【ビタミンEの効果効能】多く含む食品・摂取量基準・研究情報について

炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維、ファイトニュートリエント。これらは7大栄養素とよばれ、人の成長や健康維持には欠かせない栄養素である。
その中でもビタミンは身体の生理機能の重要な役割をになっていますが、人は体内で生成することができず食事から摂る必要があります。
最近ビタミンEは化粧品にも含まれることも多く、美容系に意識がある方は馴染みがあすのではないでしょうか。また、抗酸化作用と聞いてビタミンEのことだ!と思う方も少ないでしょう。
そんな様々な分野で活躍しておりますビタミンEについてまとめてみました。
ビタミンEとは

ビタミンEには、構造式の違いから4種のトコフェロールと4種のトコトリエノールの合計8種類の同族体が知られており、クロマノール環のメチル基の数により、α-、β-、γ-及びδ-体に区別されています。
人の体内の血液及び組織中に存在するビタミンE同族体の大部分がα-トコフェロールであり、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、このα-トコフェロール量(mg)をビタミンEの量としています。
α-トコフェロールは体内で最も多いだけではなく、生理作用が最も強く、α-トコフェロールの生理作用を100とした場合、β-トコフェロールの生理作用は40、γ-トコフェロールは10、δ-トコフェロールは1とされています。
もともとビタミンEは1920年頃に不妊のネズミの実験によって発見された脂溶性ビタミンです。別名であるトコフェロールとは、tocos(子どもを産む)、phero(力を与える)、ol(水酸基をもつ化合物の総称)という意味からきており、最初は妊娠時に必要な栄養素として注目されておりました。
しかしその後、ビタミンEのもつ強力な体のサビ取り効果(抗酸化作用)が注目されるようになり、今では若返りビタミンなどと呼ばれるようになっています。
ビタミンEの効果効能・体内における作用や役割

若返りビタミンとして注目されているビタミンEの効果効能・体内における作用や役割についてまとめてみました。
脂肪の酸化防止
いわゆる抗酸化作用と呼ばれる効果になります。
人は毎日酸素(空気)を吸い、その酸素が体内で様々な生命活動に重要な役割をになっていますが、そのうちの約2%が体内で「活性酸素」と呼ばれるものになるといわれています。
活性酸素とは、「ほかの物質を酸化させる力が非常に強い酸素」のことです。活性酸素は殺菌力が強く、体内では細菌やウイルスを撃退する役目をしています。しかし、活性酸素が増えすぎると、正常な細胞や遺伝子をも攻撃(酸化)してしまいます。
このように体にとって良い面も悪い面がある増え過ぎた活性酸素を酸素に戻す力を抗酸化作用と良い、ビタミンEにはその抗酸化作用があります。
血流改善
ビタミンEは、血管の収縮を促す神経伝達物質の生成を抑えて毛細血管を広げる働きがあり、血流を改善する効果が期待されています。さらに、過酸化脂質を分解して血液中に粘度のある物質が流れ出すのを防ぎ、血液をサラサラに保ちます。
ビタミンEはこの働きにより、末梢血管の血行障害が原因と考えられる肩こり、腰痛、冷え性、頭痛、しもやけ、痔などの症状を改善すると考えられています。
また、ビタミンEの血流改善効果によって、全身に血液が供給されることで細胞の新陳代謝も活発になり、皮膚のカサカサ感を改善したり、肌に色つや・ハリが出るといった効果も期待されています。
さらにビタミンEは、紫外線による害から肌を守る働きがあり、シミやそばかすにも効果的です。ビタミンEは皮膚に浸透することもできるため、ビタミンEを配合した化粧品も多く存在し、美容業界では注目の栄養素となっています。
生殖機能維持
ビタミンEは副腎や卵巣にも蓄えられ、女性ホルモンや男性ホルモンなどを含むホルモンの代謝に関わっています。性ホルモンなどの生成や分泌の調整をする脳下垂体に働きかけて生殖機能を維持し、月経前のイライラ、生理痛、生理不順などを改善する効果があります。
また、女性は閉経を迎える時期になると、女性ホルモンの分泌が減少してホルモンバランスが大きく変わり、肩こり・めまい・冷え・のぼせ・息切れ・手足のしびれなど更年期症状が現れます。ビタミンEは女性ホルモンのひとつである黄体ホルモンの材料で、この時期に食品やサプリメントでビタミンEを多く摂取すると更年期症状を軽減することができます。
最近では、ビタミンEと排卵誘発剤を併用すると妊娠率が上がるという報告もあり、不妊治療や更年期障害の治療に使用されることもあります。男性もビタミンEの投与によって、精子数の増加や精力を高める効果があるといわれています。
ビタミンEは体に必須な栄養素
抗酸化作用が有名なビタミンE。近年は美容関係でも注目されており、人が健康でい続けるのに必要な栄養素と言えるでしょう。
ビタミンEの欠乏症(症状/対策)

