「16時間断食」オートファジーのメリット・デメリット・やり方

ダイエット、アンチエイジング、病気予防は食事が基本です。だから1日3食、栄養バランスに気をつけながら食べるのが良いことと思うのが一般的です。
しかし1日3食が根拠のないものだとしたら?栄養を摂取することに重点をおいた考え方から、栄養を体に取り込む活動をしている消化器官に重点をおいて考えると、見えるものが変わります。
このような考えが生まれたのは、2016年にオートファジーの研究で東京工業大学の大隅良典教授がノーベル賞を受賞したことがきっかけでした。オートファジーは体内に組み込まれたシステムで、飢餓状態に陥ったときに働く次のような機能に注目が集まっています。

  • 古くなった細胞小器官を新しく作りなおす(細胞の若返り)
  • 病気や老化の元になる活性酸素を減らす

この記事では、体に備わっているオートファジーという素晴らしい機能を活性化するための方法がわかる、医学博士青木厚氏の著書「『空腹』こそ最強のクスリ」の内容を紹介します。

「1日3食は体に良い」は間違いだった?!

「朝食を食べましょう」「1日3食きちんと食べましょう」なんていう言葉を聞いても、誰もそれが害だと感じる人はいないと思います。2016年にNHKが実施した「食生活に関する世論調査」によると、1日に3回食事をすると答えた人が81%を占めていました。このように1日3食は、習慣として深く根付いていることがわかります。

著者は1日3食が理想的であるという「確固たる裏付け」は、ないと断言しています。理想であるどころか、飽食の現代において1日3食しっかり食べることにより、内臓が疲弊してしまうというのです。内臓が疲弊するとはどういうことかというと、

  • 体内で炎症が起きやすい
  • 「食べ過ぎ」を招き、肥満になりやすい
  • 高血糖になりやすい
  • 老化が進みやすい

と説明しています。

糖質の過剰摂取が招く病気と「空腹」というクスリの効果

なぜ1日3食が常識になっているのか

ではなぜ、1日3食が当たり前になったのでしょうか。著者の調査によると、1日3食が始まるきっかけになった出来事がありました。それは「江戸時代初期の明暦の大火(1657年)の際に、復興に当たった大工や職人に、江戸幕府が朝と夜だけでなく、昼食も提供したから」「江戸時代後期に明かりが普及して、1日の活動時間が伸びたから」など諸説があるようです。これらを見てわかるように、当時は1日2食が一般的でした。

1935年には、国立栄養研究所の佐伯矩医学博士が「日本人男性が1日に必要とするエネルギーは2500〜2700キロカロリーである」「それを2食でとるのは難しく、3分割しバランスよくとることで、もっとも健康に生きることができる」と提唱したこともきっかけになっているといわれています。もっともこの摂取カロリーは今では少し高く、成人が1日に必要とするカロリーは1800〜2200キロカロリー程度と考えられています。

空腹は内臓の休息のために必要

著者は「空腹は最高のクスリ」と表現しています。その理由は食べ過ぎは胃腸を疲れさせるからと考えています。その理由として、胃腸が消化吸収に要する時間に比べて、3回の食事の間隔が短いことをあげています。

胃腸の消化吸収に要する時間は次の通りです。

  • 胃の中に食べ物が滞在する時間:平均2〜3時間、脂肪分が多いと4〜5時間程度
  • 小腸が消化に要する時間:5〜8時間
  • 大腸が水分吸収に要する時間:15〜20時間

一方、3回の食事の間隔は次の通りです。

  • 朝食から昼食の間隔:4〜5時間
  • 昼食から夕食までの間隔:6〜7時間

このように食べ物が胃から小腸に運ばれたすぐ後、またはまだ小腸で消化が行われているときに、次の食事時間帯がやってくることがわかります。すると胃腸は休む間もなく常に消化活動を行うことになり、その結果胃腸は疲れてしまうのです。

疲れるとどうなるかというと、消化機能が衰えて食べ物からきちんと栄養分を摂ることができなくなます。消化機能が衰えると未消化の食べ物が胃腸に残るため、腸内で腐敗が進み、悪玉菌が好む環境を作り出します。悪玉菌が優勢の腸内環境になると、下痢や便秘になりやすくなるばかりか、美容と健康にも悪影響を及ぼすことは良く知られています。

