【オートファジーを活性化】究極の健康食事法!食事で気をつけるコト
『SWITCH(スイッチ)オートファジーで手に入れる究極の健康長寿』(ジェームズ・W・クレメント著、クリスティン・ロバーグ著、児島 修翻訳、日経BP出版)では、オートファジーを発動させる食事について触れています。著者は本書の中で、がん、糖尿病、アルツハイマー病などのリスクを高める原因の一つが、現代の食事であると指摘しています。
著者は本書で、農耕以前の狩猟生活をしていた人類の祖先が環境に適応して生きてきた過程をもとに、オートファジーを機能させる理想的・健康的な食事について解説しています。ダイエットや健康のために栄養を考えるとき、数値や栄養素の細かい部分ばかりにとらわれすぎるよりも、太古の昔から時間をかけて進化して獲得した消化管や体の機能に重点を置いて食生活を見直すと、理想の食事は意外と単純なのかもしれません。
この記事では、オートファジーを活性化して健康を維持するために、人類の祖先の食生活を知る意義と現代の食事で気をつける点を紹介します。「摂るべきもの」ではなく「摂るべきではないもの」に重点を置いて食生活を見直すと、1日に取る栄養素や摂取カロリーについての理解も深まると思います。
必要な食べ物や栄養素を「進化」という視点で見直してみる
動物にどんな食餌を与えれば良いかを考えるとき、その動物が自然界でどのようなものを食べているかを確かめて、同じような食べ物を与えようとします。その理由は、自然界でその動物が食べているようなものを与えることが、健康体を維持するのに必要であり、消化管に負担をかけずにすむからです。
私たち人間の場合は、1日に必要な栄養素や摂取カロリーがわかっていて、健康を維持するためにはこれを守らなくてはいけないと考えています。動物と同じように、人間も長い年月をかけて作られた消化管に適した食べ物・栄養は何かという視点で考えるとどうなるでしょうか。
農耕以前の人類の祖先は何を食べていた?
二足歩行をしたと考えられている人類最古の祖先は、580万年前に出現したとされています。それ以前は樹上生活で、他の猿と同じようなものを食べていたと思われます。植物の根も食べるため、顎が発達している猿人も存在していました。250年前になると、草食性だった猿人から、ヒト亜科の中には肉を食べるようになった種類もいて、大きな脳を持つ生物へ進化したと考えられています。180万年前には、本格的な狩猟採集生活が始まり、植物や肉などを食べていました。1万年前に農耕が発達・普及し、穀物を食べるようになりました。
人類最古の祖先が存在した580万年前、地面に降りた時は二足歩行でしたが、樹上生活をしていたので、食べるものは植物や昆虫などでした。現在主食として食べられている小麦や米などの穀物を食べるようになったのは1万年前です。
時の流れを考えると、人間が穀物を食べ始めたのはごく最近ということになります。
農耕を始めてから食事が激変
穀物を作るようになって、狩猟で生きる頃よりも安定して食べ物を手に入れるようになりました。その結果人口が増加し、コミュニティーが確立しました。その反面、穀物ベースの加工食品が増えて、狩猟採集時代と比べると食べ物の多様性が失われたことにより、栄養が不足するようになりました。食べ物が安定して手に入るので、太りやすく病気にもなりやすくなったともいわれています。
現代人の食事との違いは?