ビタミンEの大事さは伝わったかと思いますが、もしビタミンEが欠乏してしまうとどうなってしまうのでしょうか。
ビタミンEは脂溶性ビタミンであり、成人は脂肪組織に多量のビタミンEを蓄えることができ、欠乏症が起こりにくいと言われています。
しかし、ビタミンEはわずかな量しか胎盤を通過しないため、新生児が体内に蓄えているビタミンEの量は比較的少量です。そのため、新生児(特に未熟児)ではビタミンE欠乏症のリスクが高くなると言われてます。しかし、乳児は通常母乳や市販の人工乳から十分な量のビタミンEが得られるため、年齢が増えるにつれてリスクは低下します。
症状
小児では、反射の遅延、歩行困難、協調運動障害、位置覚の喪失、筋力低下などがあります。
また、ビタミンE欠乏症は、赤血球が壊れる溶血性貧血を引き起こす可能性があります。
ビタミンE欠乏症の未熟児には、この深刻な病気のリスクや脳内出血や眼の血管の成長異常(未熟児網膜症)がみられることもあります。
治療
ビタミンE欠乏症の治療としては、ビタミンEのサプリメントを服用することになります。
また、未熟児には、病気が発生するのを予防するためにサプリメントが投与されることもありますが、正期産の新生児のほとんどでは、母乳や市販の人工乳で十分な量のビタミンEが得られるため、サプリメントは必要ないと言われています。
ビタミンEの過剰症(症状/対策)
一方、多くの成人では、比較的多量のビタミンEを数カ月から数年摂取しても明らかな害は報告されていません。
しかし、高用量のビタミンEによって出血のリスクが高まる可能性があり、特にワルファリンなどの抗凝固薬、血栓をできにくくする薬を服用している場合でよくみられます。稀に、非常に高用量のビタミンEを摂取している成人で、筋力低下、疲労、吐き気、下痢がみられることがあります。
しかし、日常生活でそれほど高用量のビタミンEを摂取することはなく、過剰症の心配はほとんどないと言われております。
ビタミンEの研究情報

様々な分野で必要とされているビタミンEですが、近年多くの研究が行われているので一部紹介します。
心臓病の予防
海外で行われた大規模観察研究によって、ビタミンE摂取の増加に伴って心筋梗塞や心臓病による死亡のリスクが男女ともに低下することが示されています。
ビタミンE摂取量を調べ、心臓病と診断された人数もしくはそれが原因で死亡した人数を長年にわたって追跡調査した研究になります。
しかし、一部の研究ではビタミンEは効果がないとも言われており、現在も多くの研究が進められております。
参考文献
Sesso HD, Buring JE, Christen WG, et al. Vitamins E and C in the prevention of cardiovascular disease in men: the Physicians’ Health Study II randomized controlled trial. JAMA. 2008;300(18):2123-2133.
Traber MG, Frei B, Beckman JS. Vitamin E revisited: do new data validate benefits for chronic disease prevention? Curr Opin Lipidol. 2008;19(1):30-38.
免疫機能を高める
α-トコフェロールが加齢に伴って衰える特定の免疫応答を高めることが知られている。例えば、一日一定量の合成α-トコフェロールを数か月間摂取した高齢者は、B型肝炎ワクチンと破傷風ワクチンに応答して抗体産生が増大することがわかった。
しかし、インフルエンザのような感染症にも抵抗性を示すかどうかはわからなかった。また、風邪のような上気道感染症にかかる確立は有意に低下したが、下気道の感染症には効果がないと報告された。ビタミンE摂取が高齢者において風邪などの感染症の予防につながるかについてはさらなる研究が必要と言われています。
参考文献
Meydani SN, Meydani M, Blumberg JB, et al. Vitamin E supplementation and in vivo immune response in healthy elderly subjects. A randomized controlled trial. JAMA. 1997;277(17):1380-1386.
Han SN, Meydani SN. Vitamin E and infectious diseases in the aged. Proc Nutr Soc. 1999;58(3):697-705.
Meydani SN, Leka LS, Fine BC, et al. Vitamin E and respiratory tract infections in elderly nursing home residents: a randomized controlled trial. JAMA. 2004;292(7):828-836.
がんの予防
多くのがんは活性酸素などによるフリーラジカルによるDNAの酸化損傷に起因すると考えられています。がん予防の研究の多くはα-トコフェロールによる抗酸化作用に焦点を当てて考えられています。
肺癌・乳癌・前立腺癌など多くのがんの予防の研究が行われておりますが、今だに効果の有無の結果は出ておらず、現在も多くの研究が行われております。
参考文献
Slatore CG, Littman AJ, Au DH, Satia JA, White E. Long-term use of supplemental multivitamins, vitamin C, vitamin E, and folate does not reduce the risk of lung cancer. Am J Respir Crit Care Med. 2008;177(5):524-530.
Alkhenizan A, Hafez K. The role of vitamin E in the prevention of cancer: a meta-analysis of randomized controlled trials. Ann Saudi Med. 2007;27(6):409-414.
Heinonen OP, Albanes D, Virtamo J, et al. Prostate cancer and supplementation with α-tocopherol and β-carotene: incidence and mortality in a controlled trial. J Natl Cancer Inst. 1998;90(6):440-446.
Gaziano JM, Glynn RJ, Christen WG, et al. Vitamins E and C in the prevention of prostate and total cancer in men: the Physicians’ Health Study II randomized controlled trial. JAMA. 2009;301(1):52-62.
Klein EA, Thompson IM, Lippman SM, et al. SELECT: the next prostate cancer prevention trial. Selenum and Vitamin E Cancer Prevention Trial. J Urol. 2001;166(4):1311-1315.
National Cancer Institute. Review of Prostate Cancer Prevention Study Shows No Benefit for Use of Selenium and Vitamin E Supplements.
Lippman SM, Klein EA, Goodman PJ, et al. Effect of selenium and vitamin E on risk of prostate cancer and other cancers: the Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial (SELECT). JAMA. 2009;301(1):39-51.
Klein EA, Thompson IM, Jr., Tangen CM, et al. Vitamin E and the risk of prostate cancer: the Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial (SELECT). JAMA. 306(14):1549-1556.
ビタミンEを摂取に気をつけるべき人(薬の飲み合わせ等)

