菌活ダイエットのメカニズムと正しい取り入れ方・副作用など解説

近年ダイエット法の一つとして、菌活ダイエットが注目されていますが、菌活について正しく理解していますか?菌活ダイエットのメカニズムや菌活で利用する食品のことを知って、安全に楽しく菌活ダイエットを続けたいですね。
今回は菌活と腸活の違いや、正しい菌活の方法について紹介します。また菌活を行うメリットやデメリットに触れ、デメリットを最小限にするにはどうすれば良いかについても考えます。

菌活とは

菌活とは、体に良い菌を積極的に摂り入れて、腸から健康を目指す活動のことをいいます。「菌」といっても地球上には数え切れないほどの「菌」が存在します。目に見えないほど小さなものなので、はっきりとしたイメージを持ちにくいかもしれませんが、菌活という時の「菌」とは細菌と真菌のことを指しています。
細菌と真菌の違いをはっきり区別している人は、それほど多くないかもしれません。両者の違いは、「菌活」と「腸活」という言葉の違いとも関係しています。

菌活と腸活の違い

腸活とは腸内フローラを整える活動のことをいいます。腸内フローラは腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)ともいい、腸内細菌の集まりを意味します。つまり腸活と菌活は同じ腸の健康を考える活動ですが、腸活は「細菌」のことを中心に考えています。
一方菌活は、細菌だけではなく真菌も含めて考えている点が異なります。真菌とはカビの総称で、体に良い真菌の代表格は麹菌です。酵母菌は真菌に含まれていますが、カビとは別に分類されています。菌活の「菌」は細菌と真菌を含むので、菌活は腸活を含む概念ということになります。

菌活ダイエットとは

体に良い菌を摂取することで腸を健康にするのが菌活ですが、腸内の善玉菌が元気になれる環境は、ダイエットにも都合が良いのです。以下、菌がなぜ腸内細菌を増やすのか、なぜ菌活がダイエットに良いのかについて解説します。

菌活ダイエットのメカニズム

菌活は乳酸菌などの細菌以外に酵母や麹などの真菌の働きも利用します。なぜ真菌かというと、酵母や麹には、善玉菌を増やす働きがあるからなのです。麹はタンパク質やでんぷんを分解する酵素(アミラーゼ、プロテアーゼ)を作ります。*1 酵母も酵素アミラーゼを作り、でんぷんを分解して善玉菌の栄養になるオリゴ糖を生成します。*2
また麹菌が作る酸性プロテアーゼには、善玉菌を著しく増やす働きがあることをラットを使った研究で明らかになっています。*3

善玉菌が元気に活動できる腸内環境では、善玉菌によるビタミン合成が行われます。産生されるビタミンは、B1・B2・B6・B12・K・ニコチン酸・葉酸で、ビタミンK以外は全てビタミンB群です。*4ビタミンB群は、体内の糖質・脂質・タンパク質などのエネルギー代謝で利用されます。つまり腸内の善玉菌が活発であれば、代謝がスムーズに進むためダイエット効果を得られやすくなります。

それに加えて、麹菌自身の代謝によってビタミンB群やミネラルが作られ、*1 体内に吸収されると必要な場所に運ばれて利用されます。
酵母はビタミン、ミネラル、アミノ酸、食物繊維を多く含みます。*5  食物繊維は糖質の吸収を抑え、血糖値の上昇を緩やかにします。血糖値の急激な上昇を防ぎ、インスリンの分泌を防ぐことで、糖質を脂質に変えて蓄積する流れを防ぎます。*6  また水溶性食物繊維は、糖質や脂質を包み込むため過剰な分は体外に排出するため、ダイエットの強い味方です。

菌活ダイエットの方法

菌活ダイエットの方法は、主に食材を使う方法になります。代表的な菌活ダイエット法を紹介します。

ヨーグルトで菌活ダイエット

毎日の食事時や間食に、ヨーグルトを取り入れる方法です。ヨーグルトは乳製品の中ではもっとも利用されているアイテムの一つで、種類もとても豊富です。乳酸菌の種類がパッケージに明記されているものや、何らかの作用や効果を持つヨーグルトなどがあります。例えば便通改善などの効果が明記された機能性表示食品、整腸作用を謳った特定保健用食品などです。
機能以外にはフルーツ入りのものやプレーンタイプなど、味のバラエティも豊富です。プレーンタイプのヨーグルトはデザートや間食時にフルーツと一緒に食べる他、甘くないため料理にも使いやすく、用途が広いヨーグルトです。
甘いヨーグルトは糖分の摂りすぎにならないよう気をつけましょう。

