エビデンスに基づいた「体に悪い食べ物」

誰もが健康で長く暮らしたいと考えています。そして健康維持のためには生活習慣が大事であることもわかっています。健康に暮らすための情報はあふれていて、簡単に手に入るものの、どの情報を信じて良いのか判断が難しいのが現実です。

この記事では「体に悪い食べ物」に焦点を当て、科学的根拠(エビデンス)に基づいているものだけを紹介しています。食事は毎日のことだから、正しい知識を身につけておきたいものです。中でも食べると体に良くないことがわかっている食品については、限度を超えないように自制するためにも知っておくとよいでしょう。

この記事は、下記サイトや書籍の情報に基づいて書いています。詳細は記事の最後に参考文献として掲載しています。

  • 厚生労働省
  • 国立がん研究センター
  • 農林水産省
  • 『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』UCLA助教授/医師 津川友介著、書東洋経済新報社 (2018/4/13)

食事と生活習慣病

生活習慣病とは、加齢にともなって罹患率が高くなる疾病群のことをいい、生活習慣が深く関与している疾病と考えられています。生活習慣とは食事、運動、休養、ストレス、飲酒、喫煙などを含みます。生活習慣の違いによって、体に負担がかかり長い年月を経て発病するのが生活習慣病です。

病名としてはっきりとした定義は定められているわけではありませんが、健康増進法では「がん及び循環器病」、「健康日本21」では、「がん、心臓病、脳卒中、糖尿病等」と位置付けられています。*1

日本人に多い死亡率の高い病気

厚生労働省の「令和元年(2019) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、死因順位は1位は悪性新生物(がん)、2位は心疾患、3位は老衰、4位は脳血管疾患でした。*2

脳血管疾患の死亡率は低下傾向にありますが、がんは昭和56年以降第1位になってから、上昇傾向です。

心疾患とはどんな病気?

心疾患の大部分は虚血性心疾患が占めています。虚血性心疾患とは、心臓の筋肉に血液を届ける血管(冠動脈)が詰まったり細くなったりして、血流が悪くなり心臓の筋肉に酸素や栄養素が行き渡らなくなった状態のことをいい、狭心症心筋梗塞があります。

狭心症は冠動脈が狭くなり、発作が起きると一時的に心臓の筋肉に血液が流れなくなり、胸痛や息切れ、呼吸困難などが起きます。症状は数分から長くても15分程度でおさまります。

心筋梗塞は冠動脈に血栓が詰まり、血液が流れなくなります。狭心症のように短時間ではおさまらず、血液が流れない部分の筋肉が壊死します。激しい胸の痛みをともない、ひどい場合には死に至ります。

虚血性心疾患の危険因子は、高血圧、高血糖、脂質異常といわれています。塩分、糖質、脂質を摂りすぎないよう、日々の食事に気をつけることが大切です。*3

脳血管疾患とはどんな病気?

脳血管疾患とは、脳の血管のトラブルにより、脳細胞が障害を受ける病気のことをいい、大きく分けると脳梗塞脳出血があります。

脳梗塞は脳の血管に血栓が詰まり、血液が流れなくなります。ろれつが回らなくなったり、手足の痺れや麻痺が起きたりします。

脳出血は脳の血管が破れ、出血します。出血は脳の内部で起こるものを脳内出血、脳の表面で起こるものをくも膜下出血といい区別されています。脳内出血すると、頭痛、めまい、嘔吐、意識障害、まひ、ろれつが回らないなどの症状があります。くも膜下出血すると、激しい頭痛、悪心、意識障害が起こりますが、ろれつが回らないなどの言語障害は見られません。

脳血管疾患の危険因子も同じく高血圧、高血糖、脂質異常です。*4

糖尿病とはどんな病気?

糖尿病とは、インスリンが十分に働かなくなるために、血液中の糖(血糖)が増えてしまう病気です。血糖値が高い状態が何年も続くと、血管が傷つき心臓病や腎不全、失明や足の切断など、深刻な合併症を引き起こします。

糖尿病になると、のどが渇いて水をよく飲んだり、疲れやすくなったりします。血糖値が著しく高くなると、昏睡状態に陥ります。*5

糖尿病の危険因子もやはり高血圧、高血糖、脂質異常です。

がんは予防する時代

日本人の病気による死因1位はがんで、年々増加しており昭和56年以降は毎年1位になっています。がんの研究が進み、がんの原因が明らかになり始めていて、現在がんは予防する時代といわれています。

(出典:厚生労働省 令和元年(2019) 人口動態統計月報年計(概数)の概況 11p 図6)

がんの予防にとって重要な要因は「禁煙・節酒・食生活・身体活動・適正体重の維持・感染」の6つです。このうち感染以外は生活習慣に関わる事柄であることがわかります。
食生活に関しては、研究によりがんのリスクをあげる食品、さげる食品がわかってきています。エビデンスによりリスクについて確実、ほぼ確実、可能性ありのものなど、分類されています。また食品以外の要因についても同様に分類がされていて、肥満と糖尿病で確実、ほぼ確実、可能性ありの評価がされているがんもあります。*6

体に悪い食品とその根拠

これまで見てきた日本人に多い死亡率の高い病気の1位から3位と、生活習慣病である糖尿病の危険因子として、食生活が共通していました。
この記事で問題にしている疾患であるがん、心疾患、脳血管疾患、糖尿病の危険因子はいずれも高血圧、高血糖、脂質異常なので、食べると病気のリスクを上げる食品、下げる食品も共通しています。

