野菜情報サイト野菜ナビ, 銅の多い順 主要野菜(参照 2021年5月12日)

銅を多く含む魚類/肉類上位10位

銅を積極的に補いたい場合には、魚類や肉類が含有量が多いのでおすすめです。とくに、イカやタコなどの軟体動物、エビなどの甲殻類は血液中にヘモグロビンの代わりに銅を含むヘモシアニンというたんぱく質が含まれていて酸素を運搬しています。イカなどの血液が青っぽいのは銅が含まれているからです。銅を効率よく補いたい場合には、イカ、タコなどを適宜取り入れてみましょう。

(100g中)
うし 肝臓(レバー 生)5.30mg
干しえび 5.17mg
ほたるいか(生)3.42mg
いいだこ(生)2.96mg
かき (養殖 生)1.04mg
ぶた 肝臓(レバー 生)0.99mg
ぶた スモークレバー 0.92mg
大正えび  0.61mg
うし 心臓(ハツ 生)0.42mg
ぶた 心臓(ハツ 生)0.35mg *2

ただし、これらの動物性食品には同時に脂肪分やコレステロールなどが含まれているため、食べ過ぎずにバランスを心がけることが大切です。

銅を多く含む穀類および加工物 上位10位

銅は穀類からも摂取することができます。穀類はそのものを食べるのが難しい場合もあるため、加工食品を活用するのも手です。含有量は肉類、魚類に比べれば多くはありませんが、以下を参考に栄養価の高い穀類を活用しましょう。

(100g中)
アマランサス 0.92mg
大麦(押麦) 0.40mg
焼きふ 0.32mg
オートミール 0.28mg
スパゲティ(乾麺) 0.28mg
マカロニ(乾麺) 0.28mg
もち 0.22mg
パン粉 0.20mg
上新粉 0.19mg*9

9 簡単!栄養andカロリー計算,銅(参照 2021年5月12日)

他にも銅は豆類、海藻類、乳製品など幅広い食品から補うことができます。基本的に不足しづらいと言われていますが、バランスの良い食生活であることが大前提です。さまざまな食材を取り入れて、バリエーション豊かな食事を心がけましょう。

銅はサプリメントで意識的に摂取すべきか

基本的な食生活では不足することが少ないといわれていますが、貧血気味の方は積極的に補うことが大切です。

鉄不足による貧血の場合、鉄の摂取にばかり意識が向きがちですが、同時に銅を補うことで吸収がアップします。赤血球にあるヘモグロビンという赤い色素は鉄と結合していますが、銅はこのヘモグロビンを作る上で欠かせない鉄を必要な場所に運ぶ役目があるためです。基本は食事から補うことが大切ですが、十分にとれない場合にはサプリメントからの補給がおすすめです。

銅の吸収に影響する栄養素

銅と一緒に摂ると吸収が良くなるミネラルやビタミンなどの栄養素はとくに報告が見当たりません。一方で、銅と一緒に摂ると吸収に影響するといわれているのが「亜鉛」と「ビタミンC」です。

亜鉛を摂りすぎると銅の吸収率が下がるため、亜鉛の過剰摂取には注意が必要です。また、ビタミンCを同時に摂ると、やはり吸収効率が下がるといわれています。銅と一緒に亜鉛、ビタミンCのサプリメントを摂取する場合には注意しましょう。*3

青汁で銅は効率的に摂取可能か

栄養バランスをサポートするドリンクとして人気の青汁には、さまざまな栄養が含まれています。ミネラルやビタミン、食物繊維やポリフェノールなどが含まれていて、不足しがちな栄養を補うことができます。

この青汁にも微量ですが銅は含まれています。具体的にどの程度の量を補うことができるのか、また摂取する際の注意点などご紹介します。

どのくらいの銅が青汁に含まれている?

そもそも銅は微量元素でもあり、青汁に含まれる銅の量も極わずかです。鉄分のように不足することがほぼないため、強化配合されたような青汁も特に販売されていません。

例えば、含有量は以下のとおりです。

緑宝青汁:1包(3g)あたり0.01mg
日本薬健 金の青汁 純国産大麦若葉100%粉末:1包(3g)あたり0.03mg
九州産のおいしい大麦若葉青汁::1包(3g)あたり0.01mg

1杯あたり0.01〜0.03mg程度含んでいる商品が標準的です。例えば、40歳女性で目安量0.7mgと比べてみると、青汁だけで充足させることは難しいですが、栄養のサポートとして活用してみると良いでしょう。

青汁を飲む場合の注意点

青汁には銅以外にもさまざまなミネラルやビタミンなどが含まれています。基本的には食品のため安全にお飲みいただけるものですが、次のような場合には体に影響する場合があります。

・ワーファリン(抗血栓薬)を服用中

・腎機能が低下している

青汁に含まれるビタミンKがワーファリンの効果に影響する可能性があります。服用中の方は、必ず医師に相談することが大切ですまた、青汁にはカリウムが豊富に含まれているため、腎機能が低下している場合には注意が必要です。

また、あくまでも青汁は栄養を補うためのものであり、特定の病気や症状が改善するものではありません。ただし、中には特定保健用食品、機能性表示食品などを取得していて、「便通を整える」などの効果が認められたものも一部あります。効果を期待する場合にはこのような商品を活用すると良いでしょう。

銅だけでなく栄養バランスの良い食事を意識しよう

今回は銅のはたらきと役目、目安摂取量や多く含む食品など、幅広くご紹介しました。あまり普段の食事で意識することの少ない銅ですが、人体の基本的な働きに欠かせない存在であることが理解できたかと思います。

一部を除いて基本的な食事をとれていれば不足することはありませんが、乱れた食生活を続けていると銅不足に陥る可能性もあります。肉類、魚類や野菜、穀類などバランスの良い食事を心がけ、からだの隅々まで栄養が届くように意識していきましょう。

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