食欲も低下し、胸焼けや胃もたれを多く感じられるようにもなり、このような状態が長く続くと胃腸の病気につながることがあるため、著者は注意喚起を促しています。

まだまだある!食べ過ぎの弊害

食べ過ぎが招く体への害はまだまだあります。1日3食は食べ過ぎを招きやすいため、著者は1日3食の習慣に警鐘を鳴らしています。

食べ過ぎは体内の活性酸素を増やす

食べ過ぎは体内の活性酸素を増やすようです。活性酸素は体内でウイルスや異物などを殺菌・排除する重要な働きをしますが、活性酸素は敵と味方を見分けて攻撃しているわけではないため、活性酸素の量が多くなると、味方である体内の細胞までも傷つけてしまいます。美容では活性酸素はシミ・シワの原因になることから、嫌われる存在です。しかし美容だけではなく、がん細胞が生まれる原因の一つにもなるなど、活性酸素が増えることにより健康を害するリスクも高まります。

病気になるリスクが高まる

食べすぎると糖質や脂質を過剰摂取することにもなり、その結果血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールが増えて血管に付着すると、血液の流れが悪くなり、疲れやすくなります。さらに進んで血管に付着するコレステロールが増えると、動脈硬化が生じて心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高まります。

皮下脂肪より怖い内臓脂肪が増える

糖質や脂質を過剰摂取すると、エネルギーとして使いきれなかった分は中性脂肪に代えて脂肪細胞に貯蔵します。脂肪細胞は皮下と内臓に存在します。脂肪はエネルギーに変換される他、ホルモンの原料、ビタミンの吸収を助け、体温を維持するなどの働きがあり、なくてはならないものです。しかし過剰な脂肪は体に悪影響を及ぼします。

過剰な脂肪は血糖値を上げて糖尿病のリスクを高めたり、がんやリウマチの原因になるIL-6(免疫に関与する物質)や血栓(血の塊)を溶けにくくするPAI-1という悪玉ホルモンも分泌します。同じ脂肪細胞でも、皮下脂肪よりも内臓脂肪にある脂肪細胞の方が、悪玉ホルモンを分泌しやすいことがわかっています。悪玉ホルモンが増えると、糖尿病、脳出血、脳梗塞や心筋梗塞、がんなどを発症するリスクが高くなります。

加齢で食べ過ぎが加速する

歳をとると代謝が落ち、体の各器官の機能が衰えることから、同じ量を食べていても食べ過ぎになります。つまり、若い時には食べ過ぎではなくても、長年同じ量を食べ続けていると、食べ過ぎの状態になってしまうので、注意が必要です。

空腹のメリット・デメリット

食べ過ぎは健康に悪い理由について紹介してきましたが、著者が提唱する健康法である「空腹時間」を設けることのメリットとデメリットについて、本書で解説されています。

空腹のメリット

最後の食事から10時間が経過すると、肝臓に蓄えられたグリコーゲンを使い果たし、脂肪を分解してエネルギーに代え始めます。
さらに6時間が経過すると、「オートファジー」が機能し始めます。オートファジーは聞き慣れない言葉だと思いますので、説明します。

体の中にあるタンパク質は、古くなると体外に排出され、食事などで摂取したアミノ酸を使って新しいタンパク質を合成します。古いタンパク質は体の外に排出されますが、排出しきれないものが細胞内に溜まり細胞が衰え、体の不調や病気として現れます。

食事を摂らないでいると、体はタンパク質を作る材料がないため、なんとか体にあるものでタンパク質を作ろうとします。そこで普段は体外に排出する古いタンパク質を再利用して新しいタンパク質に作り直し始めます。
これがオートファジーの機能です。2016年にオートファジーの研究で、東京工業大学の大隅良典栄誉教授がノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
オートファジーは体内に十分な栄養がある時には活性化しません。最後に食事をしてから16時間程経過した後に、生き伸びるために不要物を集めてリサイクルを始めるのがオートファジーです。

1つの細胞内にはミトコンドリアというエネルギーを作る小器官が数百〜数千存在しています。加齢とともに数が減ったりエネルギーを作る力が弱くなることが知られています。
オートファジー機能でもっとも驚くべきことは、ミトコンドリアも新しく作り出すことです。元気なミトコンドリアを細胞内に多く持つほどたくさんエネルギーが得られるので、若々しく健康でいられます。

オートファジーで老化を遅らせることができるのはなぜ?

