青汁で便秘は解消?それとも便秘がひどくなるの?

20台~40台の女性を対象に行われた便秘に関する調査によれば、48.0%もの女性が便秘で悩んでいます。便秘は、肌荒れや肩こりの原因、生活の質を下げるだけでなく、寿命にも関係することが最近の研究によって分かってきました(*1)。便秘に悩んでいて、運動や食事、薬、サプリメントなど便秘に効果があると言われている色々な方法を試してみたけど一向に便秘が解消されないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。青汁は試してみましたか?この記事では、青汁を飲むとどんな健康効果が得られるのか?つらいお通じの悩みは解消できるのか?また、正しい青汁の選び方をご紹介します。

青汁を飲むと便秘がひどくなるのは本当?

インターネット上には「青汁を飲んだら便秘が解消された」という書き込みが多く見られますが、中には「青汁を飲み始めたら便秘になった」という書き込みもちらほら見られます。可能性としては否定できないところです。このことについては記事の後半で詳しくご説明するとして、まず青汁を飲むことで得られる健康効果について見ていきましょう

青汁の健康効果について

青汁とはケールや大麦若葉などの緑葉野菜の絞り汁です。健康にいいイメージはあるとしても実際にはどんな健康効果が期待できるのかよく分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは、青汁によって得られる健康効果の代表例を3つご紹介します。

血液中の中性脂肪への影響

食べ物に含まれる糖分や脂肪分は腸で吸収された後、その一部は肝臓に運ばれ中性脂肪になります。中性脂肪は血液中に流れ出し、体全体に運ばれて細胞のエネルギー源になります。余った中性脂肪は肝臓に蓄えられます。

中性脂肪は生きていくうえで欠かせないものですが、貯蓄量が多くなりすぎると体に悪影響をおよぼします。その代表例は動脈硬化です。中性脂肪とコレステロールが血管の内部にベタベタとくっつき始めると、そこへ様々な細胞が集まり、やがて固まって動脈硬化を引き起こします。

中性脂肪が正常値より高めの男女を対象として試験で、青汁の原材料であるケール粉末を3ヶ月間摂取してもらった結果、血液中の中性脂肪が減ったと報告されています(*2)。

血糖値への影響

糖分は細胞がエネルギーを作り出す原料なので、体に欠かせない栄養素です。しかし、何らかの原因で血液中の糖分(血糖値)が高くなりすぎると様々な悪影響が出ます。例えば、目の中の血管が破れ、目が見えにくくなる場合があります。また、高血糖状態がつづくと腎臓の血管がダメージを受け、腎臓の機能が徐々に悪くなります。さらに、神経がダメージを受けた結果、足の先や足の裏に痛みやしびれが出ることがあります。

血糖が高いことによって起こす悪影響を避けるためには、血糖をコントロールすることが必要です。血糖値が正常値よりも高い男女42名、糖分の原料となる炭水化物を含む食事とともにケールもしくはプラセボを飲んでもらったところ、ケールを一緒に摂取した方では、食後の血糖上昇が抑えられることが明らかになりました(*3)。

便秘改善の手助け

便秘は体に色々な悪影響を与えます。便秘になると腸内環境が悪くなり、悪玉菌が増殖します。悪玉菌が放出する有害物質は、おならを臭くしたり口臭の原因になるだけでなく、体に吸収されて細胞にダメージを与えます。また、腸は“第二の脳”と呼ばれるほど脳と深い関係にあり、腸内環境が乱れると自律神経の乱れにつながります。そのため、便秘はできるだけ早く解消しておきたいものです。

青汁の原料としてよく使われる大麦若葉の粉末を女子大学生8名に7日間飲んでもらったところ、8名全員の便の量が10%以上増え、1.5倍になった学生が3名もいたと報告されています(*4)。

食物繊維の摂取が便秘に良い働きを与える

それでは、青汁はどのようにして便秘を改善するのでしょうか。その効果には食物繊維が関係しています。青汁の便秘解消効果を説明する前に便秘になる仕組みをご紹介します。

便秘になる仕組み

便秘を引き起こす原因は様々で、複雑にからみ合っています。便秘を解消するためには原因を突き止めて、適切に対処する必要があります。

ストレス

精神的なストレスは便秘の原因になります。先ほども述べたように、腸は脳と深く関係しており、脳がストレスを感じると、腸にも影響が出ます。人の体の機能は、一部の臓器を除いて交感神経と副交感神経によってコントロールされています。強い精神的ストレスを受けると交感神経が興奮します。交感神経には胃腸の機能を抑える働きがあるので、腸の動きが悪くなり便が押し出されにくくなります。こうしてストレスは便秘を引き起こします。

運動不足

運動不足が便秘につながっていることがあります。排便するために腹筋に力を入れますが、腹筋の力が足りずに排便できないというケースがあります。デスクワークが主な仕事で、座っている時間が長い方は注意が必要です。