味噌で菌活ダイエット

味噌には麹菌が使われています。味噌は基本的に大豆、米麹、塩で作りますが、市販品の味噌は添加物などが含まれていますので、購入の際には原材料もチェックしてお好みの味噌を使いましょう。
添加物などに敏感な方は、ぜひ自宅で味噌作りをしてみて下さい。原材料から自分好みで決められますし、自分で作った味噌への愛着は、菌活にもプラスに働きます。
味噌を手軽に摂取するには、お味噌汁がおすすめです。お味噌汁に野菜やわかめなどを入れると、食物繊維も同時に摂取できます。

きのこで菌活ダイエット

実はきのこも麹や酵母と同じ真菌に分類されています。形が全然違うので信じられないかも知れませんが、細胞の構造や増え方は同じなのです。*7
そしてきのこもまた、菌活ダイエットに利用したい食材です。きのこには食物繊維が豊富に含まれています。食物繊維のうち水溶性食物繊維に含まれるβグルカンは、血糖値降下作用があるといわれています。血糖値が上がると体内で血糖値を下げる働きのあるインスリンが分泌されます。このインスリンは血糖値を下げるために糖を脂肪に変えます。その結果皮下脂肪が増えてしまうことになるので、きのこに含まれるβグルカンの血糖値降下作用はダイエットに効果的です。*8
きのこはさらに低カロリーの食材で、生のきのこ100gあたり約20kcalしかありません。*9 食物繊維が豊富でカロリーも少なく、スーパーでも季節を問わず手に入り価格も安定しているので、普段の料理に積極的に使いたい食材の一つです。

甘酒ダイエット

甘酒には麹で作るものと酒粕で作るものがあります。それぞれダイエットに良い点がありますので、解説します。

米麹で作る甘酒はアルコールが含まれていませんので、お子様やアルコールが苦手な方でも飲むことができます。米麹で作る甘酒はビタミンB群やでんぷん分解物であるぶどう糖やオリゴ糖も含まれています。

酒粕で作る甘酒はアルコールが含まれているので、アルコールが飲めない人にはお勧めできませんが、とても優れた栄養が含まれています。
酒粕は日本酒を作る過程でできるもので、蒸した米に麹菌の他に酵母や乳酸菌を加えて発酵させることで、ペプチドやアミノ酸など米麹よりも多種多様な栄養が含まれています。

どちらの甘酒でも菌活ダイエットに有効なので、お好みの方または両方をその日の気分や体調にあわ
せて使い分けても良いでしょう。しょうがや豆乳など、アレンジも可能で自分だけのレシピを作る楽しみもあります。

キムチで菌活ダイエット

キムチには乳酸菌がたくさん含まれています。キムチが特にダイエットにおすすめなのは、乳酸菌はもちろんのこと、トウガラシに含まれる発汗作用のあるカプサイシンと野菜が摂取できるという点です。
忙しい朝、つい簡単な食事で済ませてしまいがちですが、そんな時にはご飯とお味噌汁にキムチはいかがでしょう。一度にたくさん食べる必要はなく、毎日少し食べるだけで良いのです。

納豆で菌活ダイエット

納豆菌も腸内の善玉菌を元気にする働きがあります。ビタミンB2も多く含む食品であり、エネルギー代謝をスムーズにしてくれるので、運動を取り入れることで脂肪燃焼効果も期待できます。納豆の原材料は大豆なので、食物繊維も豊富です。調理する手間もいらないので、おかずを一品増やしたい時にも便利です。

菌活ダイエットのメリット

菌活ダイエットの良さはわかっていただけたかと思いますが、ここで菌活ダイエットのメリットをまとめてみます。

腸の活動により便通が戻る

菌活により善玉菌が元気になり、腸内細菌のバランスが整うと、腸の活動が正常化します。菌活で摂取する食物繊維の働きや、適度な運動で腸のぜん動運動により、定期的な便通がくるようになるでしょう。