高血圧を招く食品

高血圧を招くのは、塩分を多く含む食品です。塩分をたくさん摂取すると、腎臓で処理できなくなり、体内に余分な塩分が蓄積されます。塩気のものを食べすぎると喉が渇く経験をしたことがある人は多いと思います。これは血液の浸透圧が高くなるために、脳が水を飲めという指令を出すからです。水を飲むことで、浸透圧を正常に保とうとするのです。

水を大量に飲むと、何が起こるかというと、水分が体内に吸収されると血管内に入ります。すると血液量が増えて、その結果血管にかかる圧力が高まります。ホースから水を放水するときに、蛇口を開けるとより多くの水が出てきて、その分ホースにかかる圧が高まるのと同じです。

塩分を多く含む食品は、加工肉、加工魚、味噌、醤油、漬物などです。日本食は塩分が多めですので、血圧のことを考えると塩分の摂取量は控えるために減塩された食品や、お味噌汁や漬物を控えめにするのが良いでしょう。

高血糖を招く食品

高血糖を招くのは、糖質を多く含む食品です。炭水化物も消化されると糖質になるので、炭水化物を含む食品も摂りすぎは禁物です。ただ炭水化物の場合は摂取量を減らせばよいという単純なものではなく、どのような炭水化物を摂取するかで血糖値の上がり方が変わるので、注意が必要です。

炭水化物の種類

『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』の著者である津川友介医師は、炭水化物を「白い炭水化物」と「茶色い炭水化物」に分けて考えるとわかりやすいと説明しています。
白い炭水化物とは白米や小麦粉など精製している炭水化物、茶色い炭水化物とは玄米や全粒粉など精製していない炭水化物のことをいいます。

茶色い炭水化物の多くは食物繊維や栄養成分を多く含んでいます。茶色い炭水化物を摂取している人は、白い炭水化物を摂取している人よりも肥満の割合が低いこともわかっています。*7

日本人は糖尿病になりやすい?

日本人の主食は白米なので、その分1日の炭水化物摂取量が多めになります。白米は血糖値を急激にあげるため、糖尿病になりやすいといわれています。
しかし一方で白米を主食とすることで、白米以外を主食とするよりも脂質(特に飽和脂肪酸)とコレステロールの摂取が少ないこと、ビタミンとミネラルが多く摂取できることがわかっています。*8

トータルで考えると、和食中心の食事は健康的と考えることができます。ただし節度を守って白米を食べている場合であることは、忘れないようにしなければいけません。和食は塩分摂取も多くなってしまうので、白米の食べ過ぎや塩分の多いおかずを食べすぎないようにすることが大切です。

脂質異常を招く食品

脂質異常とはLDL(悪玉コレステロール)、中性脂肪の値が高値になる状態をいいます。脂質異常になると、動脈硬化を招きます。*9

動物の肉に含まれる脂質や乳脂肪には飽和脂肪酸が多く、これらの食品を摂取すると悪玉コレステロールや中性脂肪が上昇します。
同じ脂質でも植物や魚に多く含まれる不飽和脂肪酸は、体に良いとされています。

その他の体に悪いといわれている食品

日本人を対象とした研究で、ハムやソーセージなどの加工肉と鶏肉を含まない赤い肉(牛・豚・羊など)は大腸がんのリスクを上げる可能性があると評価しています。
国際的な基準では、赤い肉は1週間に500gまでの摂取にとどめることとなっています。*10

気にしすぎないことも大事

体に悪いことがわかっている食品を紹介しましたが、生活習慣が原因の病気は、長年の蓄積で発症するものなので、習慣化しない限り大きな影響はありません。
できるだけ食べない方が良いことは確かですが、食べてしまったことを気にしすぎるとストレスになってしまいます。日本食の白米と塩分の健康への害を紹介しましたが、白米も塩も大切な栄養素であることは変わりなく、過剰摂取が問題になるだけです。

適量を心がけていくことで、充実した食生活を送ることが可能になると思います。津川友介医師の書籍『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』には、エビデンスに基づいた究極の食事の詳細が書かれていますので、興味がある方はぜひご覧になってください。

『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』UCLA助教授/医師 津川友介著、書東洋経済新報社 (2018/4/13)

(参考文献)
*1: 生活習慣病とは?(e-ヘルスネット)厚生労働省
*2: 令和元年(2019) 人口動態統計月報年計(概数)の概況(厚生労働省)10p
*3:【心疾患】 「がん」に次いで死亡率の高い病気(全国健康保険協会) 
*4: 脳血管疾患について(特定非営利活動法人 日本成人病予防協会)
*5: 糖尿病とは(国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター)
*6: 科学的根拠に基づくがん予防(国立がん研究センター がん情報サービス)
*7: 世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事 UCLA助教授/医師 津川友介著、書東洋経済新報社(2018/4/13)
*8: 東海地域食料自給率向上研究会 和食(Washoku)と生活習慣病について(東海農政局)
*9: 脂質異常症(e-ヘルスネット)厚生労働省
*10: 日本人のためのがん予防法 平成29年2月(第4版)国立研究開発法人 国立がん研究センター 予防研究グループ

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