様々な効果が期待されているビタミンEですが、一部注意が必要な場合があります。
血液凝固防止薬(血栓防止薬)
ワルファリンカリウム(ワーファリン)、アスピリン(バイアスピリン、バファリン81mg)、塩酸チクロピジン(パナルジン)、硫酸クロピドグレル(プラビックス)などでは大量のビタミンEにより、出血傾向が強くなる可能性があります。
参考文献:一般社団法人 愛知県薬剤師会
上記は一例になりますので、何か気になることがある場合は、かかりつけの医療機関にて確認してみましょう。
ビタミンEの1日摂取量の目安(年齢別)
ビタミンEの効果について説明しましたが、1日どれくらいのビタミンEを摂ればいいのでしょうか。厚生労働省が発表しています「日本人の食事摂取基準」というものを見ていきましょう。
ビタミン E の食事摂取基準(mg/日)
男性 | 女性 | |||
年齢等 | 目安量 | 耐容上限量 | 目安量 | 耐容上限量 |
1~2(歳) | 3.0 | 150 | 3.0 | 150 |
3~5(歳) | 4.0 | 200 | 4.0 | 200 |
6~7(歳) | 5.0 | 300 | 5.0 | 300 |
8~9(歳) | 5.0 | 350 | 5.0 | 350 |
10~11(歳) | 5.5 | 450 | 5.5 | 450 |
12~14(歳) | 6.5 | 650 | 6.0 | 600 |
15~17(歳) | 7.0 | 750 | 5.5 | 650 |
18~29(歳) | 6.0 | 850 | 5.0 | 650 |
30~49(歳) | 6.0 | 900 | 5.5 | 700 |
50~64(歳) | 7.0 | 850 | 6.0 | 700 |
65~74(歳) | 7.0 | 850 | 6.5 | 650 |
75~(歳) | 6.5 | 750 | 6.5 | 650 |
ビタミンEを多く含む食品上位20位
ビタミンEの効果や1日の必要量がわかったところで、具体的にどのような食品にビタミンEが多く含まれるかを紹介します。
順位 | 食品名 | 成分量(mg/100g) |
---|---|---|
1 | せん茶 | 64.9 |
2 | ひまわり油(ハイリノール) | 38.7 |
3 | ひまわり油(ミッドオレイック) | 38.7 |
4 | ひまわり油(ハイオレイック) | 38.7 |
5 | アーモンド(乾) | 30.3 |
6 | とうがらし 果実(乾) | 29.8 |
7 | 小麦はいが | 28.3 |
8 | 綿実油 | 28.3 |
9 | 抹茶 | 28.1 |
10 | ぶどう油 | 27.5 |
11 | サフラワー油(ハイオレイック) | 27.1 |
12 | サフラワー油(ハイリノール) | 27.1 |
13 | 米ぬか油 | 25.5 |
14 | 大豆はいが | 18.5 |
15 | とうもろこし油 | 17.1 |
16 | 玉露 茶 | 16.4 |
17 | ファットスプレッド | 15.6 |
18 | なたね油 | 15.2 |
19 | あんこう きも(生) | 13.8 |
20 | まつも 素干し | 13.2 |
ビタミンEを多く含む野菜上位10位
次に野菜に特化し紹介します。
順位 | 食品名 | 成分量(mg/100g) |
---|---|---|
1 | とうがらし 果実(乾) | 29.8 |
2 | とうがらし 果実(生) | 8.9 |
3 | とうがらし 葉・果実(生) | 7.7 |
4 | らっかせい 未熟豆(生) | 7.2 |
5 | 西洋かぼちゃ 果実(焼き) | 6.9 |
6 | らっかせい 未熟豆(ゆで) | 6.8 |
7 | モロヘイヤ 茎葉(生) | 6.5 |
8 | 西洋かぼちゃ 果実(生) | 4.9 |
9 | だいこん 葉(ゆで) | 4.9 |
10 | つくし 胞子茎(生) | 4.9 |
ビタミンEを多く含む魚類/肉類上位10位
魚類、肉類に特化し紹介します。
順位 | 食品名 | 成分量(mg/100g) |
---|---|---|
1 | あんこう きも(生) | 13.8 |
2 | しろさけ すじこ | 10.6 |
3 | ぼら からすみ | 9.7 |
4 | キャビア 塩蔵品 | 9.3 |
5 | あゆ 養殖 内臓(生) | 7.4 |
6 | うなぎ 養殖(生) | 7.4 |
7 | さくらえび 素干し | 7.2 |
8 | すけとうだら たらこ(生) | 7.1 |
9 | すけとうだら からしめんたいこ | 6.5 |
10 | にしん かずのこ(乾) | 6.4 |
ビタミンEを多く含む穀類上位10位
最後に、穀物類に特化し紹介します。
順位 | 食品名 | 成分量(mg/100g) |
---|---|---|
1 | 小麦はいが | 28.3 |
2 | 米ぬか | 10.4 |
3 | とうもろこし ポップコーン | 3.0 |
4 | こむぎ(クロワッサン) | 1.9 |
5 | こむぎ(国産) | 1.2 |
6 | 玄米 | 1.2 |
7 | 発芽玄米 | 1.2 |
8 | 乾パン | 1.1 |
9 | 薄力粉 2等 | 1.0 |
10 | 強力粉 全粒粉 | 1.0 |
ビタミンEはサプリメントで意識的に摂取すべきか