代謝がアップする

麹や酵母、腸内の善玉菌は、ビタミンB群を作り出します。ビタミンB群は、体内で糖質、脂質、タンパク質をエネルギーに変えるために必要な栄養素です。菌活によりビタミンB群を体内に吸収すると代謝がスムーズに行われるため、運動による効果も期待できそうです。

健康的に体重を落とせる

脂質や糖質を避けるなど、偏った食事になりがちなダイエットですが、菌活ダイエットの食事は特定の食べ物や栄養素を制限するものではないため、バランスよく栄養を摂取することができます。腸内細菌のバランスが整い、排泄や代謝が滞ることなくスムーズになります。体重を落とすためには適度に運動することが必要ですが、代謝がよくなるため運動による効果も感じやすくなり、健康的に体重を落とすことができます。

肌トラブルが減る

便秘になると腸内の悪玉菌が有毒物質を放出し、それが腸から吸収されて全身に運ばれます。肌荒れはその有毒物質が刺激になって起きると考えられています。有毒物質は肌のターンオーバーにも悪影響を及ぼします。菌活で便秘が解消すると有毒物質が減り、肌は正常に機能し始めて肌荒れが起きにくくなります。

菌活ダイエットのデメリット

菌活をすると体に良いことばかりではなく、注意すべきこともあります。菌活ダイエットのデメリットをいくつか紹介します。

食べすぎ

菌活に一生懸命になりすぎて、甘酒やヨーグルトなどの発酵食品・乳製品などを食べすぎることがあります。甘酒は糖分を含むので、飲みすぎないようにしましょう。また、ヨーグルトなどの乳製品は脂質が含まれています。適量の脂質は必要ですが、ヨーグルトは特に食べやすいため、食べ過ぎには注意が必要です。
味噌や塩麹なども菌活にはよく使われますが塩分が含まれているので、これらも摂りすぎには注意しましょう。

ストレス

菌活ダイエットを成功させようとがんばりすぎると、それがストレスになってしまう可能性があります。ストレスを強く感じると、コルチゾールというホルモンが分泌されます。コルチゾールは別名ストレスホルモンといい、脂肪を溜め込む作用があるため、肥満と関わりがあるといわれています。*10
菌活ダイエットで成果を出すには、ストレスにならないように楽しく行うことも大切です。

調理に手間がかかる

より安全な食材を使うために味噌を手作りしたり、塩麹を作って料理に使ったりなど、手間をかけるようになることもあるでしょう。忙しい時など、手間がかけられないことがストレスになる可能性もあります。

経済的負担

菌活のための食品選びは、こだわるほどに経済的負担が増すと思います。菌活は続けることも大切なので、負担が重くならないようバランスを考えることも必要になるでしょう。

がんばりすぎない菌活も大事

菌活を負担やストレスなく続けていくためには、時には少しだけ手を抜いてみるのも良いかもしれません。楽しく長く続けられることも大事なので、食品を使った菌活とサプリメントや健康食品で手軽にできる菌活とを組み合わせるのも良いと思います。
がんばりすぎてストレスをためないためにも、あまり厳密に考えすぎないよう、自分なりの適度な加減調整の仕方を見つけることが、菌活成功の秘訣といえそうです。

(参考文献)

*1: こうじに関する基礎知識 | 宝酒造(宝酒造株式会社)

*2: 特集 澱粉研究の潮流その1(応用糖質科学 第1巻 第1号 17-18)

*3: 【研究成果】米麹菌の酸性プロテアーゼを食べると腸内善玉菌が増加! | 広島大学

*4: 腸内細菌と健康 | e-ヘルスネット 厚生労働省

*5: 酵母ってどんなもの? | サントリー健康情報レポート(サントリー健康科学研究所)

*6: 太りにくい食べ方のコツ | TANINA

*7: カビとキノコの密な関係 | 衛微研(株式会社衛生微生物研究センター)

*8: 技術解説「β-グルカンについて」 | あいち産業科学技術総合センター

*9: きのこ類 | 食品成分データベース(文部科学省)

*10: 内分泌疾患に続発する肥満症(日本内科学会雑誌 104巻 4号 690-691)

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