【ミドリムシ入り?】ユーグレナ青汁について3分で解説
ユーグレナは産業的に利用価値が高く、食品以外にもバイオプラスチックなどに利用されています。でも一体ユーグレナって何?と思いますよね。「ユーグレナ(ミドリムシ)」なんて書いているのを目にした人がいるかもしれません。ミドリムシってどんなムシ?と思ったでしょうか。この記事ではユーグレナとは、ミドリムシとは何で特に食品業界において、どのような存在なのかについて詳しく解説します。
ユーグレナとは?
「ユーグレナ」という言葉を見たり聞いたりしたことはありますか?ユーグレナは青汁などの健康食品に使われていることもあり、目にした人は多いかもしれません。
でもユーグレナって、何だと思いますか?
ユーグレナは太古の昔から存在する藻の仲間
ユーグレナ(Euglena)はミドリムシの学名です。なんと5億年以上も前に生まれた原生生物なのです。原生生物とは一つの細胞からなる生物(単細胞生物)で、動物・植物・菌類のいずれにも属さない生物と定義されています。
ユーグレナは1種類だけではなく、100種類以上もの種類が存在しています。その中でも青汁などの健康食品によく使われている種類のユーグレナは「Euglena Gracilis(ユーグレナ・グラシリス)」です。
ユーグレナとはどんな生き物?
ユーグレナの和名がミドリムシです。ミドリムシはムシ(虫)という名前がついていますが、虫ではなくコンブなどの藻類に近い「藻」の仲間です。体長は0.03〜0.5mmで、肉眼では小さすぎて見ることができません。*1 この小さなユーグレナは、とても興味深い生き物なのです。以下、詳しく説明します。
植物としての機能を持つユーグレナ
ユーグレナは「ミドリ」ムシという呼び名の通り、身体は緑色をしています。その理由は植物のように、体内に葉緑体を持っているからです。ユーグレナは植物のように光合成を行い、必要な栄養分を自分で作り出すことができます。
動物としての機能を持つユーグレナ
ユーグレナは「鞭毛」と呼ばれる尾のような細胞の器官を持っていて、鞭毛を動かして光のある方向へ向かって行くことが可能です。また植物と違い、細胞を変形させることもできる点が動物のようでもあります。*2
植物と動物両方の機能を持つユーグレナを摂取する意義
通常植物の細胞には細胞壁があり、人間は細胞壁を構成するセルロースを消化する酵素を持っていないため、野菜の細胞内に含まれるアミノ酸などの栄養素は吸収できません。そのため私たちは、野菜を食べてもセルロースに囲まれた部分は食物繊維としての働きしか得られないのです。
しかし植物と違って身体を動かすことができるユーグレナには硬い細胞壁がないため、人間ユーグレナの細胞内にあるアミノ酸や脂肪酸などを摂取することができます。
さらに植物と動物の機能を併せ持つユーグレナの細胞内には、動物・植物が生きていくのに必要な栄養分が揃っています。つまり野菜類だけでは補給できなかった動物性の栄養素もユーグレナには含まれているということです。
ユーグレナに含まれる栄養素は?
植物と動物両方の機能を持つユーグレナの細胞には、どんな栄養素が含まれているのでしょうか。ユーグレナは光合成をすることができるため、太陽の光からエネルギー源になる物質を作り、生きるために必要なさまざまな物質を外界から取り込んだり、細胞内で合成したりしているはずです。
ユーグレナの脂質成分
ユーグレナの細胞内の成分のうち20〜25%が脂質成分で、その中の35〜40%が多価不飽和脂肪酸で構成されています。必須脂肪酸であるリノール酸・リノレン酸・アラキドン酸以外に、に EPA(エイコサペンタエン酸),DHA(ドコサヘキサエン酸)も含まれています。
多価不飽和脂肪酸は植物性の脂質に多く含まれていて、リノレン酸やEPA・DHAはオメガ3とも呼ばれる脂質で、血圧を下げたり動脈硬化を抑え、LDLコレステロールを減らすなどの効果があるといわれています。*3
ユーグレナのビタミン類
ユーグレナはビタミンの全13種類を含有しています。ビタミン13種の中で、ユーグレナはビタミンB1とB12を合成することができませんが、ユーグレナ自身もB1とB12は必要な栄養素であることから、外から取り込んだビタミンB1とB12を細胞内に蓄積します。*4
ユーグレナのその他の栄養素
上記の栄養素の他、ユーグレナは多くのアミノ酸・ミネラルも含みます。アミノ酸に関しては、必須アミノ酸がバランスよく含まれていることを示すアミノ酸スコア*5が80以上あり、栄養価に優れていると評価されています。*4
ユーグレナの研究〜健康効果への期待
ユーグレナの栄養価に注目が集まり、食品への応用可能性について大学や企業が研究を進めていて、さまざまな学術雑誌に研究結果が掲載されています。その中からいくつかを紹介したいと思います。
コレステロールの吸収抑制作用
ユーグレナは細胞内に葉緑体を持ち、植物のように光合成を行います。植物が作るデンプンは、その植物の成長のための栄養になります。ユーグレナも同じように栄養を作り出すのですが、合成するのはデンプンではなくパラミロンと呼ばれる物質です。パラミロンはデンプンと同じくグルコースからなる多糖類ですが、結合の仕方が異なるため化学的性質も異なります。
