【微量だと効果なし?】炭のデトックス効果の知られざる真実

アメリカのセレブを中心に流行した炭(チャコール)ドリンク。日本でも炭のデトックスやダイエットが流行り、さまざまな商品が発売されています。ところが炭の商品が多すぎて、どれがいいのかわからない上に、インターネットで炭の効果を調べても賛否両論があり、よくわからないという人が多いのではないでしょうか。
食べる炭は、どの程度摂取すれば効果が出るのか、摂りすぎることへのリスクはないのかなど、多くが謎に包まれています。それらの謎ができる限りスッキリ解けるような情報を集め、わかりやすくまとめました。

セレブに人気の炭入りドリンク美容法とは

真っ黒な見た目のインパクトが強烈な炭(チャコール)入りのドリンク。アメリカの美しい女優たちが手にしている写真が女性雑誌などのメディアに取り上げられると、大きな話題になりました。
炭は脱臭や調湿、不純物の吸着など、さまざまな用途で使われていますが、美容にも応用したのがチャコールダイエットです。炭が物質を吸着する機能を利用して、炭を体内に取り込んで体の中にある毒素など不要なものを吸着させる(デトックス)という考え方です。
その効き目に関しては賛否が分かれるところで、研究論文も数少ない状態で本当のところは謎に包まれています。

なぜ効く?炭の吸着とデトックスのメカニズム

炭の表面には、無数の小さな孔(あな)があります。この孔に体内の老廃物や腸内の悪玉菌が産生した毒素などが炭の孔に吸着され、炭とともに体外に排出されるというメカニズムにより、デトックス(解毒)をするといわれています。

しかし炭は、体にとって悪い物質だけを選択的に吸着しているわけではありません。炭と親和性の高い物質は、吸着されやすいことがわかっています。その他炭の孔の大きさや、炭の原料、炭を作る工程で使用する賦活剤の種類によっても炭の性質が変わるため、吸着できる物質も変わります。
次に吸着のメカニズムを説明します。バーベキューで使う炭と比べてみると、飲む炭との違いがよくわかります。

飲む炭とバーベキューで使う炭はどう違うか

飲む炭とバーベキューで使う炭、どちらも真っ黒に炭化された物質で、表面には孔が空いているという点は同じです。しかし両者には明らかに違う点があります。馴染みのある言葉で表現すると、チャコールダイエットに使うものは「活性炭」で、バーベキューに使うものは「炭」です。

活性炭はデトックス効果に注目されるずっと前から、工業や普段の生活の中で使われてきました。臭いや不純物を取り除く働きがあるからです。
活性炭とバーベキューで使う炭との大きな違いは、孔の大きさです。活性炭の孔の大きさは約1nm(ナノメートル)で、炭の孔の大きさは約20〜60μm(マイクロメートル)です。1μmは1000nmなので、炭の孔の大きさは活性炭の数万倍ということになります。*1

飲む炭とバーベキューの炭は孔の大きさの違いのほか、孔の形・構造も異なります。この違いが活性炭と炭の性質を全く別のものにしているのです。つまりバーベキューで使う炭は、孔が空いていることで空気が入り、よく燃えます。同じ火を起こすことができる薪よりも、火力の調整がしやすく安定しているために料理に使うのに適しています。
これに対して活性炭は表面の孔からずっと奥まで孔が続いていて、孔の径は奥に行くほど小さくなっていきます。臭い成分や不純物を吸着できるのは、奥まで続く孔の構造があるためです。

炭は木や竹などを酸素の少ない条件下で高温にさらすことで炭化させて作られます。活性炭はそこからさらに「賦活」(ふかつ)という工程を経ることで、さらに微細な孔が形成されます。*2

有効性を示すエビデンス

活性炭の吸着機能は、薬毒物が体内に入った場合、大量服毒の場合の解毒法の一つとして利用されています。しかし大規模な臨床対照研究はされておらず、ボランティアによる研究や動物実験により毒物の吸着効果が証明されているだけなのが現状です。
活性炭の吸着は可逆性で、消化管内のpHなどにより吸着している物質の離脱が起きることの対策としては、活性炭の大量投与が必要ともいわれています。また消化管の中に食べ物がある場合には、吸着能力に影響が出るようです。*3