これまでビタミンEの必要量や、含まれている食材について紹介してきましたが、そもそも私たちはきちんと必要なビタミンDを毎日摂ることができているのでしょうか。
厚生労働省が発表している「平成30年国民健康・栄養調査報告」によると、ビタミンDの平均摂取量は6.7 μgであり、ほぼほぼ目安量に届いております。
なので、他の栄養素と同様に過度なダイエット、断食や野菜嫌いでほぼ食べないなどの極端な食生活でビタミンEを摂取することが難しいという極端な場合を除き、サプリメント等で補充する必要はないと言われています。
ビタミンEと合わせて摂取すると効果的な栄養素

食事からビタミンEを摂る場合、ビタミンEは脂溶性ビタミンなので、油と一緒に摂ると吸収率がアップします。
野菜の天ぷらなどがシンプルで調理しやすいかと思います。
また、ビタミンEは摂取後すぐに活性酸素と結びつくことで、その効力を失ってしまいます。このときビタミンCが一緒にあると、効力を失ったビタミンEをもう一度甦らせてくれると言われております。この相乗効果を得るためにも、アボカドのサラダやイカ焼きなどビタミンEが豊富な食材には、レモンを添えてみるといいでしょう。
しかし、脂質の吸収を抑える作用が期待できる成分と一緒に摂ってしまうと、その栄養素の吸収率を低下させる可能性もあります。
食べ合わせや一緒に調理する食材によっては効果が弱まってしまうこともありますので、注意が必要になります。
青汁でビタミンEは効率的に摂取可能か

野菜からビタミンEを摂取できるのが一番いいのですが、仕事が忙しいなどで難しい場合もあるかと思います。多くの人はサプリメントや青汁で野菜の栄養素を補っているかもしれません。
その時に「青汁でビタミンEを十分に摂取できるのか」と疑問があるかと思います。
多少の差はありますが、モロヘイヤはほうれん草などにはビタミンEが含まれてるので、それらの野菜が使われている場合は効果的にビタミンEが摂取できるかと思います。
なので、サプリメント等で摂取する代わりに青汁という選択はビタミンE不足を補うのに最適と言えます。
ただし、日本人はビタミンE不足になりにくいと言われていますので、ビタミンEの補充目的以外でしたら、敢えてビタミンEが含まれてるものは選ばなくてもいいかもしれません。