食物繊維不足

食生活の乱れによって便秘が生じていることもあります。私たちの腸には1000種類を超える腸内細菌が生息しており、コミュニティーを形成しています。そのコミュニティーは“腸内細菌叢”や“腸内フローラ”と呼ばれています。

腸内細菌は善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類に分類されます。善玉菌:悪玉菌:日和見菌の比率が2:1:7の時が正常で、何かしらの原因で善玉菌が減り、悪玉菌が増えると腸内環境が乱れます。

便秘の方では善玉菌が減り、悪玉菌が増えています(*5)。これを引き起こす原因は様々ですが、食物繊維不足は腸内環境の乱れを招く原因のひとつです。仕事が忙しくファストフードに頼りがちになったり、脂っこい料理を摂る量が多いなど食事が偏っていませんか?

厚生労働省が公開している「日本人の食事摂取基準」(2015年版)によると、1日の食物繊維の摂取目標量は成人女性で18g以上、成人男性で20g以上と定めています(*6)。しかし、「平成28年国民健康・栄養調査」の結果によると、1日あたりの平均摂取量は、30代女性で11.9g、40代女性で12.4g、50代女性で14.2gと、どの年代も目標量に届いていません(*7)。

青汁で便秘を解消するには?

このように便秘の原因は様々です。ストレスを溜めないように心掛けていたり、定期的に運動をして身体を鍛えているにもかかわらず便秘が解消されない場合、食物繊維不足を疑ってみましょう。

ひとくちに食物繊維といっても、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類があります。水溶性食物繊維は糖の消化吸収を緩やかにして血糖値の急激な上昇を抑えます。また、腸内細菌のえさになるので、腸内環境の改善に役立ちます。一方、不溶性食物繊維は水分を蓄える性質を持っているので、摂取すると糞便中の水分量が増え、糞便のかさが増します。また、水溶性食物繊維には腸の蠕動運動を活発化してくれる作用もあります。

青汁の原料によって量やバランスは異なるものの「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の両方の食物繊維を含んでいるものもあるので便秘解消効果が期待できます。

青汁による便秘は過剰摂取が原因

この記事の冒頭で、「青汁を飲み始めたら便秘になった」という例をご紹介しました。それには不溶性食物繊維が関係しています。

便秘のない健康な方の腸は活発に蠕動運動を行っています。そこへ不溶性食物繊維を摂取すると、便のかさが増し腸を刺激してくれるので、より排便されやすくなります。一方、腸の蠕動運動が弱いことが原因の便秘の場合、不溶性食物繊維によって便のかさがましても便が腸を進んでくれないので、同じ場所につっかえて、逆に便秘が悪化してしまうことがあります。

不溶性食物繊維ってどんなもの?

このように場合によっては便秘を悪化させてしまう不溶性食物繊維ですが、どのようなものが不溶性食物繊維なのか、どのような食材にふくまれているのかご紹介します。

不溶性食物繊維

  • セルロース
  • ヘミセルロース
  • リグニン
  • キチン

不溶性食物繊維を含む食材

  • とうもろこし
  • おから
  • 干し梅
  • 茹でたそば
  • こんにゃく
  • しいたけ
  • 玄米
  • ほうれん草
  • りんご

まずはご自身の原因を知り、ご自身に合った青汁を選ぶことが重要です。

青汁の正しい選び方

現在、青汁は100種類以上の製品があり、色々な企業から色々なタイプの青汁が販売されています。その中であなたに合った青汁を見つけ、長く続けることが大事です。どのような視点で商品を選べばいいのかご紹介します。

形状で選ぶ

青汁製品の形状は主に、液体タイプ、粉末タイプ、冷凍タイプ、錠剤タイプに分けられます。あなたのライフスタイルに合ったものを選ぶとよいでしょう。粉末タイプ錠剤タイプは持ち運びに便利です。特に錠剤タイプは気軽に摂取できるのがありがたいですね。

味で選ぶ

製品によって味も様々です。昔ながらの苦味の強いものや、抹茶、果汁、オリゴ糖などを加えて飲みやすくしたものもあります。いくら青汁の健康効果を分かっていても、味が好みに合わないと長く続けることができません。長期間、継続して続けられよう、好みの味の青汁を探してみてはいかがでしょうか。

乳酸菌入りも考慮に入れる

最近では、乳酸菌をプラスした青汁も増えてきています。食物繊維は便のかさ増しをしたり、乳酸菌のえさになったりして健康効果が期待できますが、乳酸菌も合わせて摂ることで、腸内環境をよりよくできます。そのため、乳酸菌入りの商品を考慮に入れてみてはいかがでしょうか。

正しい青汁の飲み方や飲む量も考えましょう

青汁には色々な栄養素が入っていますし、薬ではないので基本的にはいつ飲んで頂いてもかまいません。ただ、期待する効果が決まっているなら、飲むタイミングを最適化しましょう。