腎臓は体内の毒素を排出する機能を持つ臓器ですが、腎臓が機能しなくなる腎不全という病気で、腎臓の代わりに毒素を吸着して便として排出するために活性炭を使った薬があります。*4
薬理作用としては、活性炭は経口摂取なので血中の毒素を吸収するのではなく、消化管にある毒素を体内に吸収される前に吸着して体外に排出することで体内に毒素が蓄積するのを防ぐものです。

以上のように、活性炭が体内の毒素を吸着して体外に排出する機能を利用した処置法や薬が存在します。これらのことは大量に毒物を摂取した場合や臓器不全のケースですが、健康な体で蓄積する微量な毒素に対して、活性炭がどれほどの効果を持つか知ることができる研究報告などは、今のところはほとんど存在しないようです。

効果が出る摂取量は?

健康な体で活性炭を使った解毒効果に関する研究がされていないため、どれほどの量を摂取すると効果があるかは不明です。
先に紹介した毒物などを吸着する処置や、腎不全の薬として使う場合の活性炭の量は、かなり大量です。副作用は嘔吐、便秘、消化管の閉塞、誤嚥(ごえん)などです。

美容と健康の目的では、そんなに大量の活性炭を飲むことは危険です。利用する際には、商品の説明をよく読み、飲みすぎないように注意しましょう。

飲む炭(活性炭)に副作用・デメリットはある?

美容と健康に飲む炭は食品なので、副作用はありません。活性炭は体内に吸収されることなく排泄されますが、過剰摂取をすると便秘になる場合があるので注意が必要です。

また活性炭は毒素を選択的に吸着するものではないので、食後すぐに飲むと必要な栄養分まで吸着してしまいます。炭商品を摂取するタイミングを食後1時間以上経過してからにすることで、栄養素の吸着が防げます。

食用の炭(活性炭)の上手な選び方

デトックスに利用する食用の炭商品の種類はたくさんあるため、どのように選んだらよいか迷うかもしれません。そこで使用目的や好みにあった商品を上手に選べるように、食用の炭商品の種類と用途を整理しました。

炭の種類と特徴で選ぶ

炭の原料になるものによって性質が少し変わるので、その違いを理解した上で、自分にぴったりと思う炭商品を見つけることができます。商品によっては数種類の炭をブレンドしたものもあり、炭の種類だけに注目する場合でも選択肢はたくさんあります。

竹炭

竹炭は木炭よりも吸着力が高く、ミネラルを多く含みます。ミネラル分も摂取したい人におすすめです。

樫の木の炭

竹よりも安価なので、長く続けて飲みたい人には選びやすいでしょう。安いからといって、他の隅に比べて劣るというわけではありません。カルシウム含量は竹炭よりも多いといわれています。

赤松の炭

赤松の炭は脂をよく吸着するので、食事の脂分が気になる人にはおすすめです。

ヤシ殻の炭

竹炭よりも孔が多いため、吸着力が高い炭です。

炭以外の成分で選ぶ

炭だけの製品もありますが、炭以外にさまざまな成分を含んだものもあり、飲む目的に合った商品を見つけることができます。

ヒアルロン酸、プラセンタなど、美容のための成分

肌によさそうな成分が配合された商品は、炭できれいになりたい女性に人気があります。

カプサイシン

唐辛子を食べると体がポカポカしますが、それはカプサイシンが含まれているからです。カプサイシンはダイエットしたい人をサポートするサプリメントによく使われています。

カルニチン

カルニチンに運動能力を改善する働きを期待してアスリートが使うサプリメントなどに使われています。運動でダイエットを目指す人をサポートします。

酵素

野菜やくだものに含まれる酵素や麹菌などに含まれる酵素が含まれています。酵素により分解された栄養素は体内での吸収が早いため、吸収後スムーズに利用され美容やダイエットしたい人をサポートします。

乳酸菌、酪酸菌、麹菌

腸内細菌のなかで善玉菌といわれる乳酸菌と酪酸菌。麹菌は日本固有のカビで、発酵食品を作るときに使われます。腸内では食べ物の消化を助ける働きをします。腸活をしたい人におすすめです。