ユーグレナを摂取させたラットに対して、食餌から取り入れたコレステロールの動きを調べたところ、ユーグレナを摂取していないラットに比べてコレステロールの体外排泄量が著しく増加していることがわかりました。
この現象はパラミロンの影響であると考えられたので、同様の実験をユーグレナが合成したパラミロンで行なってみたところ、同様にコレステロールの体外排泄量が増加するという結果が得られました。
このことからユーグレナに含まれるパラミロンに、食事で取り込んだコレステロールの吸収抑制作用があることがわかりました。これは、食物繊維がコレステロールの吸収を抑制する働きがあるのと同じように機能するものと考えられています。*6
なお、この研究はラットを用いたものであり、ヒトでの試験は行なっていないため、そのままヒトへの効果に当てはめるためには、更なる研究が必要になります。
脳血管疾患の予防に期待
血圧が高くなるのは、アンギオテンシンというホルモンの一種が分泌されるためですが、いくつもの酵素が絡んでいて、一連の反応系を「レニン-アンジオテンシン(RA)系」*7といいます。このRA系にアンジオテンシン変換酵素(ACE)という酵素があり、アンギオテンシンⅠをアンギオテンシンⅡに変換する働きをします。
アンギオテンシンⅡは動脈を収縮させ、血圧を上昇させます。血圧が高い状態が続くと、血管の内側が傷つきやすくなり、次第に血管が厚くなり柔軟性がなくなって硬くなります。*8 このように血管が硬くなることを動脈硬化といい、脳梗塞や脳出血にかかりやすくなります。
そこで血圧を下げるために、アンジオテンシン変換酵素(ACE)の働きを抑える「ACE阻害薬」を使います。この薬を使うことで、血圧を下げると同時に血管も守ることができます。*9
ユーグレナの研究で、ユーグレナにはACE阻害薬に似た働きがあることがわかりました。ユーグレナを混ぜた飼料を食べた高血圧モデルラット(SHRSP)で、対照群と比較して血管組織内のACE活性が有意に低い数値を示しました。ユーグレナの結果は降圧剤として知られるカプ トプ リルと同程度でした。
ユーグレナは血清中のACE活性は対照群と変わらなかったため、血圧は下がりませんでした。しかし血管組織内のACE活性を下げる効果がみられたことから、血管壁肥厚の改善に働く可能性を秘めていると考えられています。
この研究もまた、ラットを用いたものであり、ヒトでの試験は行われていないため、あくまでもヒトへの応用の可能性が示されたという結果です。
ユーグレナの継続摂取で脳の活動に寄与
この記事では動物を使った試験で得られたユーグレナの働きについて紹介してきましたが、ヒト臨床試験で、ユーグレナを継続摂取して得られた結果もわかっています。
●脳神経細胞の維持・増加に関わるタンパク質が増える
脳神経細胞の維持・増加に関わる物質は脳由来神経栄養因子(BDNF: Brain-derived neurotrophic factor)*10 と呼ばれるタンパク質です。ユーグレナの継続摂取で、BDNFが上昇することを確認しました。うつ病やアルツハイマー型認知症になると、BDNFが減少することがわかっています。
●運動に関する脳の機能が向上
Cognitrax(コグニトラックス)というパソコンを使った認知機能検査で、言語・視覚・情報処理能力などのテストを行いました。ユーグレナを長期摂取すると、脳の認知機能速度と運動速度がプラセボを摂取した場合よりも有意に向上する結果が得られました。
●心の健康スコアがアップ
ユーグレナを継続摂取した人に対して、生活の質(QOL)に関する36項目の質問を行い主観的に回答してもらいました。その結果、ユーグレナ摂取前のスコアよりも継続摂取している時の方が高いスコアを維持しました。スコアはプラセボ群と比較して、有意に改善する結果となり、ユーグレナの継続摂取により、心の健康スコアがアップしたといえます。
*11
ユーグレナの光合成でエコなアミノ酸生産の可能性
ユーグレナそのものの摂取による健康効果以外に、ユーグレナが持つ光合成の働きで、環境にやさしいアミノ酸生産が可能になるかもしれません。
明治大学とユーグレナ株式会社の共同研究により、ユーグレアでアミノ酸生産ができることを示唆しました。同研究グループは、ユーグレナの光合成を利用して温室効果ガスの一つである二酸化炭素を取り込み、ユーグレアを増殖させた後に発酵条件(暗・嫌気条件)下に置くと、細胞外にアミノ酸などの代謝産物38種類を放出することを発見しました。*12」
健康と環境・ユーグレナで広がる可能性
ユーグレナは栄養価が高く栄養補給に優れた食材ともいえ、青汁などでも使われています。またユーグレナそのものを摂取するだけではなく、私たちの身体を作る上で欠かせないアミノ酸を、ユーグレナの光合成を利用して生産する技術も開発できれば、環境と身体に優しい食品開発が可能になるでしょう。
参考文献
*1:スリーエム仙台市科学館
*2:生命誌研究館
*3:厚生労働省
*4:公益社団法人 日本ビタミン学会
*5:日本食品分析センター
*6:一般社団法人 粉体工学会
*7:バイエル薬品株式会社
*8:公益財団法人 大阪府保健医療財団 大阪がん循環器病予防センター
*9:日経BP
*10:Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology
*11:ユーグレナHealthcare Lab
*12:株式会社ユーグレナ