便秘の解消が目的の場合

便秘解消を目的に青汁を飲む場合、朝起きてすぐがおすすめです。起きてすぐの時はおなかに何も入っておらず空腹の状態です。そこへ何か飲食物が入ってくると、胃腸に刺激が入り運動が開始されます。

美容効果が目的の場合

美肌効果を期待する場合は、夜に飲むのがおすすめです。夕食と一緒に飲んでも、食後に飲んでもよいでしょう。肌のリズムは眠っている間に活性化します。これに合わせてビタミンなどの栄養素を摂っておくと肌のリズムを助けてくれます。だからといって、夜更かししては意味がありません。夜更かしは生活リズムが乱れると共に、肌のリズムにも悪い影響を与えるからです。青汁を飲んで、夜更かしを避けて、ぐっすり眠ることで美容効果が期待できます。

血糖値が気になっている場合

血糖値の上昇を抑えたいと考えている方は食事前に青汁を飲んでおくと良いでしょう。これは、青汁に含まれる食物繊維が食事中の糖分の吸収を緩やかにしてくれるためです。また、コレステロールの吸収も抑えてくれるので、中性脂肪が気になっている方にも、青汁を食事前に飲んでみてはいかがでしょうか。

青汁を飲む時の注意点は?

青汁は各商品が推奨してる量を守って飲みましょう。一気に大量に飲むことは避けてください。青汁には不溶性食物繊維が含まれているので、一気に大量の青汁を飲むと、逆に便秘が悪化する危険があります。適切な量を続けることが大事です。

こんな方は青汁を控えましょう

ここまで紹介してきたように、青汁は食物繊維を豊富に含んでいるためお腹をスッキリするが期待できますが、青汁を摂るのを控えたほうが良い方がいます。

腎臓のご病気をお持ちの方は、青汁を控えましょう。青汁はカリウムを多く含んでいます。カリウムは主に腎臓から排泄されますが、腎臓が悪いとカリウムが排泄されず、カリウムの血中濃度が上昇し、悪心、嘔吐などの胃腸症状、しびれ感、知覚過敏、脱力感などの筋肉・神経症状、不整脈などが現れます。腎臓が悪い方が青汁を飲んで高カリウム血症となり救急車で搬送された例も報告されています(8)。

また、「ワーファリン(成分名:ワルファリンカリウム)」という薬を飲んでいる方も青汁を飲むのは控えましょう。この薬はビタミンKの働きを抑えることで、血液が固まるのも抑えるのが目的で飲む薬です。青汁にはビタミンKが多く含まれているので、ワーファリンの効果が弱まってしまいます。

まとめ

便秘の原因は複雑です。あなたの便秘の原因は何でしょうか。日々、精神的なストレスを感じているのであれば、それを軽くする方法を検討すべきです。精神的ストレスを軽くできれば腸の調子も良くなる可能性があります。排便を促すために適度な運動を取り入れたり、水分を摂取してみてもダメという方は、青汁を試してみましょう。青汁にバランスよく含まれる水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がお通じを改善してくれるかもしれません。

参考資料

(*1)Chang JY, Locke GR 3rd, McNally MA, Halder SL, Schleck CD, Zinsmeister AR, Talley NJ. Impact of functional gastrointestinal disorders on survival in the community. Am J Gastroenterol. 2010 Apr;105(4):822-32.

(*2)ケールの血中中性脂肪低減効果 –無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験-、薬理と治療 Volume 44, Issue 9, 1337 – 1346 (2016)

(*3)Kondo S, Suzuki A, Kurokawa M, Hasumi K. Intake of kale suppresses postprandial increases in plasma glucose: A randomized, double-blind, placebo-controlled, crossover study. Biomed Rep. 2016 Nov;5(5):553-558.

(*4)池口 主弥, 有浦 由紀, 高垣 欣也, 石橋 千和, 稲永 亜紀子, 片山(須川) 洋子, 大麦若葉末を摂取した健常成人女性の糞便湿重量および糞便内細菌叢への影響, 日本食物繊維学会誌, 2004, 8 巻, 2 号, p. 93-103

(*5)Zhu L, Liu W, Alkhouri R, et al : Structural changes in the gut microbiome of constipated patients. Physiol Genomics 46 ; 679―686 : 2014

(*6)日本人の食事摂取基準 |厚生労働省

(*7)平成28年国民健康・栄養調査報告|厚生労働省

(*8)道下 貴弘, 大井 康史, 山縣 英尋, 高橋 充, 白澤 彩, 伊巻 尚平, 竹内 一郎, 健康食品の青汁を摂取し, 高カリウム血症にて搬送された1例, 日本救急医学会関東地方会雑誌, 2020, 41 巻, 2 号, p. 329-332

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