オリゴ糖、難消化性デキストリン、イヌリンなど水溶性食物繊維

オリゴ糖や水溶性食物繊維は、腸内にいる善玉菌の栄養になります。水溶性食物繊維は腸からの吸収を緩やかにし、血糖値の急激な上昇を抑えてくれるので、ダイエットしたい人にはうれしい成分です。

炭商品の形状で選ぶ

炭をどのように摂取したいかによって、商品の形状を選ぶこともできます。例えばドリンクにして飲みたい場合、ストレートで飲めるものがもっとも簡単です。料理に使いたい、食品とは別にサプリメント感覚で飲みたいなど、自分が望む飲み方ができる形状を選ぶのがおすすめです。

パウダー

粉なので、飲み物から料理まで、幅広く使えます。炭入りのドレッシングやクッキーなど、お料理好きな人には工夫を凝らしたレシピが作れるのでおすすめです。ヨーグルト、スムージー、青汁などに加えると、一味違った楽しみ方ができそうです。

カプセル

小分けして携帯しやすいので、時と場所を選ばず飲めるのが利点です。また粉が飛び散ることがなく扱いやすいのも魅力です。炭は黒いので、周りに飛び散ったり洋服についてしまうと目立ちます。それが嫌な人にはおすすめです。

液体

液体になっている炭もあります。そのまま飲むタイプと、薄めるタイプの商品があります。パウダーと違い飛び散りなどの問題はなく、扱いやすいです。ストレートのタイプがもっとも簡単で、手間要らずです。準備が面倒で続かないという人におすすめです。

炭は無味無臭です。飲み物や食品に入れても元の味に影響することはありませんが、ストレートで飲むタイプや薄めて飲むタイプの炭は味がないと飲みにくいので、フルーツの味やレモネードなど、飲みやすい味がついています。

パウダータイプは、炭だけで味をつけていないものから液体に溶かすと甘い味になるように甘味料やフレーバーをつけているものまであります。

味の有無は、用途や好みに合わせて選びましょう。

飲む炭のデトックス効果は限定的なので使い方が大事

活性炭は体内に取り込んでも物質を吸着することができるということは、医療で毒物の除去法に活性炭が使われていることからも、明らかと考えてもよいでしょう。しかし日常生活で活性炭を体内のデトックスに使うことに効果があるかどうかは、状況が異なるためにそのままスライドして考えることはできません。

なぜなら活性炭は毒物を選択的に吸着しているのではないからです。日常生活において活性炭をデトックスに利用するためには、食事により摂取した栄養素の吸着を防ぐ方法を考えなくてはならないでしょう。

栄養素の吸着を避けるためには、食後すぐに活性炭を摂取しないことです。食後1時間以上あけて、活性炭を摂取することで、ある程度防ぐことができそうです。
そう考えると、栄養価の高い食品の中に活性炭が入っている場合、果たして狙い通り体内の毒素を吸着してくれるかというと、疑問が残ります。

活性炭の吸着は可逆性で、pHの影響を受けるといわれています。消化管は胃から大腸まで、pHは酸性から場合によってはアルカリ性まで変化します。腸内の善玉菌が弱酸性に保つ働きがあるので、腸内環境が整っていると、吸着が安定すると考えられます。

以上をまとめると、デトックス効果に関しては、活性炭を摂取するタイミングが大事であり、食後1時間以上経過してからの摂取がおすすめです。
商品選びに関しては、効果というよりも継続のために重要だと思います。毎日楽しく、飽きずに活性炭を摂取するためには、どのような商品が最適であるかは、個人によって異なります。

商品の種類が多すぎて混乱してどれを選んでよいのかわからなくなるときには、今日紹介した商品の選び方を思い出してください。活性炭の種類、形状、活性炭以外の成分など、重点をどこに置くかを定めることで選びやすくなるので参考にしてください。

(参考文献)

*1: 炭の脱臭効果の科学的検証(2018年度【平成30年度】理数科 課題研究長野県伊那北高等学校)

*2: 炭の吸着のひみつ(林産誌だより1995年12月号 pp.5-9)地方独立行政法人 北海道立総合研究機構

*3: 消化管除染(2) 活性炭(一般社団法人 日本中毒学会)

 *4: 処方薬事典 球形吸着炭の解説(日経メディカル 日経BP)

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