空腹のデメリット

空腹時間を設けることは、良いことばかりではありません。オートファジー機能は体を健康な状態に導いてくれますが、すでにがんを発症している人には、空腹が逆効果になります。
がん細胞に栄養を送らないがんの治療方法がありますが、空腹時間を設けてオートファジー機能が働くと、がん細胞が自ら栄養を作り出して増殖を始めるため、治療の妨げになってしまいます。

またこの健康法は、食事を摂らない時間を16時間程度としていますが、それ以上の空腹時間を作ることで、健康を害する危険性が高まります。

オートファジー機能を活性化させる「空腹時間」の作り方

オートファジー機能が働き始めるのは、最後の食事から16時間後といわれています。1日は24時間なので、8時間だけは食べてもよい時間ということになります。この条件を満たすのは、難しいように感じます。そこで16時間の空腹時間をどのように確保できるかについて、著者からのアドバイスを紹介します。

ルールはシンプル!

ルールは至って簡単で、食べない時間を16時間確保するだけです。食べてもよい時間は、制限なく何を食べてもよいのです。カロリー計算や、1日に何品目以上食べなければならないということもありません。

どのように16時間の空腹時間を作るか

起きている時間で16時間の空腹時間を作るのは、かなり難しいように感じます。そこで夕食後、寝るまでの時間は何も食べず、そのまま就寝するとかなりの空腹時間が作れます。例えば夜の8時に夕食を食べ終わり、それ以降何も食べないで就寝し、朝7時に起きた時点で11時間の空腹時間を過ごしたことになります。残りの5時間食べないでいると、16時間が達成できます。

お腹がすいた時はどうする?

それでも朝起きると、お腹がすいて動けない、仕事中にお腹がすいて集中できないなど、日常生活に支障をきたすことがあると思います。
そんな時に著者は、ナッツ類を食べるようにしているそうです。ナッツ類は味付けをしていない、素焼きのものを選べば、低糖質で塩分も少ない反面、良質な脂肪が含まれています。ナッツ類は食べても急激な血糖の上昇はなく、少しの量でも満腹感が得られるのでおすすめです。

ナッツ類以外では、生野菜サラダ、チーズ、ヨーグルトなどでも良いそうです。しかしご飯や麺類、パンや肉類は避けなければなりません。またはじめのうち、どうしても空腹感に耐えられないようなときに限り、缶コーヒーや甘い炭酸飲料など飲むのもよいそうです。

大事なことは無理してがんばるのではなく、無理せず長く続けることです。毎日続けられない人は、週に1日だけでも実行してみるとよいでしょう。

「空腹」はクスリで「糖」は毒?

日本人は糖質過多になりやすいと著者は指摘します。食事を簡単に済ませるために、おにぎり、丼ものや麺類、パンなどで済ましている人は要注意です。これらは糖質を多く含む食品だからです。食事の後、強い眠気やだるさに襲われる人は、糖質過多になっている可能性が高いです。

日本人が糖質を摂りすぎてしまうわけとは

日本人の主食は米ですが、お茶碗1杯のご飯(約150g)に含まれる糖質は、約50gです。これは3gのスティックシュガー約17本分に相当します。1日に3食、お茶碗1杯のご飯を食べると、それだけで糖質を150g摂ることになります。成人が1日に必要とする糖質が170g といわれていますが、白米だけでほぼ満たしてしまうことになります。

お昼はうどん1玉(約250g)食べたとすると、糖質が約60gで3gのスティックシュガーに換算すると約20本分です。これに甘いものが好きで砂糖の入ったお菓子類や、清涼飲料など飲むと、どれだけの糖質を摂ることになるか考えると、やはり過剰摂取といえそうです。

糖質に中毒性があるのはなぜか

甘いものが好きな人は、やめられないといいます。実は砂糖には中毒性・依存性があるといわれています。
糖質は、脳内に存在するドーパミンやβ-エンドルフィンという神経伝達物質を増やす働きがあります。これらは欲求が満たされたときなどに分泌され、人に快感を覚えさせます。甘いものを食べると幸福感を覚えるのは、そのためです。

ドーパミンやβ-エンドルフィンの影響で、甘いものをやめるのが難しくなります。しかしこの影響をうまく抜け出すことができれば、甘いものへの依存はなくなります。空腹時間を作ることで、糖質への依存から抜けることができます。

空腹が持つパワーを利用しよう

空腹時間を設けることと、体内の不要になった物質の再利用システムともいえるオートファジーの関係がよくわかる著書でした。空腹時間を持つことで、健康と美容のどちらも手に入れることができ、肥満も解消できるなんて、魅力的ですね。お腹がすいてもとにかく我慢するというのではなく、少しなら食べてもよいので続けやすいと思います。

この記事は下記の著書を参考に書いています。オートファジーや空腹がもたらすメリットについての詳細は下記著書を参照ください。

『「空腹」こそ最強のクスリ』青木厚著 アスコム (2019/1/26)

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