現代人の食事はタンパク質、単糖類、ナトリウム、塩化物を過剰に摂取してしまう傾向にあります。不足する栄養素は食物繊維、カルシウム、カリウムです。基本的に野菜、肉類、穀物は豊富でいつでも手に入るところが狩猟採集生活をしていた時代とは異なります。肉を食べるときにも、現在と違い狩りをしなければ食べることができませんでした。
タンパク質の過剰摂取になりやすいわけ
そのため狩猟採集時代は食べすぎてしまうことはなく、逆に次にいつ食べることができるかわからないという状況でした。また火を使うようになる前は、肉食動物のような歯を持っていないので、生の赤み肉は噛みちぎれない上に、生肉を消化する機能も十分には備わっていませんでした。火を使えようになって、肉が食べやすくなってからも、肉を消化するのに時間を要し、そのために一定の時間内に消化できるタンパク質の量に限界がありました。
現在も人間がタンパク質の過剰摂取になりがちなのは、処理能力に限界があるからといわれています。
昔は脂肪を多く獲っていた
タンパク質は硬く、あごや歯の構造上、うまく食べられたなかったこともあり、赤み肉を食べる代わりに、内臓や脳などを食べていました。これらは脂肪が多く含まれていて、私たちの先祖はタンパク質よりも脂肪の消化吸収に慣れているといえ、それを受け継いでいるのが私たちです。当時はお腹いっぱい食べることができなかったため、現代のように脂肪をたくさん摂取しても肥満になることはありませんでした。
精製糖質ができてから文明病が生まれた
砂糖・小麦粉などの精製糖質は中世まではほとんどありませんでした。狩猟採集で暮らしていた時代には存在しなかった病気が、小麦や砂糖を摂取するようになってから見られるようになりました。糖質の過剰摂取により肥満になり、文明病ともいわれるがん、心臓病、高血圧、2型糖尿病、虫歯、自己免疫疾患、骨粗しょう症、アルツハイマー病などが増えてきました。
19世紀前半には米国人の1年間の砂糖消費量は、平均7キログラムでしたが、20世紀末には54キログラムに増えました。
旧石器時代の食事は体に良い?
2003年にヒトゲノムの解読が完了し、人類のゲノムの平均突然変異率は100万年あたり0.5%にすぎないことがわかりました。このことから、人間は旧石器時代の終わり頃からほとんど変わっていないという考え方があり、それがパレオダイエット(別名:原始人ダイエット)につながっています。
ヒトゲノムが旧石器時代とほぼ同じだからといって、それだけでは私たちが旧石器時代に生きていた人類の祖先と同じものを食べるのが正解であると断言することはできないと思います。パレオダイエットの考え方に賛同する人もいれば、反対する人もいます。
ここでは旧石器時代の食事が体に良いかどうかを議論はせず、食事内容の変化によって新たに抱えることになった病気のリスクについて考えます。
栄養を添加した加工食品は体に良い?
現代はさまざまな加工食品があり、バランスよく栄養素が摂取できるように不足しがちな栄養素を添加しています。単体で見るととても良いと思うのですが、多種類の加工食品を日常的に摂取する場合には、特定の栄養素の過剰摂取にならないか気をつける必要があります。
例えば加工食品に添加されるナイアシン(ビタミンB3)を過剰摂取すると、消化不良、重篤な下痢、便秘、肝機能低下、劇症肝炎など、消化器系や肝臓に障害が生じたケースが報告されています。*1
現代の食生活でオートファジーの機能を活用するには
人類が長い年月をかけて形成した体の仕組みにあった食生活を送ることで、オートファジーを発動させやすくなると著者は主張しています。そのためには、糖質(特に精製された小麦粉や砂糖)を摂りすぎないようにしなければなりません。またタンパク質や脂質は、狩猟採集時代は貴重な栄養素でしたが、現代はいつでも手に入る栄養素なので、食べすぎないように注意する必要があります。
冷蔵技術やインフラの整備により、私たちは毎日肉・魚や乳製品を食べられるようになりました。肉類や一部の魚類、牛乳をはじめとする乳製品には脂質やタンパク質が含まれていて、優れた食品の一つです。
筋肉を増やしたい人はプロテイン製品を利用することが多いと思いますが、分岐鎖アミノ酸(BCAA)はプロテイン製品によく使われてる成分で肉類や牛乳などに含まれています。 BCAAを日常的に摂取していると、mTORが働きオートファジーがオフになることが最近の研究で明らかになっています。*2
mTORを抑制してオートファジーを起動させるような食生活を送るために、著者は食べすぎないことと必要カロリーを満たすために脂質を摂ることをすすめています。血糖値の急激な上昇を避けるために、糖質を含む食品を食べるときには極力低GI値の食品を選ぶと良いでしょう。
オートファジーについて、詳細は下記書籍をご参照ください。
『SWITCH(スイッチ)オートファジーで手に入れる究極の健康長寿』(ジェームズ・W・クレメント著、クリスティン・ロバーグ著、児島 修翻訳、日経BP出版)
(参考文献)
*1: ナイアシンの働きと1日の摂取量(公益財団法人 長寿科学振興財団)
*2: タンパク質制限食による老化防止機構(Natureダイジェスト)Nature Japan